本研究は国民栄養調査等の大規模調査で用いることを前提として半定量的食物摂取頻度調査の妥当性の検討を行うため、一地域住民を対象として栄養調査、解析をしたものである。検討した半定量的食物摂取頻度調査は、国民栄養調査結果に基づいて食品のグルービングを行い、食品群の荷重平均栄養成分表を用いて栄養素摂取量を算出するものであり、比較基準は7日間の食事秤量調査とした。半定量的頻度調査と食事秤量調査から各々一日平均栄養素摂取量を求め、比較検討を行い、下記の結論を得ている。 1.半定量的頻度調査から推定された栄養素摂取量の平均値は、ビタミンC以外の栄養素で食事秤量調査よりもやや低く、特に鉄は35%低く推定された。 2.食事秤量調査において、7日間の栄養素摂取量の平均値と真値の相関係数が0.9以上となったのは、総エネルギー、脂質、糖質、カルシウム、ビタミンA、B1、B2、Cであった。 3.関数関係解析を行った結果、総エネルギー、三大栄養素、カルシウム摂取量については、半定量的頻度調査と食事秤量調査との一致程度を示す較正式の傾きパラメータが0.7以上であることが示された。 4.ビタミンAとビタミンCは個人間および日間変動が大きく、関数関係解析で求められた2つの調査法の一致程度を示す較正式の傾きパラメータの値が不安定であった。したがって、本研究で用いた半定量的頻度調査で、これらのビタミンの摂取量を正確に推定することはできないことが示された。 5.鉄はすべての評価方法において一致の程度が最も低く、本研究で用いた半定量的頻度調査で推定すべきではないことが示された。 6.本研究で用いた半定量的頻度調査は、日本国内において広く使用されるように、国民栄養調査結果に基づいて開発されたものであり、本研究対象である一地域住民においても栄養素摂取量を把握することができる方法であった。したがってビタミンA、C、鉄についての調査方法の再検討と、信頼性の検討、さらに他地域での検証的研究が必要であるものの、本研究で用いた半定量的頻度調査を国民栄養調査等の大規模調査で用いることの有用性が示唆された。 以上、本論文は国民栄養調査結果に基づく半定量的食物摂取頻度調査を、今後大規模研究等で用いる際に必要となる事項について、調査を実施しその結果を統計学の手法から検討し、その有用性を明らかにした。本研究は、健康の維持・増進に不可欠な栄養調査の方法論の開発に大きな貢献をなし、学位の授与に値するものと考えられる。 |