本研究は省資源を中心とした環境教育のプログラム開発とその評価に関する研究である。本教育プログラムは、単に対象者の個人的要因のみに着目するのではなく、行動を左右する環境要因をも視点に入れていること、また準実験的デザイン形式をとり、コントロール群を設定し、異なった複数のプログラムの比較を含めた評価研究であることに特色がある。この種の先行研究は、わが国においては極端に少ない。具体的には台湾台北市の中学生1,000名強を対象として、まず、省資源に関する生徒とその保護者の環境意識や行動実態について事前調査を行い、その結果にもとづき教育プログラムを考案し、1.授業プログラム、2.おもに学校行事を通し全校的に取り組む学校活動プログラム、3.授業プログラムと学校活動プログラムの組み合わせの3種のアプローチを計画、実施し、プロセス評価、結果評価を行い比較している。 結果は下記のごとくである。 事前調査において明らかになったのは: 1)生徒達の節水、節電など省資源行動は比較的多かったが、ゴミ分別やリサイクル、過剰包装に関する減量消費の行動がかなり少なかった。それも親自身の環境行動や親のこどもへのしつけと一致していた。 2)生徒の環境資源に関する知識は、まだ不十分であったが、態度はかなり積極的で、関心も高かった。 3)環境行動に関わる有意な変数は、関心度、態度、実践自信及び親の行動であった。 異なった複数の教育プログラムの効果と比較については: 1)おもに授業のみのプログラムは知識、実践自信の強化に有効であったが、態度、行動の変容には有意に影響しなかった。 2)おもに学校の雰囲気を醸成し、全校的に取り組む学校活動プログラムは、知識、態度の変容は明確でなかったが、学校でのリサイクル実践率が有意に高まった。 3)前述した二つのプログラムを合わせたプログラムは、以上2種の効果を得ただけでなく、行動実践度の得点も有意に増加した。 以上 本論文は、健康的な社会環境づくりの一つとして、人々の環境問題への対処、環境保全への努力が重要であるという考えに立って、それを援助する学校における環境教育のあり方について研究し、中学生をターゲットにした場合の教育プログラムを考案し、関連授業を中心とし、学校行事や特別活動を加えたアプローチが有効であることを実証的に明らかにした。 本研究は、これまで遅れていた健康教育の評価研究を一歩進めることにも重要な貢献をなしたと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |