現在価値研究は大きく分けて二つの方向で進行しているといえる。一つは、価値の構造に関心を持って、それの究明に注意を向けている研究と、もう一つは、それらの価値が行動にどのように影響されているか、すなわち価値の機能的な側面に関心を持って進んでいる研究である。 さらに、価値の構造への関心は、個人の普遍的価値への関心と、社会的あるいは文化的価値への関心とに分けることができる。社会的あるいは文化的価値への関心は、個人的価値の構造に対する成果がある程度蓄積されている最近の傾向である。社会や文化が価値に影響する最も重要な要因として認められていることから、こうした社会的・文化的価値への関心は当然ともいえるだろう。 本論は、「価値の構造と機能」の両方へのアプローチである。それは価値の本質を知るために、またおのおのの価値のもつ意味や構造を明確にするためには、その価値の機能的な役割を検討すべきであることを示している。さらに、本論は、社会的・文化的価値により関心を持っている。具体的には、「日本と韓国という二つの文化(國)の社会的価値を比較する」ことによって、両国の共通の普遍的価値の構造が明らかになるが、その普遍的価値は両国の人々(個人)のもつ価値構造である。また、両国の共通の価値あるいは固有の価値が「その人の社会的行動にどのように影響しているか」を検討することによって、それらの価値が持つ意味をより明らかにすることが可能となる。これらが本論文の最も大きな目的である。 次に、本論は、価値の変化を究明しようとする目的をもっている。政治・経済をはじめ多くの分野において、日本と韓国はそれぞれ大きな社会的変化を経験してきた。その社会的変化は、本論が追求する価値(価値変化)に現れていると想定でき、その価値の変化は再びわれわれの行動様式に反映されると考えられる。日韓の価値がどの方向に向けて変化しており、それらの変化が両国においてどう異なっているか、それがわれわれの行動(主に消費行動)にどのように反映されているか、などについて究明するのが本論の目的である。 最後に、本論は、価値の機能的役割に着目し、実際価値がわれわれの行動に影響するか、またはどのように影響するかを究明する。価値の機能の中最も重要な機能である「行動をガイドする機能」は、その理論的仮定は充実しているものの、実際に検証されているものは数少ない。価値が行動をガイドする最も根源的な指針であるとすれば、価値は行動と様々な経路をもって行動に影響すると考えられる。たとえば、価値が行動に直接に影響したり、態度などの媒介変数を経て影響したりすると考えられる。また、どの価値が行動との関連が高く、どの価値が低いのかなどである。実際これらについては合意された知見がほとんどない。本論では、これらについての答えを提供しようと思う。 |