本研究はアクチビンAによるインスリン分泌促進機構を膵ラ氏島ペリフュージョン系および単一インスリン分泌細胞レベルでの電気生理学的な検討により、下記の結果を得ている。 1.ラット遊離ラ氏島のペリフュージョン系において、アクチビンAは、2.7mMという低濃度グルコース存在下で容量依存性に且つ二相性のインスリン分泌を惹起した。その作用は細胞外カルシウム濃度に依存していた。 2.アクチビンAのインスリン分泌作用は、グルコース非存在下でも一相性ではあるが有為に認められた。 3.グルコース非存在下でも、同時にGLP-1を投与すると二相性のインスリン分泌が再現された。 4.グルコース非存在下で[Ca2+]cの増加も、アクチビンA単独で有為な増加がみられたが、一相性で刺激前値に速やかに戻った。しかし、GLP-1との同時投与では[Ca2+]cの増加も著名で二相性の増加を示した。 5.単一インスリン分泌細胞の電気生理学的検討では、アクチビンAは受容体を介してK-ATPチャネルを直接抑制した。 6.アクチビンAはL型電位依存性カルシウムチャネル自体も直接修飾し、カルシウム流入量を増加させる。従って、アクチビンAはK-ATPチャネルを直接抑制することにより細胞膜を脱分極させL型電位依存性カルシウムチャネルを活性化しカルシウム流入を促進させると同時に、L型電位依存性カルシウムチャネル自体をも直接修飾しカルシウム流入を増加させインスリン分泌を促進すると考えられた。 以上、本論文はアクチビンAの膵細胞におけるインスリン分泌促進機構を明らかにするとともに、アクチビンAの膵細胞における情報伝達機構を解明した点で重要な貢献をしたものと考えられ、学位の授与に値すると考えられる。 |