本研究は家族性致死的不整脈疾患であるRomano-Ward症候群の日本人における遺伝子座位を決定し,さらに遺伝子診断の可能性を探るため遺伝子連鎖解析を行ったものであり,下記の結果を得ている. 1.全国の施設の協力を仰いで日本人のRomano-Ward症候群の家系調査を行い,比較的稀な疾患であるといわれているにもかかわらず50家系を収集した. 2.50家系中,連鎖解析が可能であった13家系について第11染色体短腕(11p15.5)に存在するDNAマーカーを用いて連鎖解析を行ったところ,原因遺伝子座が11p15.5に存在する家系とそうでない家系の両方が存在した. 3.同質性の検定を施行したところ,危険率2.5%で遺伝的異質性が有意であるとの結果が得られた. 4.以上の結果より,組換えの有無を判定できない小さな家系においては11p15.5におけるDNAマーカーを遺伝子診断に用いるのは適当ではないということが明らかとなった. 以上,本論文は日本人のRomano-Ward症候群13家系において,11p15.5に原因遺伝子の存在するものとそうでないものに分類できることを明らかにした.さらに遺伝子診断の可能性について,現時点では組換えの有無を判定できない小さな家系においては不可能であることも示した.本研究は他の人種と比較して遺伝的にかなり同質であると考えられる日本人においても,本疾患の遺伝的異質性を明らかにした点において重要な役割を果たしたと考えられ,学位の授与に値するものと考えられる. |