本研究は都市地域と農村地域との間、あるいは病院部門と診療所部門との間における各々の医療資源の生産力効果の差を推定し、医療資源の投入に対する効率性と医療費支出との関係を分析したものである。分析モデルとしては経済分析の道具の一つである生産関数を用い、その分析によって各々の医療資源の平均生産力および限界生産力を測定して、その結果による各々の医療資源の蓄積程度の解釈と、そして医療資源の投入に対する効率性と医療費支出との関係の解釈を試みたものであり、下記の結果を得ている。 1.分析対象の中心とした韓国の場合、都市型医療圏集団(都市地域)は農村型医療圏集団(農村地域)に比べて医療資源の総生産力が24%高く、五つの広域地域の中で、CC地域の総生産力がほかの地域に比べて高いことが示された。また平均水準に比べてもっと効率的な生産技術を表す医療圏集団はすべての医療圏集団に比べて医療資源の総生産力が9.6%高いことが示された。 2.そして、各々の医療資源のアウトプット弾力性に基づいて医療資源ごとの生産力を推定した結果、全般的には医師数の生産力が一番高く、病床数の生産力はマイナスとなったことが示された。しかし、都市型医療圏集団だけを分析対象とした場合は、医師数と看護職員数の生産力が比較的に高く、農村型医療圏集団だけを分析対象とした場合は補助的な医療従事者の生産力が医師数に比べてもっと高いことが示された。一方、医療資源の弾力性に基づいた「規模の経済」程度をみた結果、0.5〜0.6の範囲だったので、韓国での医療資源の投入費用は逓減的ではないことが示唆された。 3.また、各々の医療資源に対する限界生産力を推定した結果、全般的にはその他医療関係職員数が一番高くことが示された。都市型医療圏集団を分析対象とした場合、医師数のほうが一番高く、農村型医療圏集団を分析対象とした場合その他医療関係職員数が一番高くことが示された。したがって、都市型医療圏集団では医師数のほうが相対的に過小状態、農村型医療圏集団では医師数よりも、その他医療関係職員数が相対的に過小状態にあることが示唆された。なお、各々の医療圏別にもみた結果、その限界生産力がマイナスとなった地域が現れたので、そのような過小・過剰傾向が地域別にも見られた。 4.一方、参考に分析対象とした日本の場合、各々の医療資源のアウトプット弾力性に基づいて医療資源ごとの生産力を推定した結果、全般的には医師数・看護職員数の生産力が高く、その他医療関係職員数のほうは比較的に低いことが示された。しかし、病院部門の場合は病床数の生産力が一番高くが、診療所部門の場合は医師数の生産力がもっと高いことが示された。一方、医療資源の「規模の経済」程度をみた結果、0.8〜1.12の範囲だったので、医療資源の投入費用は逓減的だことが示唆された。 5.また、各々の医療資源に対する限界生産力を推定した結果、全般的には医師数のほうが一番高くことが示された。病院部門の場合は医師数と看護職員数のほうがマイナスとなって、診療所部門の場合は医師数のほうが高いことが示された。したがって、医療機関特性によっても、医療資源の過剰、あるいは過小状態が示唆された。即ち、病院部門は相対的に医師数の過剰状態、診療所部門には相対的に医師数の過小状態にあることが示唆された。 6.一方、インプット(即ち、医療資源)効率性と医療費との関係をみた結果、お互いに高い相関関係が示されたので、インプット効率性が高ければ高いほど、一人あたり医療費は低くなることが示唆された。 以上、本論文は医療資源の生産力効果分析を通してみた結果、各々の医療資源が地域別に、あるいは医療施設別に分布されている程度がその特性によって、異なっている点が明らかにした。そして、都市地域には比較的にもっと多くの医師数を配置し、農村地域の場合はその地域特性を勘案して準医療従事者(paramedic)をもつと多く活用したほうが医療マンパーワ政策面で望ましく、また日本の事情からみた場合には診療所への医師数の増加政策が必要である点が明らかにした。なお、各々の医療資源を適切に配置・活用すると、多くの追加的な増大なしで、ある程度、患者の診療を充足させることができ、また医療資源の非効率的な配置・活用は医療費増加にも繋がることができて、今後の医療マンパーワ政策に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられた。 |