1Introductionと方法 NJL-modelをQCDの有効理論として考えて核子とデルタ粒子の質量を計算してみた。NJL-modelでのbaryonの計算は、diquark-quark modelと平均場近似が中心だったが、quark間の相互作用をexplicitに取り入れてmesonとbaryonを統一的に相対論的に共変な言葉で記述するために、相対論的Faddeev方程式を使って研究した。実際、NJL-modelでladder近似を適用した場合は相互作用がseparableなため解く事ができる。我々は、非相対論的極限で支配的になる事が期待されるscalar-diquark(0+)とaxial-vector diquark(1+)にchannelを限って解いた。この場合、相互作用Lagrangianの具体的な形の解に対する影響はpionと2つのdiquark channelの有効結合定数:,gs,gaの比:rs=gs/,ra=ga/を通して入ってくる。我々はLagrangianと対応するこの比をparameterとして扱い、まず核子及びデルタの質量とLagrangianとの関係について調べた。さらにFaddeev方程式の核を対角化する時に同時に得られる核子の波動関数を用いてpion-nucleon sigma termとproton-neutron質量差を計算した。
最後に最近注目されている平均場近似と相対論的Faddeev方程式の方法との関係について議論した。Baryonを記述するための描像として現在、ソリトン描像とconstituent quark描像がある。平均場近似はソリトン描像と関係が深く、Faddeev方程式はconstituent quark模型との関係が分かりやすい。NJL模型ではこれら2つの描像が共存できるため、2つの描像の関係を調べて、両者の利点を統合した新しい描像を構築する際には非常に都合がよい。ここでは、この第1歩として(1)「Faddeev方程式を参考にした平均場近似の改良法」と(2)「Faddeev方程式に対するnon-separableな相互作用の影響の摂動論的評価」について議論した。
3数値計算と結果 gs/,ga/gsを注目する値にfixして、(1)「=140MeV」,(2)「=93MeV」,(3)「constituent quark mass M=400MeVのgap方程式を満たす。」なる条件で、current quark mass,cut-off,coupling constantを決めて、核子の質量を計算してみて次の結果を得た。
1.scalar-diquark,axial-vector diquark channelともに強い引力として核子に寄与する。
2.axial-vector diquark channelはデルタに引力的に寄与する。
3.original typeのNJL Lagrangianでは、相互作用が弱すぎて核子は作れない。
4.color-current相互作用型のLagrangianでは約900MeVの核子を作れるが、デルタには束縛状態はない。
5.約900MeVの核子と約1200MeVのデルタを同時に実現するNJL型の相互作用Lagrangianが存在する。
また、核子及びデルタの質量と我々が導入したparameter rs,raとの間にはほぼ線型的な関係が存在する事が分かった。
ここからscalar diquark channelが主として核子に寄与している事が分かる。しかしながら、axial-vector diquark channelの寄与もかなり大きく、定量的な評価の時には無視してはならない事が分かる。また、核子とデルタの質量差は、次のように現せる。
これを見れば、この質量差は、核子には結合するがデルタには結合しない(iso-spinのため)scalar diquark channelの相互作用が原因になっている事が分かる。
pion-nucleon sigma termは、と書ける。ここで、m0はcurrent quarkの質量ではquarkのfield operatorである。これを我々の波動関数を使って計算すると、
図表 を得る。ここで簡単のため、axial-vector diqark channelの相互作用は無視した。実験値=45±7MeVと比較して、割合近い値だと言える。
陽子と中性子の質量差は
とかけて、1次の摂動論的には、|p〉と〈p|はiso-spin対称なHamil-tonianから求めた状態で評価してよく、結局我々の波動関数をつかって、(I・3・I)なるoperatorの期待値を計算すればよいことがわかり、次のような値が得られる。
図表 ここで、md-muとして、平均値が8.99MeV(我々のparameterの決め方より)で比が1.76であるという条件で計算した値9MeVを使った。これに電磁相互作用からの寄与melm=-0.76MeVを考慮すると、実験値の倍くらいの値になる。
NJL型の2体相互作用Hamiltonianから出発した平均場近似の時は、安定なbaryon状態は存在しない事がよく知られている。実際、結合定数が強すぎるとつぶれてしまい、弱すぎるとバラバラになる。ここで有効相互作用としてqq diquark channelのt-matrixを採用すると、いままでバラバラになっていた領域で安定なbaryon状態が存在する可能性がある事が分かった。
最後に、non-separableな2体相互作用のFaddeev方程式への影響について摂動論的に評価した。ここでは、3体BS方程式中の2体相互作用に摂動を加えてそれに対するFaddeev方程式のkernelの一次の変化を計算し従来の摂動論を適用した。pion channelの寄与が大きい事が分かった。