本研究は、都市成長管理論に関する実証的研究である。成長管理の考え方は、1970年代、米国の地方自治体が急速に広がる市街化の拡大を抑制する目的で始められた都市計画の一手法である。それが、1980年代後半になり州政府が実施する政策にもその考え方が取り入れられたとされている。本研究の問題意識は、1)州成長管理と地方自治体成長管理の継続性と関連性、2)州成長管理の導入背景と政策における具体的解決策、3)都市成長管理論の計画論としての定着、の大きく3つの点である。 本研究の論旨は以下のとおりである。州政府主導による成長管理政策とは、自治体が行う成長管理を広い意味で取り込んだ計画体系である。州政府主導による成長管理政策とは、地方自治体総合計画、地域計画、州計画又は州計画目標の間で整合性を図り州計画体系の構築をめざすしくみであり、地方自治体が実施する"開発の速度、量、タイプ、位置を規制することにより、開発、人口増加による様々なインパクトを最小限に抑えるプログラム"である成長管理は、計画体系の中の一規制手法として位置づけられる。州成長管理政策の構造的特徴として、環境政策的側面と財政運営的側面の2つを挙げた。この内、特に財政運営的側面の中の都市基盤整備計画(Capital Improvement Plan:CIP)が、地方自治体が開発の速度、量、タイプ、位置を規制することを目的とする成長管理を計画体系の中に取り込むカギとなる。 本研究の評価される点は、米国における都市成長管理論を計画論の観点より体系的に考察したことである。1980年代後半より州成長管理政策を実施してきている全ての州を対象に、その政策の実態を詳細に解明し、地方自治体が実施する成長管理の考え方との関連性を明らかにし計画体系として考察していることである。その中で、州成長管理政策の構造的特徴として環境政策的側面と財政運営的側面を挙げ、広域レベルで合意形成が必要な環境保護・保全や交通網の発達に伴い行政区域を越えて広がる開発のインパクトの地方財政への影響緩和のためには、州政府主導で整合性のとれた計画体系を構築しその実施手段として規制手法を位置づける必要があると論じている。 日本における成長管理研究は、大都市圏郊外部自治体が実施する住宅建設総量規制や開発負担等の条件付き開発許可制度を対象としてきた。本研究の結果は、米国の州成長管理という広域的観点から成長管理論を見直したものであり、従来までの規制手法としての考え方に対してそれらを位置づける計画体系としての考え方を提示したものであり,我が国におけるこの分野の研究の発展のみならず,都市計画制度に進展にとっても有用である。 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 |