本研究はB細胞や好酸球の分化増殖に関与しているインターロイキン-5の発現分子機構の解析を試みたのもであり、下記の結果を得ている。 1.IL-5発現細胞株であるATL16Tを用いて、IL-5プロモーター上に転写活性能を有する20塩基からなるエレメント(G1領域)を絞り込んだ。ATL-16Tの核抽出液を用いてゲルシフト解析を行い、そのエレメントに結合するタンパク質の存在を明らかにした。このタンパク質を単離する目的で、ATL-16Tの発現ライブラリーを、サウスウエスタン法を用いてスクリーニングし、GATAファミリータンパク質がこのエレメントに結合する事を明らかにした。 2.各GATAファミリータンパク質(GATA-2、GATA-3、及びGATA-4)に対する抗体を作製した。ATL-16T細胞核抽出液中に存在するGATAファミリータンパク質の内、GATA-4が主にG1領域に結合することを明らかにした。また、組み替え発現させた各種GATAファミリータンパク質を用いてG1領域に対する結合親和性をGATA-2、GATA-3、及びGATA-4に関して比較したところ、GATA-4が最もG1領域に結合親和性が強いことを明らかにした。 3.G1領域に結合するタンパク質がGATA-4であることが明らかとなった時点で、Jurkat細胞を用いた形質導入実験を行った。IL-5プロモーターの活性化にはGATA-4とTPA-A23187刺激の両方が必要であり、いずれか一方ではIL-5プロモーターは活性化されないことを示した。また、IL-5プロモーターに変異を入れた実験より、-70に存在するGATAエレメントと、-45に存在するCLEOエレメントの2つが、IL-5プロモーターの活性化に必要なエレメントであることを明らかにした。 4.ヒトGATA-4のcDNAをクローニングし、その全塩基配列を決定した。 以上,本論文はGATA-4のクローニング、及び形質導入実験によりIL-5プロモーター領域の解析を行い、IL-5の発現分子機構を明らかにしたものである。本研究は,これまでほとんど解析の進んでいなかったIL-5の、アレルギー疾患における関与の解明に重要な貢献をなすと考えられ,学位の授与に値すると考えられる. |