学位論文要旨



No 110927
著者(漢字) 青木,和久
著者(英字)
著者(カナ) アオキ,カズヒサ
標題(和) ニューカッスル病ウイルス抵抗性変異株Had-2の単離とその性質の研究
標題(洋)
報告番号 110927
報告番号 甲10927
学位授与日 1995.03.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(理学)
学位記番号 博総合第58号
研究科 総合文化研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 庄野,邦彦
 東京大学 教授 林,利彦
 東京大学 助教授 大隅,良典
 東京大学 助教授 須藤,和夫
 北里大学 教授 水本,清久
 東京都臨床医学研究所 部長 川喜田,正夫
内容要旨

 ウイルスが増殖する際には、種々の宿主細胞性の因子が、あるものは増殖の各素過程に必須の因子として、また、他のものは、逆にウイルスの増殖を抑制する因子として、重要な役割を担っている。ウイルスの増殖機構を詳しく知るためには、これに関与する宿主因子を同定し、その作用を解析することが必須である。本研究では、ウイルスの増殖に関わる宿主細胞性因子の解析を目的として、マウスFM3A細胞からニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus;NDV)抵抗性細胞変異株の単離を試み、その性質の解析を行った。

 NDVに感染した細胞は、感染数時間後にはNDVのHNタンパク質を細胞膜上に発現し、赤血球を表面に吸着するようになる。原らは、さきに、変異原処理したFM3A細胞から、NDV感染10時間後に鶏赤血球を吸着しない細胞を顕微鏡下で観察して単離するという方法でNDV抵抗性株の単離を試み、NDVレセプター欠損株Had-1を得た。しかし、Had-1変異はX染色体上にあり出現頻度が極めて高いため、NDV抵抗性細胞中の大半を占める結果となり、他の種類のNDV抵抗性株をこの方法で単離することはできなかった。そこで、本研究では、Had-1細胞以外のNDV抵抗性株を単離することを第一の目的とした。

 本論文第一部においては、まず、Had-1細胞より出現頻度の低い変異株を単離するため、出発材料として変異原処理した細胞を大量に用いることができるよう、NDV抵抗性株の選択方法の改良を行った。変異原処理した細胞にNDVを感染させ、10時間後に鶏赤血球を加え、25%(w/v)のフィコール上に重層して遠心した。NDV感受性細胞は赤血球を吸着して比重が増すために沈澱し、赤血球を吸着しないNDV抵抗性細胞のみが選択的にフィコール層と水層の境界に残る。この方法を用いて、NDV抵抗性細胞を約100倍濃縮して境界層から回収することができた。回収された細胞を植物レクチンGS-IIで処理してHad-1細胞を特異的に除去し、生き残った細胞から、NDV感染後に赤血球を吸着しないものを顕微鏡下で選んで取り出し、さらに、限界希釈法によってクローニングを行った。得られたNDV抵抗性株、Had-2は、形態および増殖速度に関しては親株FM3Aとほとんど変わらず、また、親株との融合実験から、変異は親株に対して優性であることが示された。

 HNタンパク質の合成量を指標として細胞のNDVに対する抵抗性を定量的に評価する方法を考案し、種々の細胞密度で1日間培養したHad-2細胞のNDV抵抗性を定量したところ、この細胞は、通常の培養時の細胞密度ではNDV抵抗性を示すが、1×104cells/ml以下の低密度ではNDV抵抗性を示さなかった。そして、Had-2細胞を高密度で培養した培養上清には、低密度の細胞にNDV抵抗性を誘導する活性があることが明らかになった。このことから、Had-2細胞は本来それ自身がNDV抵抗性なのではなく、高密度で何らかの物質を培地中に放出し、この物質が細胞にNDV抵抗性を誘導すると考えられた。このNDV抵抗性誘導活性は、インターフェロン-(IFN-)に対する抗体およびIFN-に対する抗体を同時に加えることによって完全に中和されたことから、Had-2細胞が放出している物質は、IFN-およびIFN-であると結論した。高密度のHad-2細胞はまた、NDVだけでなく、水庖性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus;VSV)、メンゴウイルス、シンドピスウイルスに対しても抵抗性を示した。このような、多様なウイルスに対する抗ウイルス効果もIFNの関与を支持している。

 FM3A細胞由来の上清にはHad-2細胞にNDV抵抗性を誘導する活性はなく、また、FM3A細胞は、Had-2細胞由来の上清中で培養してもNDV抵抗性を獲得しなかったことから、FM3A細胞はIFNを放出しておらず、また、Had-2細胞に十分NDV抵抗性を誘導する量のIFNに対してFM3A細胞は応答しないことが示された。すなわち、Had-2細胞では、IFNの構成的産生がおこっていると同時にIFNに対する感受性も親株よりも増加していると考えられた。そこで、FM3A細胞およびHad-2細胞によって産生されるIFNを直接定量した。FM3A細胞は通常IFNを産生しておらず、NDVの感染によって0.015〜0.05U/cellのIFNが誘導された。一方、Had-2細胞は、NDVによる誘導時にはFM3A細胞と同等のIFN(0.015U/cell)を放出するが、誘導刺激を与えない状態でも少量のIFN(0.00016〜0.00032U/cell)を産生していた。また、低密度のHad-2細胞の上清についても、硫酸アンモニウム沈澱法による濃縮を行ったところ、微量ながらIFN活性が検出された。したがって、Had-2細胞では、細胞密度が高くなって初めてIFN産生を開始するのではなく、常に少量のIFNを放出していると結論してよい。しかし、ウイルス抵抗性が誘導されるためには、細胞が高密度になって培地中に放出されたIFNの総量が十分なレベルに達する必要があると考えられる。

 IFN活性の測定に常用されるL929細胞とHad-2細胞およびFM3A細胞との間でIFNに対する感受性の比較を行った。IFN-に関しては、Had-2細胞の応答はL929細胞に近く、むしろFM3A細胞がIFN-非感受性であった。一方、IFM-に対しては、FM3A細胞、Had-2細胞ともにL929細胞に比べて非感受性であった。

 以上のことから、本研究で親株として用いたFM3A細胞は、IFN-およびIFN-に対する応答メカニズムの共通の因子を欠損した変異株であり、Had-2細胞では、何らかの別の変異によって、IFN-に対する感受性だけが戻り、同時にIFNを構成的に産生するように変化していると考えられる。Had-2細胞の変異をさらに詳しく解析することによって、IFNに対する応答およびIFNの産生に関与する因子、特に両者に共通に関与する因子が解明されることが期待される。

 本論文の第二部においては、IFNの作用機作に注目し、Had-2細胞を用いた解析を行った。IFNの抗ウイルス作用がどのような物質によってひきおこされ、その結果ウイルス増殖がどのように阻害されるのかを知るため、まず、高密度のHad-2細胞においてNDVの増殖がどの段階で阻害されるかを調べた。

 放射性標識したNDV粒子と細胞との結合実験から、Had-2細胞でもNDVの吸着は正常におこっていることが明らかになった。NDVのNPタンパク質のcDNAをプローブとしたノーザンハイブリダイゼーション、およびNDVに対する抗血清を用いた免疫沈降の実験から、Had-2細胞ではNDVのmRNAおよびタンパク質の蓄積がいずれも親株に比べて減少しており、特にタンパク質合成はほとんど検出できないレベルまで低下していることが明らかになった。感染初期の状態を知るため、FM3AおよびHad-2細胞にシクロヘキシミド存在下あるいは非存在下でNDVを感染させ、1、2、3時間後にNDVmRNAの蓄積量を測定した。Had-2細胞中のmRNA量は、FM3A細胞にシクロヘキシミドを加えた場合、すなわち一次転写のみによるmRNAの蓄積量よりも減少していた。このことは、Had-2細胞では、NDVのmRNA合成の一次転写の段階が阻害されることを示している。この初期mRNA量の減少は、Had-2細胞をシクロヘキシミドで処理した場合には認められなかった。すなわち、Had-2細胞における一次転写の阻害にはタンパク質合成が必要であるか、あるいは、この阻害にはRNアーゼが関与しており、シクロヘキシミドがmRNAを保護していると考えられる。

 FM3A細胞およびHad-2細胞にシクロヘキシミド存在下でNDVを感染させ、感染2時間後にシクロヘキシミドを除いてさらに培養したところ、FM3A細胞ではmRNA量の急激な増加が認められたが、Had-2細胞においては、シクロヘキシミドを除いた時点まではFM3A細胞と同様に一次転写が十分おこっているにもかかわらず、その後のmRNA量の急激な増加は認められなかった。このことは、Had-2細胞においては、NDVの一次転写の段階が阻害されるだけでなく、感染中期以降のmRNAの増幅の段階(二次転写)も阻害されていることを示している。一次転写の阻害が部分的であり、完全にはmRNA合成を阻害しないのに対して、二次転写の阻害は非常に強力であり、Had-2細胞におけるNDV増殖の阻害の主要な原因は、転写後の過程、タンパク質合成あるいはゲノムの複製の段階の阻害によってmRNA増幅がおこらなくなっていることであると考えられた。

 Had-2細胞はNDVと近縁のセンダイウイルス(Hemaggulutinating virus of Japan;HVJ)に対しては抵抗性を示さない。ウイルスによるIFN感受性の違いの原因を知るため、HVJに関してNDVの場合と同様の解析を行ったところ、一次転写および二次転写のいずれにも阻害はみられず、タンパク質合成も親株とほぼ同様におこっていた。NDVとHVJを同時に感染させたところ、FM3A細胞ではどちらのウイルスもよく増殖した。一方、Had-2細胞では、NDVの増殖は強く抑制されたが、HVJの増殖は単独で感染させたときと同様にほとんど抑制されなかった。このことは、Had-2細胞におけるNDVとHVJのIFN感受性の差は、NDV感染特異的にウイルス抑制因子が出現すること、あるいは、HVJ感染特異的にIFN作用阻害因子が出現することによるものではなく、IFNで処理したHad-2細胞においては、NDVとHVJが何らかの基準で明確に識別され、HVJが増殖抑制を免れる特異的なメカニズムが存在することを示唆している。

 今後、Had-2細胞におけるNDVとHVJの挙動の違いをさらに詳しく解析することによって、IFN作用のウイルス特異性に関して新たな知見が得られることが期待される。

審査要旨

 本研究は、動物ウイルスの複製過程におけるウイルスと宿主細胞の間の相互作用、ウイルスによる宿主の傷害の生化学的、分子生物学的基礎を明らかにすること、および、ウイルスの寄生という異常な事態に対応して動員される細胞の機能とその生理的意義を明らかにするための研究の一環として、新しい実験系の開発と、その実験系を利用したウイルス-宿主関係の解析を目的として行われたものである。

 ウイルスは固有の代謝系およびエネルギー生産系を欠いているため、単独では増殖することができず、宿主細胞に感染して初めてその増殖が可能となる。したがって、ウイルスが増殖するためには種々の宿主細胞性の因子が必須であるが、一方、これとは逆に、細胞にはウイルス感染から自らを守るメカニズムも存在する。ウイルスの増殖とは、これらの多様な細胞側の因子とウイルス由来の因子との間の複雑な相互作用の結果である。このような宿主細胞因子を解析するために、本論文の著者は、ニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus;NDV)の感染に対して抵抗性を示す変異細胞株を単離し、解析するという細胞遺伝学的手法によるアプローチを行った。ウイルスの増殖素過程において必要とされる宿主因子を欠損した細胞はウイルス感染に対して抵抗性を示すと考えられ、その種の変異株を単離、解析することによって、欠損した因子を同定し、その役割を解析することができる。一方、ウイルス抵抗性細胞の中には、ウイルスの増殖を阻害する因子を発現するものも含まれる可能性があり、それらの解析によって、細胞の感染防御システムに関して新たな情報が得られる可能性がある。著者の選択した手法は、この種の宿主細胞因子を広範に探索する可能性を持つ視野の広いものであるとともに、変異遺伝子産物の細胞内における生理機能の解明を通じてその役割の見直しをも行おうという興味深い着眼によるものである。

 論文は、序論、第一部「NDV抵抗性株Had-2の単離とその性状の解析」、第二部「Had-2細胞におけるウイルス増殖阻害機構の解析」、総合考察の四つの部分から構成されている。序論において著者はまず、ウイルス-宿主相互作用の解明における宿主細胞因子の解析の意義について述べた後に、NDVの増殖・複製過程について概括し、さらに、細胞遺伝学的手法によるウイルス-宿主相互作用の研究の歴史的背景と現況についての総括を行っている。この序論は、本研究に取り組む著者の基本的な考え方を示したもので、論文全体への有効な導入となっている。

 第一部においては、マウスFM3A細胞を親株としてNDV抵抗性細胞変異株の単離を行うための新しい方法の開発、および、その方法によって単離された新しい変異株Had-2の性状の解析を扱っている。NDVに感染した細胞は、感染数時間後にはNDVのHNタンパク質を細胞膜上に発現し、赤血球を表面に吸着するようになる。この性質を利用して、変異原処理したFM3A細胞から、鶏赤血球を吸着しない細胞を顕微鏡下で選択することによってNDV抵抗性株を単離することが可能であるが、この方法では、きわめて出現頻度の高いNDVレセプター欠損株Had-1のみが得られ、それ以外のNDV抵抗性株は単離できない。著者は、出現頻度の低い変異株を単離するために、出発材料としての変異原処理細胞を大量に用いることができるよう、NDV抵抗性株の選択方法の改良を行った。変異原処理した細胞にNDVを感染させ、10時間後に鶏赤血球を加えて25%(w/v)フィコール上に重層し、遠心した。NDV感受性細胞は赤血球を吸着して比重が増すために沈澱し、赤血球を吸着しないNDV抵抗性細胞のみが選択的にフィコール層と水層の境界に残ることになる。著者はこの方法を用いて、NDV抵抗性細胞を約100倍濃縮して境界層から回収した。そして、回収された細胞を植物レクチンGS-IIで処理してHad-1細胞を特異的に除去し、生き残った細胞から、NDV感染後に赤血球を吸着しないものを顕微鏡下で選択し、さらに、限界希釈法によってクローニングを行うことにより、新たなNDV抵抗性株、Had-2を単離することに成功した。

 Had-2細胞の性状を詳細に研究する過程で、著者は、この細胞が通常の培養時の細胞密度ではNDV抵抗性を示すが1×104cells/ml以下の低密度ではNDV抵抗性を示さないこと、また、Had-2細胞を高密度で培養した培養上清には、低密度の細胞にNDV抵抗性を誘導する活性があることを明らかにした。このことは、Had-2細胞は本来それ自身がNDV抵抗性なのではなく、高密度で何らかの物質を培地中に放出し、この物質が細胞にNDV抵抗性を誘導することを示唆するものである。著者は、この物質の本態を追究し、それがIFN-およびIFN-であることを明らかにした。さらに、Had-2細胞とFM3A細胞の間のIFN感受性の差に着目し、IFN活性の測定に常用されるL929細胞とHad-2細胞およびFM3A細胞との間でIFN感受性の比較を行った。そして、IFN-に関しては、Had-2細胞の応答はL929細胞に近く、むしろFM3A細胞がIFN-非感受性であること、一方、IFN-に対しては、FM3A細胞、Had-2細胞ともにL929細胞に比べて非感受性であることを明らかにした。この結果に基づいて著者は、本研究で親株として用いたFM3A細胞は、IFN-およびIFN-に対する応答メカニズムの共通の因子を欠損した変異株であり、Had-2細胞は、何らかの別の変異によって、IFN-に対する感受性だけが戻り、同時にIFNを構成的に産生するように変化した細胞であると結論した。

 Had-2細胞の変異を、FM3AならびにL929細胞との比較において詳細に解析することは、今後、IFNに対する応答およびIFNの産生に関与する因子、特に両者に共通に関与する因子の解明のための有力な手がかりとなることが期待される。

 論文の第二部においては、著者はIFNの作用機作に注目し、Had-2細胞中におけるNDV増殖過程の解析を行った。NDV粒子と細胞との結合実験により、Had-2細胞でもNDVの吸着は正常におこることがまず明らかになった。ついで、NPタンパク質のcDNAをプローブとしたノーザンハイブリダイゼーション、および抗NDV抗体を用いた免疫沈降により、NDVのmRNAおよびタンパク質が感染後期になってもほとんど蓄積しないことが明らかになった。一方、感染初期の状態を知るために、ゲノムRNAから直接に転写されるNDVmRNAの一次転写物の量を測定した結果によると、Had-2細胞中のmRNA量は、FM3A細胞と比較して減少していたが、阻害は部分的であり、また、タンパク質合成阻害剤シクロヘキシミドで処理した場合には認められなかった。Had-2細胞における一次転写mRNAの減少は主としてRNアーゼによるものと考えられるが、この阻害は部分的であり、完全な増殖阻害を説明するには不十分であると考えられた。一方、FM3A細胞およびHad-2細胞にシクロヘキシミド存在下でNDVを感染させ、感染2時間後にシクロヘキシミドを除いてさらに培養したところ、FM3A細胞ではmRNA量の急激な増加が認められたが、Had-2細胞では、シクロヘキシミドを除いた時点まではFM3A細胞と同様に一次転写が十分おこっているにもかかわらず、その後のmRNAの急激な増加は認められなかった。このことは、Had-2細胞中ではNDV感染中期以降のmRNAの増幅の段階が特に強く阻害されていることを示している。これらの結果に基づいて、著者は、Had-2細胞におけるNDV増殖の阻害の主要な原因は、転写されたmRNAの翻訳あるいはゲノムの複製の段階が阻害されることによってゲノムRNAおよびmRNAの増幅がおこらなくなるためであると結論している。

 Had-2細胞の興味ある性質の一つとして、著者はこの細胞がNDVと近縁のセンダイウイルス(Hemagglutinating virus of Japan;HVJ)に対しては抵抗性を示さないことを見出した。そして、HVJの増殖に関しては、一次転写および二次転写のいずれにも阻害は見られず、タンパク質合成も親株とほぼ同様に起こっていること、また、Had-2細胞にNDVとHVJを同時に感染させた場合には、NDVの増殖は強く抑制されるが、HVJは単独感染時と同様ほとんど抑制されないことを明らかにした。これは、IFN処理Had-2細胞中では、NDVとHVJがなんらかの基準で明確に識別され、HVJのみが増殖抑制を免れる特異的なメカニズムがあることを示唆する事実であり、IFN作用のウイルス特異性という新たな問題を提起するとともに、その解明への契機ともなる発見であるということができる。

 総合考察においては、著者は、これらの結果を総括し、Had-2細胞を利用した研究の展望、および新たなウイルス抵抗性変異株の単離への指針などについて論じ、論文全体を締めくくっている。

 ウイルス-宿主相互作用の理解に向けて、特に、IFNの産生およびIFN応答の制御に関与する遺伝子群の解明に有用な細胞系を開発したこと、および、IFNによるNDV増殖抑制のメカニズムを入念に解析し、抗ウイルス作用のウイルス特異性の解析を可能にする実験系を確立したことは本研究の大きな意義であり、この分野の研究に大きな手がかりと発展の契機を与えたということができる。その意味で本研究の意義は大きく、その成果は国際的にも十分に高い水準に達していると評価することができる。本論文の内容は共著の論文として公表される予定であるが、内容の大部分は本論文提出者の考案と努力によるものである。

 以上の評価に基づいて、審査委員会は、本論文提出者には本研究の成果によって博士(理学)の学位を受ける資格があるものと判断する。

UTokyo Repositoryリンク http://hdl.handle.net/2261/54432