Cinara todocolaは日本の北海道でトドマツの害虫としてよく知られていて、10年以内の造林地に発生する。分散は通常は有翅虫によって行われる。しかし、有翅虫がいなくても寄生されている木の割合がしばしば増加する。このことは、造林地内の分散は無翅のアブラムシによって行われることを示している。 苗木の間隔、規制の対象とならない木の存在、直射日光などがC.todocolaの分散に与える効果を解析し、アブラムシの発生しにくい森林管理のあり方を研究した。苗木の直裁間隔の増大、非寄生木の存在、直射日光はアブラムシの分散を阻害したり遅延させたりした。 最初それぞれのアブラムシは一木の木において最も適当な場所に生息し繁殖した。密度が高くなると、アブラムシは他の場所へ移動した。このような移動は個体群密度が、実験室内と野外共に平均樹高55cmで約300頭の時に起こった。この移動には成虫と幼虫がふくまれていた。多数の個体が移動を開始する閾値の密度が存在するに違いないと思われる。しかし、コロニーについては、4個体の小さなコロニーでも移動は観察されるので、どの大きさのコロニーが分散を始めるかを予想することは非常に難しい。高密度な状態と寄生植物の状態、天敵の存在、アブラムシ同士の接触はアブラムシの分散に影響する。樹内と樹間を移動することによって過密の程度は下げられる。 C.todocolaは高木性,草木性、農業害虫としてのアブラムシなどの種と比べて高い歩行能力を持つ。3齢幼虫は他の齢級のものよりも長い距離を歩く。この齢の重要な機能の一つは分散であると考えた。体重に対する分散の投資の割合を計算できなかったが、その割合は他の齢より3齢幼虫において高いと思われる。幹母に見られる長い歩行距離は体の大きさに依存したものであると思われる。 高い個体群の成長は6月/7月と9月/10月で観察された、春と秋に食べ物の質が良かったからであると思われる。しかし、第1世代のアブラムシは次の世代のアブラムシより大きく重かった。アブラムシの個体数成長は次のような特徴を持っている:集中分布、急速な個体数の増加、個体数密度の激しい変動などである。これらの特徴は昆虫と環境に内在する生理学特徴が合わさったものから生じたかもしれない。個体数がピークに達すると分散が続く。アリが共生しているコロニーでは共生していないコロニーよりも高い個体数成長を示した。 1993年と1994年の、アリとアブラムシが共生している木の割合はそれぞれ96%と80%であった。アブラムシの分散は1993年は低かったが、アブラムシの分散を制限し、天敵から守ることによって高い個体数成長をうながしたと考えられる。このことにより1993年の木の64%はアブラムシの寄生を受けて枯れた。1994年は42%であった。 野外で観察された最大分散距離は16mだった。アブラムシはランダムに移動し、それらの歩行距離は時間と共に変わる。なにかの物体がアブラムシの前に置かれるとほとんどの個体はその方へ動く。色については緑色に最もひかれ、次は黄色であった。小さな物よりむしろ大きな物にひかれた。 3m間隔で樹間に非寄主樹木を置くことによって、トドマツの植林地においてアブラムシの寄生を減らすことができるものと考えられる。 |