学位論文要旨



No 111964
著者(漢字) 久米,努
著者(英字)
著者(カナ) クメ,ツトム
標題(和) マウス赤芽球性白血病細胞の分化誘導の分子機構 : チロシンフォスファターゼの役割
標題(洋) Molecular mechanism of erythroid differentiation in mouse erythroleukemia cells. : The role of a novel protein tyrosine phosphatase(PTP2)
報告番号 111964
報告番号 甲11964
学位授与日 1996.03.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(農学)
学位記番号 博農第1680号
研究科 農学生命科学研究科
専攻 応用生命工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 大石,道夫
 東京大学 教授 野口,忠
 東京大学 教授 山崎,眞狩
 東京大学 教授 高木,正道
 東京大学 教授 上野川,修一
内容要旨

 マウス赤芽球性白血病(フレンド)細胞は、赤芽球分化のin vitroのモデル系として、精力的に研究され、赤血球で発現する遺伝子群の転写調節は明らかになりつつあるものの、その分化誘導機構については今だ不明な点が数多い。近年の我々の研究により、チロシンキナーゼの特異的阻害剤によって、フレンド細胞の分化が誘導されることが明らかになり、蛋白質チロシン残基のリン酸化・脱リン酸化の制御が赤芽球分化誘導に重要であることが示唆された。本研究ではチロシンフォスファターゼが分化の誘導の引き金的な機能を持ち、新規のチロシンフォスファターゼのPTP2の発現が赤芽球分化を誘導することを明らかにした。

結果と考察第一章フレンド細胞の赤芽球分化誘導におけるリン酸化チロシン残基の脱リン酸化の関与

 チロシンキナーゼの特異的阻害剤によって、フレンド細胞の分化が誘導されることから、チロシンキナーゼ阻害活性のない既知分化誘導物質による分化誘導時においても、リン酸化チロシン蛋白質の脱リン酸化が生じることが考えられた。

 そこでこの可能性を検証するために、抗リン酸化チロシン抗体を用いたwestern blot分析により、フレンド細胞の分化誘導におけるリン酸化チロシン蛋白質レベルの変動を検討した。その結果、チロシンキナーゼ阻害活性を有しない様々な既知分化誘導物質による分化誘導時に、分化のごく初期(添加後6時間)から、細胞内リン酸化チロシン蛋白質レベルが著しく減少した。また、チロシンフォスファターゼ阻害活性を持つNa3VO4を分化誘導時に添加すると、リン酸化チロシン蛋白質レベルの減少が著しく抑制され、同時に分化も阻害された。一方、セリン/スレオニンフォスファターゼ特異的阻害剤であるオカダ酸では、そのような効果は全く見られなかった。さらに分化とリン酸化チロシン残基の脱リン酸化との関係を遺伝学的に解析するため、独立に単離した4種類の分化誘導欠損変異株(Dif-1、2、3、4)におけるリン酸化チロシン蛋白質レベルの変動を検討した。その結果、野生株で見られるようなリン酸化チロシン蛋白質レベルの減少が起こらなかった。さらにこれらの株から分化誘導能を回復したrevertantでは、再びリン酸化チロシン蛋白質レベルの減少が生じた。以上の結果から、リン酸化チロシン残基の脱リン酸化がフレンド細胞の分化誘導に密接に関与し、分化を引き起こす反応であることが強く示唆された。また、分化誘導過程におけるチロシンフォスファターゼ活性が上昇するかどうかを検討したところ、DMSO処理後6時間をピークとして活性が一過的に上昇することが判明した。さらに、分化誘導欠損変異株におけるチロシンフォスファターゼ活性は、membraneおよびcytosol画分の活性が野生株よりも低いことを明らかにした。以上のことから、分化誘導の初期に誘導され分化の引き金となる特異的なチロシンフォスファターゼの存在が期待された。

 以上の結果をもとに、フレンド細胞の分化誘導のごく初期に密接に関与すると思われるチロシンフォスファターゼを検索し、有力な候補を見い出すことにした。このために、フレンド細胞の分化誘導において合計24種類のチロシンフォスファターゼについてnorthern blot分析を行ない、それぞれの発現パターンを検討した。そのうち、新規であるPTP2、RIP、PTPの3種は分化が不可逆的に決定される時期(comittment)以前のきわめて早い時期から発現が上昇し、分化誘導と何らかの関連が示唆された。また、4種類の分化誘導欠損変異株のうちで、RIPの発現がほとんど検出されなかった株(Dif-1、2)が存在し、分化誘導に対するRIPの重要性が示唆された。

 一方、フレンド細胞とは全く異なる初期発生分化のモデル系であるマウス胚性腫瘍(F9)細胞においても、その内胚葉分化誘導過程で上記の新規3種のチロシンフォスファターゼの発現がともに上昇していることを示した。また、神経系の発生・分化のモデル系であるラット副腎髄質褐色細胞由来の細胞株PC12D細胞において、分化誘導時にPTPの発現が一過的に誘導されることを明らかにした。これらのことから、この新規3種のチロシンフォスファターゼは赤血球分化のみならず、他の初期発生分化や神経系の分化などにも何らかの役割を担うことが示唆された。したがって、細胞分化に対するこれらのチロシンフォスファターゼ(PTP2、RIP、PTP)の生物学的機能を探るために、まずそれぞれの全長cDNAのcloningとマウス染色体マッピングを行なった。

第二章チロシンフォスファターゼPTP2の全長cDNAのcloningとその性状解析

 3種類チロシンフォスファターゼ(PTP2、RIP、PTP)の全長cDNAのcloningにあたり、これらが十分に発現しているDMSOで24時間処理したフレンド細胞からpoly(A)+RNAを精製し、それからcDNA libraryを作製した。PTP2、RIP、PTPについてほぼ同時に研究を進めていったが、本研究では主としてPTP2に関する解析について述べる。

 このcDNA libraryを用いてPTP2のORFを完全に含む2種のcDNA(7.6kb及び6kb)を単離した。次にPTP2の全塩基配列を決定し、細胞外領域に細胞接着因子によく見られるフィブロネクチン第IIIリピートを8個、細胞内領域にチロシンフォスファターゼ酵素活性ドメイン(PTPase domain)1個を持つ膜結合型チロシンフォスファターゼであることを明らかにした。同時に2種類の長さの異なるcDNAは3’非翻訳領域(UTR)の長さの差によるもので、どちらも翻訳領域(ORF)については一致していることを明らかにした。また、アミノ酸配列をもとにhomology検索を行い、PTP2のPTPase domainはヒトDEP-1(97%)、ヒトHPTP(49%)、ラビットGLEPP1(57%)、Drosophila DPTP10D(50%)らと高いhomologyを示した。同時にこのcDNA libraryを用いて、RIP及びPTPの全長cDNA(7.9kb及び2.5kb)に関してもそれぞれ単離・全塩基配列決定した結果、RIPは細胞質型のチロシンフォスファターゼで細胞膜蛋白質と会合する細胞質蛋白質Ezrin-Radixin-Moesin(ERM)familyに共通なドメインと機能が今だ不明なGLGF repeatなど持つこと、PTPは短い細胞外領域を持つ膜結合型チロシンフォスファターゼであることを明らかにした。

 次にPTP2の生体レベルでの機能を探るために、マウス各臓器のおけるPTP2のmRNA発現レベルを検討した結果、脳、腎臓、肺、脾臓等で発現が見られ、血球系のみならず他の組織においても幅広く発現していることが明らかになった。さらに、亜種間(C57BL/6とMus spretus)交配分析によって、PTP2のマウス染色体座位は2番染色体のほぼ中央D2Mit14とD2Mit42のマイクロサテライトマーカー間にマップされた。このことから、骨格の変異マウスであるulnaless(Ul)とfirst arch(Far)の近傍にPTP2遺伝子(Ptprj)がマップされることを明らかにした。PTP2は骨組織においても高い発現が検出されたので、これらの変異の原因遺伝子がPTP2である可能性も考えられる。同様にしてRIP及びPTPの染色体座位についても解析を行い、それぞれマウス5番染色体の中央及び7番染色体のテロメア側にマップされることを示した。

第三章PTP2の誘導的過剰発現によるフレンド細胞の赤芽球分化誘導の検討

 赤血球分化とチロシンフォスファターゼとの因果関係を検証するため、これらのcDNAを用いてフレンド細胞にチロシンフォスファターゼ遺伝子を人為的に発現させ、分化に対する影響を検討することにした。PTPに関しては3種のうちで最後に行なったcloningのため、現在フレンド細胞等に遺伝子導入して分化への影響を解析中である。

 まず、フレンド細胞に8種類のチロシンフォスファターゼcDNA(PTP2は3’UTRの長さのが異なる2種類、RIPはsplicing isoformによりORFが異なる6種類)を導入した。人為的に亜鉛イオンで誘導可能なmouse metallothionein(MT)promoterを用いて発現させ、分化の誘導に対する影響を検討した。その結果、PTP2をフレンド細胞で発現させると、(1)ヘモグロビン、ALAS-E、glycophrinなどの赤血球特異的分化マーカーの産生が起こること、(2)分化が不可逆的に決定される時期(commitment)が存在すること、(3)分化誘導の阻害剤によってその分化が顕著に阻害されること、(4)細胞増殖能の喪失が見られることなどを明らかにした。一方、RIPを人為的に発現させても、このような効果は全く見られなかった。以上のことから、人為的にPTP2を発現させると調べたかぎりにおいて分化誘導物質によるものと同様なフレンド細胞の赤芽球分化の誘導がおこることを明らかにした。これは、特定のチロシンフォスファターゼで細胞分化の誘導を引き起こせることを示した初めての例といえる。

第四章PTP2の機能欠損組換えcDNAの発現によるフレンド細胞の赤芽球分化誘導の阻害に関する検討

 第三章で示した結果からは、本質的に必須な因子が存在してPTP2がその機能を代用しているのでないかという疑問が残るので、PTP2の機能を特異的に阻害した、いわゆるloss of functionによる分化誘導への影響について解析した。本研究では、PTP2のチロシンフォスファターゼ活性を持たないと思われる機能欠損組換えcDNAを作り、それをフレンド細胞に過剰に発現させて本来存在するPTP2蛋白質の機能を喪失させ、その影響(dominant negative効果)を検討した。用いたPTP2の機能欠損組換えcDNAは、2つの異なる形の組換えcDNA(酵素活性に必須なcystein残基のpoint mutation型(2Cys/Ser変異型)及び酵素活性ドメイン欠損型(2P型))で、これらをそれぞれフレンド細胞に恒常的に発現させ、分化誘導物質(DMSOあるいはHMBA)による分化に対する影響を検討した。その結果、異なる2種類のPTP2機能欠損組換えcDNA(2Cys/Ser変異型及び2P型)の発現によって、どちらの場合でもフレンド細胞の分化が顕著に阻害された。

 以上のことから、PTP2の異なる2つの機能欠損組換えcDNAの発現で分化の誘導が阻害され、PTP2が赤芽球分化の誘導に必須なkey factorであることを明らかにした。

まとめ

 以上のことをまとめると、フレンド細胞の赤芽球分化の分子機構の解析を行ない、1)分化誘導におけるリン酸化チロシン蛋白質レベルの減少の関与、2)分化誘導時に特異的に発現が誘導されるチロシンフォスファターゼ遺伝子の検索及び同定、3)それらのチロシンフォスファターゼ遺伝子(PTP2、RIP、PTP)の全長cDNAの単離、4)PTP2の発現による赤芽球分化の誘導、5)PTP2の機能欠損組換えcDNAの発現による赤芽球分化の阻害、などを明らかにした。これらのことは、チロシンフォスファターゼPTP2が分化誘導に必須な因子であるということを見い出した研究といえる。

参考文献1.Watanabe,T.,Kume,T.,Tsuneizumi,K.,Kondo,K.,Shiraishi,T.and Oishi,M.(1992)Exp.Cell Res.199,269-274.2.Watanabe,T.,Kume,T.and Oishi,M.(1992)J.Biol.Chem.267,17116-17120.3.Kume,T.,Tsuneizumi,K.,Watanabe,T.,Thomas,M.L.and Oishi,M.(1994)J.Biol.Chem.269,4709-4712.4.Tsuneizumi,K.,Kume,T.,Watanabe,T.,Gebbink,M.F.B.G.,Thomas,M.L.,and Oishi,M.(1994)FEBS Lett.347,9-12.5.Chida,D.,Kume,T.,Mukouyama,Y.,Tabata,S.,Nomura,N.,Thomas,M.L.,Watanabe,T.and Oishi,M.(1995)FEBS Lett.358,233-239.6.Watanabe,T.,Mukouyama,Y.,Rhodes,M.,Thomas,M.L.,Kume,T.and Oishi,M.(1995)Genomics 29,793-795.7.Kume,T.,Watanabe,T.,Sanokawa,R.,Chida,D.,Nakamura,T.and Oishi,M.in submission
審査要旨

 マウス赤芽球性白血病(フレンド)細胞は、赤芽球分化のin vitroのモデル系として、精力的に研究され、赤血球で発現する遺伝子群の転写調節は明らかになりつつあるものの、その分化誘導機構については今だ不明な点が数多い。近年の我々の研究により、チロシンキナーゼの特異的阻害剤によって、フレンド細胞の分化が誘導されることが明らかになり、蛋白質チロシン残塞のリン酸化・脱リン酸化の制御が赤芽球分化誘導に重要であることが示唆された。本研究ではチロシンフォスファターゼが分化の誘導の引き金的な機能を持ち、新規のチロシンフォスファターゼのPTP2の発現が赤芽球分化を誘導することを明らかにした。

結果と考察第一章フレンド細胞の赤芽球分化誘導におけるリン酸化チロシン残基の脱リン酸化の関与

 まず、チロシンキナーゼ阻害活性のない既如分化誘導物質による分化誘導時においても、リン酸化チロシン蛋白質の脱リン酸化が生じるかを検証するために、抗リン酸化チロシン抗体を用いたwestern blot分析により、フレンド細胞の分化誘導におけるリン酸化チロシン蛋白質レベルの変動を検討した。その結果、分化のごく初期(添加後6時間)から、細胞内リン酸化チロシン蛋白質レベルが著しく減少した。また、チロシンフォスファターゼ阻害活性を持つNa3VO4を分化誘導時に添加すると、リン酸化チロシン蛋白質レベルの減少が著しく抑制され、同時に分化も阻害された。さらに、独立に単離した4種類の分化誘導欠損変異株では、野生株で見られるようなリン酸化チロシン蛋白質レベルの減少が起こらなかった。以上の結果から、リン酸化チロシン残基の脱リン酸化がフレンド細胞の分化誘導に密接に関与し、分化を引き起こす反応であることが強く示唆された。また、DMSO処理後6時間をピークとしてチロシンフォスファターゼ活性が一過的に上昇することが判明した。

 以上の結果をもとに、フレンド細胞の分化誘導のごく初期に密接に関与するチロシンフォスファターゼを検索するために、合計23種類のチロシンフォスファターゼについてnorthern blot分析を行ない、それぞれの発現パターンを検討した。そのうち、新規であるPTP2、RIP、PTPの3種は分化が不可逆的に決定される時期(commitment)以前のきわめて早い時期から発現が上昇し、分化誘導と何らかの関連が示唆された。

 したがって、細胞分化に対するこれらのチロシンフォスファターゼ(PTP2、RIP、PTP)の生物学的機能を探るために、それぞれの全長cDNAのcloningとマウス染色体マッピングを行なった。

第二章チロシンフォスファターゼPTP2の全長cDNAのcloningとその性状解析

 3種類チロシンフォスファターゼ(PTP2、RIP、PTP)の全長cDNAのcloningにあたり、フレンド細胞からcDNA libraryを作製した。PTP2、RIP、PTPについてほぼ同時に研究を進めていったが、本研究では主としてPTP2に関する解析について述べる。

 このcDNA libraryを用いてPTP2のORFを完全に含む2種のcDNA(7.6kb及び6kb)を単離した。次にPTP2の全塩基配列を決定し、細胞外領域に細胞接着因子によく見られるフィブロネクチン第IIIリピートを8個、細胞内領域にチロシンフォスファターゼ酵素活性ドメイン(PTPase domain)1個を持つ膜結合型チロシンフォスファターゼであることを明らかにした。同時にこのcDNA libraryを用いて、RIP及びPTPの全長cDNA(7.9kb及び2.5kb)に関してもそれぞれ単離・全塩基配列決定した結果、RIPは細胞質型のチロシンフォスファターゼで細胞膜蛋白質と会合する細胞質に共通なドメインと機能が今だ不明なGLGF repeatなど持つこと、PTPは短い細胞外領域を持つ膜結合型チロシンフォスファターゼであることを明らかにした。

 またPTP2は、脳、腎臓、肺、脾臓等でも発現が見られ、血球系のみならず他の組織においても幅広く発現していた。さらに、亜種間(C57BL/6とMus spretus)交配分析によって、PTP2のマウス染色体座位は2番染色体のほぼ中央D2Mit14とD2Mit42のマイクロサテライトマーカー間にマップされた。同様にしてRIP及びPTPの染色体座位は、それぞれマウス5番染色体の中央及び7番染色体のテロメア側にマップされることを示した。

第三章PTP2の誘導的過剰発現によるフレンド細胞の赤芽球分化誘導の検討

 赤血球分化とチロシンフォスファターゼとの因果関係を検証するため、フレンド細胞にPTP2あるいはRIPの全長cDNAを導入して誘導的に発現させ、分化の誘導に対する影響を検討した。PTPに関しては現在解析中である。その結果、PTP2をフレンド細胞で発現させると、(1)赤血球特異的分化マーカーの産生が起こること、(2)分化が不可逆的に決定される時期(commitment)が存在すること、(3)分化誘導の阻害剤によってその分化が顕著に阻害されること、(4)細胞増殖能の喪失が見られることなどを明らかにした。一方、RIPを人為的に発現させても、このような効果は全く見られなかった。以上のことから、人為的にPTP2を発現させると分化誘導物質によるものと同様なフレンド細胞の赤芽球分化の誘導がおこることを明らかにし、特定のチロシンフォスファターゼで細胞分化の誘導を引き起こせることを初めて示した。

第四章PTP2の機能欠損組換えcDNAの発現による赤芽球分化の阻害に関する検討

 次に、PTP2が分化に必須な因子の機能を代用しているのでないことを検証するため、PTP2の機能欠損組換えcDNAをフレンド細胞に過剰に発現させて本来存在するPTP2蛋白質の機能を喪失させ、その影響(dominant negative効果)を検討した。その結果、異なる2種類のPTP2機能欠損組換えcDNA(2Cys/Ser変異型及び2P型)の発現によって、どちらの場合でもフレンド細胞の分化が顕著に阻害された。

 以上のことから、PTP2の異なる2つの機能欠損組換えcDNAの発現で分化の誘導が阻害され、PTB2が赤芽球分化の誘導に必須なkey factorであることを明らかにした。

 以上、本論文はフレンド細胞の赤芽球分化にチロシンフォスファターゼPTP2が必須な因子であるということを見い出した研究で、学術上寄与するところは少なくない。よって、審査員一同は、本論文に博士(農学)の学位を授与する価値は十分にあるものと判断した。

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