学位論文要旨



No 112357
著者(漢字) 藤田,渉
著者(英字)
著者(カナ) フジタ,ワタル
標題(和) 有機-無機複合ナノコンポジット、銅水酸化物及びサポナイト層間化合物の磁気的性質
標題(洋) Magnetic Properties of Organic/Inorganic Hybrid Nanocomposites Derived from Layered Copper Hydroxides and Saponite Intercalation Compounds
報告番号 112357
報告番号 甲12357
学位授与日 1997.03.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(学術)
学位記番号 博総合第114号
研究科 総合文化研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 助教授 阿波賀,邦夫
 東京大学 教授 菅原,正
 東京大学 教授 小島,憲道
 東京大学 助教授 尾中,篤
 神奈川大学 教授 森,和亮
内容要旨 序論

 層状物質はイオン結合あるいは共有結合で結ばれた巨大な二次元層がvan der Waals力のような弱い結合で積み重なっている物質である。その層間には各種の化学種を挿入(インターカレーション)することができ、ゲスト層と無機層とが交互に積層した層間化合物を形成する。層間化合物はその低次元性を反映した様々な興味深い相転移を示すことから、最近の20年間、固体物性研究の中心の話題となっている。一方固体化学の分野ではインターカレーション反応に着目し、層間での特異な包接現象や化学反応が見出されており、基礎化学から工学的な応用に至る幅広いカテゴリーで注目されている。またごく最近ではゲスト層と無機層との分子スケールでの交互積層場を利用して、両層の性質の協同効果による励起子超伝導のような新しい物性現象の発現が期待されている。

図1、有機無機複合系材料

 このような系では有機化合物が得意とする性質…化学反応性・分子運動能・化学修飾能…を有機層に任せ、無機物が得意とする性質…磁性・伝導性…を無機層に任せるというように機能の役割分担を行うことが可能である。つまり図1に示すようにフォトクロミズムを示す有機分子と遷移金属イオンを集積して、有機分子の光応答に合わせて遷移金属イオン間の磁気的相互作用を変えることができれば、ある特定の光によって磁性を動的に制御でき、なおかつ分子レベルでの情報の蓄積が可能な、全く新しい感覚の磁性材料が実現できることを示している。そこで有機化合物と無機化合物の長所を合わせ持ち、なおかつ両者の特徴を十分生かせる有機-無機複合材料としての層間化合物が材料科学の新たな展開になると考えた。

 博士課程では層間化合物の磁性と様々な機能に着目し、層間のゲスト間、磁性層内の遷移金属イオン間及び層内の遷移金属イオンと層間のゲスト間の各磁気的相互作用を検討した上で、さらに磁性層間への機能性有機分子のインターカレーション及び層の磁性制御について検討した。詳細は以下に示すとおりである。

1、粘土層間に取り込まれた有機ラジカル層間ゲスト間の磁気的性質

 磁気的に興味深い性質を有する有機ラジカル、ニトロニルニトロキサイドはその分子間配置に依存する物性を示すことから、その化学修飾による結晶制御を試みる研究が報告されている。

 無機層状化合物の一種であるサポナイトはカチオン交換により、その層間に様々な有機イオンを取り込むことのできるユニークな物質である。層間の分子凝集体は、無秩序な分散状態から規則的な分子配列に至る幅広い集合形態を示すことからバルク結晶では予測できない新たな物性が期待される。そこでサポナイトの層間にアルキルピリジニウムニトロニルニトロキサイド(RPYNN+:SchemeI-I)のインターカレーションを行い、それらの磁気的性質を調べた。

Scheme I-I図1-1、インターカレーション曲線1+(○)、2+(□)、3+(▽)及び4+(◇)図1-2、サポナイト-有機ラジカルの常磁性磁化率。1+(○)、2+(□)、3+(▽)及び4+(◇)

 図1-1にアルキル基の長さや置換位置を変えた数種のRPYNN+のサポナイト層間への取り込み率を示す。その実験結果からサポナイト中に存在するイオン交換サイトの6〜7割がRPYNN+イオンで置き換わり、サポナイト層間に有機ラジカルカチオンが大量に取り込まれることが明らかとなった。粉末X線回折の結果よりRPYNN+を取り込んだサポナイトの層間はいずれも約5Å程度に広がっていることから、いずれのイオンも層間に対して平行に挿入されていると考えられる。図1-2にはそれらの層間化合物の磁化率の温度依存性を示す。アルキル誘導体のバルク結晶で見られた置換位置及び鎖長依存性が消え去り、それぞれ全温度領域でほぼキュリー則に従う常磁性的な挙動を示した。なおキュリー定数から算出したスピン数は取り込まれたラジカル数とほぼ一致した。バルク結晶の時と較べて、磁気的相互作用が弱くなる原因はサポナイトのイオン交換サイト間距離が5.5-7.8Åと遠く、ラジカル間の距離を引き離してしまうためと考えられる。

2、銅水酸化物-アルキルカルボン酸層間化合物層内における磁気的性質のアルキル鎖長依存性

 層状構造を持つ磁性体は磁気的秩序状態の観点から実験と理論の両面で活発に研究されている。銅水酸化物塩、Cu2(OH)3X(X=NO3,ハロゲン等)はCd(OH)2型の層状構造からなり、層間には交換可能なアニオンXが存在する。この磁性層間に取り込まれた分子と遷移金属層の磁性との関連を調べる目的で、まずアニオンXをいろいろなアルキルカルボン酸イオンn-CmH2m+1COO(m=0-9)と交換して、様々な層間距離を持つ銅水酸化物の磁気的性質について検討した。

図2-1、アルキル炭素数と層間距離図2-2、アルキルカルボン酸-水酸化銅の磁性

 図2-1に粉末X線パターンから求めた銅水酸化物の層間距離とアルキルカルボキシレートの炭素数との関係を示す。層間距離はアルキル基の炭素数とともに増加している。図2-2にアルキルカルボキシレート(m=0、4及び7)を取り込んだ銅水酸化物の常磁性磁化率の温度依存性(3〜280K)を示す。磁化率の測定はファラデー法にて主磁場1T、磁場勾配200Oe cm-1で行った。ギ酸-水酸化銅(m=0)では、室温から7KまではpTは緩やかに増加した後その温度以下で減少した。これは銅水酸化物層内の銅イオン間に強磁性的な相互作用が、また層間では反強磁性的な相互作用が働くためであり、その交流磁化率及び磁化曲線の測定によりメタ磁性体(TN=5.8K)であることがわかった。吉草酸-水酸化銅(m=4)では、pTは温度の減少とともに単調減少し、層内の磁気的相互作用が反強磁性的(=-35K)であることを示唆している。なお、この温度範囲では磁気的秩序状態への相転移は認められなかった。カプリル酸-水酸化銅(m=7)は吉草酸-水酸化銅と同様、高温域で反強磁性的な挙動が認められるが低温域では一転して強磁性的となり、弱強磁性体(TN=22K)であることがわかった。

 本研究により、層状銅水酸化物の磁気的性質は層間に取り込んだアルキルカルボン酸イオンの長さによって多彩に変化することが明らかとなった。なお、他のカルボン酸イオンについても現在検討中である。

3、アルキルカルボン酸-水酸化銅層間化合物構造と磁性との相関

 一般に絶縁体の磁性はその構造と密接な関係がある。前節で見出された一連の層間化合物の磁性の変化は有機分子のインターカレーションにより、その層構造に変化が生じるためと考えられる。そこで全く異なる磁気的挙動を示した2つの層間化合物、ギ酸-及びカプリル酸-水酸化銅のCuK-吸収端のX線吸収スペクトルを測定し、それらの構造について比較検討を行った。

 図3-1にギ酸-及びカプリル酸-水酸化銅の動径構造関数の距離依存性を示す。層内の銅イオン間に強磁性的相互作用が働くギ酸-水酸化銅は第二近接の銅イオンに相当する6Å付近にピーク(焦点効果)を持つのに対して、弱強磁性体であるカプリル酸-水酸化銅では認められなかった。このことより層間にカプリル酸イオンが取り込まれると層内の銅イオンの配列が乱れることが明らかとなった。表3-1はEXAFS測定から求めたそれぞれの銅イオンの配位原子の種類、及び原子間距離を示す。層内には2種類のCu-O間距離と3種類のCu-Cu間距離が存在していると仮定した。3種類のギ酸-水酸化銅の配位環境は親物質である酢酸-水酸化銅とほとんど変わらなかったのに対して、カプリル酸-水酸化銅では層間のカルボキシレートの酸素原子が直接配位している部分のCu-O間距離と3種類のCu-Cu間距離のうちのカルボキシレートの酸素原子によってブリッジされている2つが短くなり、残りが長くなっている。これらの構造の相違はカプリル酸-水酸化銅の銅イオンの八面体の主軸がギ酸-水酸化銅のものよりも層の平面の方向に傾いたことに相当する。つまりカプリル酸イオンから銅水酸化物層のイオン交換サイトへのケミカルプレッシャーを受けていることを意味する。

 水酸化物イオンで架橋された銅の二核錯体の架橋結合角と磁性との間には良い対応関係があり、特に結合角が1-2°程度変わることによってその磁気的相互作用が反転する領域が存在することが報告されている。我々が検討した銅水酸化物において見出された大きな磁気的性質の変化はその架橋結合角が磁性の変わり目付近に位置するために起こると考えられる。ギ酸-及びカプリル酸-水酸化銅の層内には各々7種類の架橋角が存在しており、それぞれを比較してみると最大12度の差があることから、両者の間で磁気的性質に大きな相違が予想される。

 本研究により層状銅水酸化物は層間のイオンの長さが変わると、層内のイオン交換サイトに加わる局所的な圧力が変化するために層内の磁気的性質が大きく変わるユニークな物質であることが明らかになった。

図3-1、ギ酸-及びカプリル酸-水酸化銅の動径構造関数表3-1、ギ酸-及びカプリル酸水酸化銅の構造パラメータ(Å)
4、銅水酸化物-有機ラジカル層間化合物磁性層とゲストとの間の磁気的性質

 遷移金属層状化合物の磁気的性質に関する研究において、これまでに層間に閉殻イオンを取り込んだ例は数多くあるが、磁性イオンを取り込んだ系を調べた例はあまり知られていない。例えばそのような層間に有機ラジカルが取り込まれた時、その層間の有機ラジカルと層内の遷移金属イオンとの間に新たな相互作用が生じることが期待される。それにより層内及び層間の磁気的相互作用の大きさが変わりなおかつその磁気的相互作用の次元性を3次元的にできる可能性がある。そこで層状水酸化銅の層間への安定ラジカル2,2,5,5-Tetramethyl-1-pyrrolidine-1-oxyl-3-carboxylateion(TMPOC:SchemeIV-I)のインターカレーションを行い、その磁気的性質について検討をした。

 TMPOCのインターカレーションは水溶液中、室温で24時間撹拌することによって行い、XRD、IR、ESR及び元素分析によりそれを確認した。図4-1にはTMPOC-水酸化銅の3〜280Kでの常磁性磁化率の温度依存性を示す。比較のため酢酸-水酸化銅の磁化率も併せて示す。TMPOC-水酸化銅のCurie定数はラジカルがインターカレーションされている量だけ増加している。酢酸-水酸化銅では層内の銅イオン間には強磁性的な相互作用が存在しているが、TMPOC-水酸化銅では温度の上昇とともに単調減少しており、反強磁性的相互作用(=-35K)のみが結論される。

Scheme IV-I

 図4-2には水酸化銅層間に取り込まれたTMPOCのESR強度の温度依存性を示す。TMPOC-水酸化銅全体の磁化率が反強磁性的であったにもかかわらず、ラジカルのESR磁化率は-10K程度の強磁性的な相互作用を示した。TMPOCはカルボン酸部分ではなく、NO部分で層内のイオン交換サイトに配位していると解釈すれば、この実験事実が説明できる。この結果は層間のラジカルと層内の銅イオンとの間に磁気的な相互作用が新たに生じたことを意味している。

図4-1、酢酸-水酸化銅及びラジカル-水酸化銅の常磁性磁化率図4-2、層間ラジカルのESR強度の温度依存性

 EXAFSによる構造解析の結果より、TMPOC-水酸化銅のCu-OH-Cu角は酢酸-水酸化銅と較べて0.7°〜3.0°程度拡張していることから、ラジカルのインターカレーションによる層構造の変化が層の反強磁性的相互作用の出現の原因になっていると考えられる。

 これらの事実より層間に取り込むラジカルを選択することで層間を磁気的につなぐことができ、なおかつそのラジカルを反応させることにより全体の磁性の制御が可能になると考えられる。

5、Cu2(OH)3[8-(p-phenylazophenyloxy)octanoate]における溶媒誘起相転移

 我々は磁気測定及びEXAFS解析から銅水酸化物層の磁性が層間に取り込まれる有機分子の種類によって多彩に変化することをすでに見出している。そこで凝集状態の相変化が報告されているアゾベンゼン誘導体を銅水酸化物層間に取り込み、層間での凝集状態と磁性層の性質について検村を行った。

 アゾベンゼン誘導体8-(p-phenylazophenyloxy)octanoateは常法で合成した。層間化合物はアゾベンゼン誘導体のメタノール温溶液にCu2(OH)3OAc・H2Oを分散させ、酢酸イオンと交換することにより調整した。図5-1(a)にアゾベンゼン誘導体水酸化銅層間化合物の粉末X線パターンを示す。有機層の厚み(20.7Å)がゲスト分子の分子長(21.7Å)とほぼ一致することから、ゲスト分子は層間でinterdigitateな単分子膜を形成していると考えられる。この単分子膜サンプルをアセトニトリル中、2日間分散させたときの粉末X線パターンを図5-1(b)に示す。その層間距離は38.7Åと分子長の約2倍にまで拡張され、層間のゲスト分子はmembrane様二分子膜を形成していると考えられる。このようにアセトニトリル中に浸すことにより、ゲスト分子の凝集状態の変化が観測された。さらにこの二分子膜サンプルをメタノール中、50℃で加熱し、一日放置した。その粉末X線パターン(図5-1(c))は単分子膜サンプルのパターン(図5-1(a))とよく一致していることから、この層間化合物における単分子膜-二分子膜層変化は可逆的に起こることが結論される。

 図5-2にアゾベンゼン誘導体-水酸化銅層間化合物における単分子相及び二分子相の常磁性磁化率を示す。単分子相サンプルでは、pTは温度の減少とともに単調減少し、層内の磁気的相互作用が反強磁性的(=-151K、T>140K)であることを示唆している。なお、この温度範囲では磁気的秩序状態への相転移は認められなかった。一方二分子相サンプルでは強磁性的なり、磁化曲線の測定から弱強磁性体(TN=11.5K)であることがわかった。

 以上により層間有機集合体の構造変化によって銅水酸化物層の磁性が変化する興味深い磁性体を見出した。この磁性の変化は磁性層の構造が変化するために起こるものと考えられる。この結果は有機層の変化により無機層の物性を制御しうる新しい分子素子の開発のためのヒントになると考えられる。

図5-1粉末X線パターン図5-2常磁性磁化率の温度依存性
6、フォトクロミック分子-水酸化銅層間化合物の磁性

 本研究では光照射により動的な磁性の変化を示す物質の創成を目指す目的で、銅水酸化物層間にアゾベンゼン誘導体(AZOCm;SchemeVI-I)を取り込み、アゾベンゼン部位の光誘起構造変化の際に層の磁気的性質がどのように変化するかについて検討した。

 AZOCmは通常の方法で合成した。層間化合物はAZOCmのメタノール温溶液にCu2(OH)3OAcH2Oを分散させ、酢酸イオンと交換することにより調整した。光照射は高圧水銀灯の300-400nmのバンドパスフィルタを用いて、N2下、試料をKBrペレットに分散させて行った。

 図6-1に光照射前後におけるAZOCm-水酸化銅の可視-紫外拡散反射スペクトルを示す。実線は光照射前、破線は照射後を示す。光照射前には330nm付近にtrans-アゾベンゼン体特有のバンドが存在する。AZOC3及びAZOC7-水酸化銅に紫外光を照射すると、このバンドが減少しcis体への異性化が確認された。しかしながらその後可視光を照射しても逆反応は起こらなかった。一方AZOC0-水酸化銅においては光照射前後でスペクトルに有意な変化は認められなかった。光異性化反応を起こすAZOC3及びAZOC7-水酸化銅について磁気測定を行ったを行ったところ、光照射前後の間で磁化率に有意は認められなかった。この理由はアゾベンゼン部位がポリメチレン鎖により磁性層から遠ざけられ、光反応による構造変化が層に届かないためと考えられる。

Scheme VI-I図6-1、UVスペクトル
まとめ

 本研究により有機-無機複合系である銅水酸化物及びサポナイト層間化合物の磁気的性質の検討から、有機化合物の構造柔軟性と無機化合物の磁性との協同効果による磁性の動的制御の可能性が初めて示された。層状物質には転移点の高い磁性体、半導体、金属伝導体及び高温超伝導体など多様性がある。それらへの機能性有機分子のインターカレーションは動的物性のみならず、複合物性や新規物性の発現の可能性を秘めている点で、本研究の更なる進展が期待される。

審査要旨

 「有機-無機複合ナノコンポジット」は、有機物と無機物の双方の特性を兼備するような複合物性、あるいは両者の間の協同効果が顕在化しやすい系として注目を集めている。学位申請者、藤田渉は、層状銅水酸化物インターカレーション化合物を研究対象の選び、この系のさまざまな物質を合成したうえで興味深い磁気的性質を見いだした。

 アルキルカルボン酸銅水酸化物、Cu2(OH)3(n-CmH2m+1COO)において、アルキルカルボン酸の脂肪鎖の長さを変えながら丹念に磁気測定を繰り返し、銅水酸化物二次元面内の磁気的相互作用が、脂肪鎖の伸長とともに強磁性的から反強磁性的に反転することを発見した。特に長鎖化合物は、反強磁性相互作用とSpin Cantingにより弱強磁性体となる。このように、インターカレートされた有機物の種類によって無機層の磁性が変化することは非常にめずらしく、地道な努力が成果に結びついた点は大いに評価できる。高エネルギー物理学研究所でEXAFSの測定を行い、長鎖と短鎖のアルキルカルボン酸誘導体に関して、その水酸化銅層内の構造に特徴的な差異を見いだした。観測された磁性の変化に対して微視的な観点からの解釈を与え、構造面からも上記の磁性変化を支持する結果を得ている。さらにこの物質系に対しては、アゾベンゼンに長鎖アルキルカルボン酸を付加した化合物のインターカレーションにも成功している。メタノール中とアセトニトリル中で、有機層の構造が交互単分子膜構造と二重膜構造の間で可逆的な構造変化を起こし、しかもその変化が無機層の磁気的性質の大きな変化を伴うという特筆すべき結果を得ている。磁性という枠組みを越え、広く物質科学の分野で関心を呼ぶであろう。以上、有機物の柔軟性と磁性という無機物の性質の間をつなぎ、両者の協同現象を作り出した点は審査員一同から高い評価を得た。

 よって本論文は博士(学術)の学位請求論文として合格と認められる。

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