いわゆるソリトン方程式と呼ばれる一連の非線形微分方程式は、完全可積分性を有する数学的に美しいモデルというだけでなく、それらの多くは様々な自然現象に直接関与している。我々は数学的なソリトン理論とその新たな物理系への応用について研究結果を以下順を追って報告する。 1DNAのブレザーモード DNAが二重らせん構造をとっていることは、よく知られている。その二重らせんは、部分的に閉じたり開いたりしている。そのことを記述しているモデルとしてビショップ=ペイヤール(BP)モデルが有名であるが、その塩基対はすべて同じであると仮定している。だが実際のDNAでは、塩基対は異なっている。我々は、BPモデルを拡張し、塩基対がランダムに並んでいる場合について考察した。この場合ソリトンの分裂、増幅現象等は起こらず、ソリトンの変形のみが起こる。またその表式は、解析的に求まる。さらに塩基対に断絶がある場合について考察した。この場合塩基対の不均一性によって透過、反射波が発生する。これによってブレザーモードの局在が考察できる。 2離散的な曲線および三角形分割された曲面の運動 高分子やDNAの運動を扱う場合その離散的な効果は無視できない。そこで我々は、離散的な曲線を記述する離散的フレネ=セレーの公式を導出した。さらにその運動を考えると、可積分系になる最も簡単な例として、連続な場合に曲率に相当するものが、離散的mKdV方程式を満たすことを示した。これは、離散的フレネ=セレーの公式が、離散的AKNS形式に含まれるためである。 さらに三角形分割された曲面の運動についても離散的mKdVヒエラルキーや離散的非線形シュレディンガー方程式を満たす運動があることを示した。離散的複素mKdVヒエラルキーや離散的シュレディンガー方程式の場合は、離散的橋本変換を用いた。この運動を解析するためガウス=ボンネの定理との関係を調べた。特に離散的mKdV方程式を満たす場合には、ガウスの曲率の和が一定である。 3二次元重力と離散戸田分子方程式 時空のあり方を説明する重力の理論、すなわち一般相対論は、方程式の解を分析する場合でも、量子化に際しても、極めて取り扱いが難しい。そのため二次元時空を単体分割して格子重力として考えられた。辺の長さは一定として分割をあらゆるトポロジーの多様体に施して、それらの効果を加え合わせる方法であるランダム三角形分割を用い、重力は、記述される。これは、エルミート行列模型と同じであることが示され二次元重力の相関関数が求められた。我々は、この行列模型を離散化戸田分子方程式をとおしてとらえた。 最初に、直交多項式に離散化された時間変数を導入すると、そのタウ関数が離散化戸田分子方程式を満たす。そのラックス対は、直交関係をもちいて作ることができる。またそのタウ関数は、コンチェビッチ積分の外場を0にもっていった時の行列模型の分配関数にもなっている。この行列模型は重力の模型の拡張になっている。さらに広田の作用素を拡張し離散化戸田方程式との関係を考察した。また内積を定義すると分配関数などが作用素を用いて記述できる。 |