学位論文要旨



No 112362
著者(漢字) 藤田,浩徳
著者(英字)
著者(カナ) フジタ,ヒロノリ
標題(和) オーキシン極性輸送阻害剤に対する感受性の変化したシロイヌナズナ突然変異体の単離と解析
標題(洋) Isolation and analysis of mutants with altered responses to polar auxin transport inhibitors in Arabidopsis thaliana
報告番号 112362
報告番号 甲12362
学位授与日 1997.03.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(理学)
学位記番号 博総合第119号
研究科 総合文化研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 庄野,邦彦
 東京大学 教授 大森,正之
 東京大学 助教授 箸本,春樹
 東京大学 教授 林,利彦
 東京大学 助教授 長谷,あきら
内容要旨 〈序〉

 形態形成は、その最初の段階において極性が形成されることによって引起こされる。従って、形態形成の理解のためには極性形成機構の理解が重要である。この観点から種々のモデル生物において極性形成機構の研究が盛んに行われている。植物においても様々な極性が存在しているがその分子レベルでの機構はほとんど分かっていない。高等植物に存在する極性の中で特に有名なものの一つとしてオーキシンの極性輸送が知られている。この現象は植物ホルモンの一つであるオーキシンが植物の体軸の中を茎頂から根端へと極性的に輸送されることをいうが、その原因として現在、オーキシンを輸送する個々の細胞の細胞膜中に存在するオーキシン輸送体(auxin-efflux carrier)が根端側により多く局在することによると考えられている。また、オーキシン輸送を阻害する物質が数多く知られており、それらを総称してオーキシン(極性)輸送阻害剤と呼んでいる。オーキシン輸送阻害剤はさらにその化学構造に基づいていくつかのグループに分かれており、NPA、TIBA、HFCAはそれぞれ別のグループを代表する阻害剤として知られている。オーキシンの極性輸送に関しては現在までに数多くの研究がこの輸送阻害剤を中心にしてなされてきているが、その分子レベルの機構はほとんど明らかになっていない。そこで私はオーキシン極性輸送系の機構を解明することを目的に遺伝学的手法をこの現象に適用することを試みた。すなわち、シロイヌナズナを用いて、オーキシン輸送阻害剤の一つであるNPAを用いこれに対する感受性の変化した突然変異体の単離及び解析を行った。

〈第1章〉

 まずNPA耐性突然変異体を根の伸長阻害の効果を指標にしてEMS処理したM2種子より6個体単離した。これらは2つの遺伝子座に分れそれぞれをpir1及びpir2と名付けた。これら突然変異体はNPAの根の伸長阻害に対しては耐性を示すものの、根の重力屈性阻害に対しての感受性は変化しなかったことから、NPAの効果のうち根の伸長阻害効果に特異的な突然変異体であることが示唆された。また、両突然変異体はTIBAに対しても耐性を示したことから、NPA特異的ではなくオーキシン輸送阻害剤に一般的な突然変異体であることも示唆された。次に植物ホルモンに対する応答を調べたところpir1は天然のオーキシンであるIAA及びエチレンの前駆体であるACCの両者に、pir2はACCに明らかな耐性を示した。またpir1の根は重力屈性異常を示すことを考え併せて、両突然変異体は現在までにすでに単離されている植物ホルモン応答の突然変異体の表現型と酷似していることがわかった。そこで相補性試験を行ったところ、pir1はaux1と、pir2はein2とそれぞれ遺伝子座が一致した。このことは、NPAの根の伸長阻害効果に植物ホルモンが何らかの関与をしていることを強く示唆しており、以下その点をエチレン、オーキシン極性輸送、オーキシンとの関連を中心に調べた。

 最初にエチレンの効果を検討した。野生型に対するNPAの根の伸長阻害効果は、エチレンの阻害剤である銀イオンやein2/pir2エチレン非感受性突然変異によって部分的に回復したことから、NPAはエチレンを介して一部効果を発揮している可能性が考えられた。この点を確かめるためにオーキシン輸送阻害剤の投与によってエチレンが誘導されるかの検討を行った。結果はNPA、TIBAどちらの投与によっても野生型のエチレン発生量は何も投与しない対照と変わりはなかった。この結果は、バックグランド・レベルのエチレンがオーキシン輸送阻害剤の根の伸長阻害効果を強めていることを意味している。

 次にオーキシン極性輸送が根の伸長に及ぼす効果をTIBAとそのアナログを用いて解析を行った。それら試薬間において、オーキシン極性輸送の阻害活性は、根の伸長阻害活性と正の相関関係が認められたのに対し根の伸長阻害効果との間には相関関係は認められなかった。特に3-IBAはオーキシン極性輸送の阻害活性をほとんど示さないのに対し、極めて顕著な根の伸長阻害活性を示した。このことは3-IBAがオーキシン極性輸送阻害とは無関係な経路によって根の伸長阻害を引起していることを示しており、TIBAの効果の中にもこの経路の関与の可能性が示唆される。尚、3-IBAの強い阻害活性はaux1 ein2二重突然変異体においても認められることから、オーキシンもエチレンも関与しない経路であることが示唆される。

 現在、オーキシン輸送阻害剤の根の伸長阻害効果は、オーキシン輸送の阻害により蓄積した高濃度のオーキシンによって阻害効果が引起こされるという仮説により、主に説明されている。この点を含めNPAの根の伸長阻害効果におけるオーキシンの効果を検討するため、二重突然変異体を用いて解析を行った。aux1/Pir1はオーキシンとエチレンの双方に対し耐性を示すので、そのNPA耐性の性質はオーキシン耐性によるものかエチレン耐性によるものか、どちらが本質的に寄与しているのかがはっきりしない。しかしein2/pir2はエチレンに対する感受性を全く欠如している一方オーキシンの感受性は正常な突然変異体であるので、ein2とaux1 ein2の両者を比較することにより、純粋にオーキシン耐性のみの影響を知ることが可能である。その結果、両者はNPAに対して同程度の耐性を示した。このことからNPAの根の伸長阻害効果に対するオーキシンの寄与は検出されず、上記の仮説は少なくともシロイヌナズナに関しては当てはまらないことが示された。また、このことはaux1/pir1のNPA耐性はそのオーキシン耐性の性質よりもむしろエチレン耐性の効果により付与されていることを示唆している。

く第2章〉

 NPA高感受性突然変異体の単離も耐性突然変異体と同様に試みた結果、2個体が得られ、相補性試験の結果同一遺伝子座の劣性突然変異体であることが明らかになった。そこでこれらをpis1-1及びpis1-2と名付け、以後pis1-1について詳細な解析を行った。植物ホルモンに対するPis1-1の感受性を検討した結果、わずかな高感受性(3倍弱)が認められた2,4-Dを除いて、調べた全ての試薬(IAA、NAA:合成オーキシン、IBA:合成オーキシン、PCIB:抗オーキシン剤、ACC、BAP:サイトカイニン)に対し感受性の変化は認められず、従ってpis1は上記耐性突然変異体とは異なり、植物ホルモンに対する感受性が変化したためにNPAの感受性が変化したのではないことが分かった(表1)。

 次にNPAは非常に多岐にわたる効果を引起すが、それらの中でどの効果に対し感受性が変化しているかを検討した。その結果、pis1-1はロゼット径で8.6倍、実生の重量で8.9倍、根の伸長阻害で31倍、根の重力屈性阻害で24倍、根の光屈性阻害で25倍の高感受性を示し、また根の回転阻害においても明らかな高感受性を示した(表1)。NPAの幅広い効果に対する感受性の変化により、pis1オーキシン極性輸送系自身の変異体であることが示唆される。またこれらの屈性に関する結果は、一遺伝子座の変異により重力屈性及び光屈性の反応が同時に異常になりうることが示された最初の例である。このことは重力屈性と光屈性の双方を調節する遺伝的因子の存在が示され、またそれら屈性反応にオーキシンの輸送が深く関わっていることを強く示唆する結果でもある。またpis1は地上部の感受性の変化は地下部に比べて極端に小さく、よって根に特異的な突然変異体と考えられる。このことはオーキシン極性輸送系は地上部と地下部で完全には一致しないということが示唆される。

 次に、pis1の高感受性の性質が他のオーキシン輸送阻害剤に共通なものであるかどうかを調べるために、NPAとは別のグループとして分類されているTIBA及びHFCAに対する反応の検討を行った。pis1-1はNPAと同様にTIBAに対しても高感受性を示し、根の伸長阻害で49倍、根の重力屈性阻害で55倍、根の光屈性阻害で10倍の高感受性を、また根の回転阻害においても明らかな高感受性を示した(表1)。それに対し意外なことには、同じオーキシン輸送阻害剤でありながらHFCAに対する感受性の変化はいづれの効果に対しても認められず、野生型と挙動を同じくした(表1)。このことは同じオーキシン輸送阻害剤であってもその作用機作はNPA/TIBAとHFCAとでは遺伝学的に分離できる過程があること、さらにpis1はそのうちNPA/TIBAの作用に特異的に関わっていることが示唆される。pis1は劣性突然変異体であり、loss-of-functionの変異であることが推測されるので、pis1遺伝子産物はNPA/TIBAがオーキシン輸送体を阻害する過程を負に調節していることが示唆される(図1)。

 最後に、今回得られたpis1がaux1/pir1、ein2/pir2とNPAの感受性に関してどのような相互作用をするのか、または互いに独立に機能するのかを調べるために、それぞれの二重突然変異体を作成しNPAの影響を調べた。その結果、pis1 auxi及びpis1 ein2二重突然変異体は根の重力屈性阻害に関してpis1の表現型つまり高感受性を示し、根の伸長阻害に関しては中間的な表現型すなわち野生型に比べて低濃度のNPA(0.3M)に対しては若干の高感受性を、高濃度のNPA(10M)に対しては若干の耐性を示した。この結果は、pis1遺伝子産物とpir遺伝子産物とはNPAの効果に関して独立に機能していることを示唆しており、このことはpir突然変異体がエチレン非感受性の性質によりNPA耐性が付与されたという第一章の結果と矛盾しない(図1)。

<まとめ>

 以上の結果をまとめたものが図1に示されている。aux1/pir1、ein2/pir2はオーキシン極性輸送阻害剤に対し根の伸長阻害に特異的に耐性を示し、それはエチレンに非感受性によって引起されていることが示された。またpis1は根の伸長阻害、根の重力屈性阻害、根の光屈性阻害、根の回転阻害という多岐にわたる効果において高感受性を示し、その原因はNPA/TIBAの作用を負に調節している因子に欠損が起ったためと考えられる。

表1.Sensitivity spectrum in the pis1 mutant図1.Model for the action of the pis1 and pir products
審査要旨

 本論文は植物ホルモンの一つであるオーキシンの極性輸送という現象を、遺伝的な側面から新しい切り口で解析を試みたもので、序、第一章、第二章、考察の4部より構成されている。

 序では、オーキシンの極性移動の研究の形態形成の研究における位置ずけ、研究の歴史と現状の分析を行ない、問題点の指摘と本研究の目的を設定している。その要約は下記のようなものである。

 形態形成は、その最初の段階において極性が形成されることによって引起こされる。したがって、形態形成を理解するためには極性形成機構を理解することは重要である。このような観点から、様々な生物で極性形成機構の理解にむけての研究が盛んに行なわれている。植物にも種々の極性が存在するが、その中で特に有名なものの一つとしてオーキシンの極性輸送が知られている。この現象はオーキシンが重力の方向とは無関係に、常に植物の体軸の茎頂側から根端側へ輸送されるというものである。その原因としては、植物の体軸を構成する個々の細胞の細胞膜上にオーキシン輸送体(auxin-efflux carrier)が存在し、それが根端側により多く分布しているためと考えられているが、取り扱いの難しい膜タンパク質であり、その本体や分子機構はほとんど分かっていない。また、オーキシンの極性輸送は、NPA(N-1-naphthylphthalamic acid)、TIBA(2,3,5-triiodobenzoicacid)、HFCA(9-hydroxyfluorene-9-carboxylic acid)を代表とする化学構造の異なる物質群により特異的に阻害されることが知られており、それらの物質は総称してオーキシン(極性)輸送阻害剤と呼ばれている。今までに数多くの生理・生化学的な研究がこの輸送阻害剤を中心に行なわれてきたが、未だにその作用機構はほとんど明らかになっていない。そのような現状をふまえて、本論文提出者はオーキシン極性輸送系の分子機構の解明に遺伝的手法を適用することを試みた。すなわち、シロイヌナズナを用いて、オーキシン輸送阻害剤の一つであるNPAに対する感受性の変化した突然変異体の単離と解析を行なった。その結果は、第一章と第二章に記載されている。

[第一章の要約]

 第一章には、NPA耐性突然変異体の結果が記されている。NPA耐性変異体は、EMS処理したM2種子より根の伸長阻害への効果を指標にして6個体単離された。これらは2つの遺伝子座に分かれそれぞれをpir1、pir2と名付けた。これらの突然変異体はNPAの根の伸長阻害に対しては耐性を示すものの、根の重力屈性阻害に対しての感受性は変化しなかったことから、NPAの効果のうち根の伸長阻害効果に特異的な突然変異体であると思われる。種々の植物ホルモンに対する応答を調べたところ、pir1変異体はオーキシンおよびエチレン生合成の前駆体であるACCに、pir2変異体はACCに明らかな耐性を示した。pir1変異体が根の重力屈性異常を示すことを考え併せ、両突然変異体は既に単離されている植物ホルモン応答の突然変異体の表現型と酷似していた。そこで相補性試験を行なったところ、pir1はaux1と、pir2はein2とそれぞれ遺伝子座が一致した。pir1突然変異体はオーキシン耐性突然変異体であり、pir2変異体はエチレン耐性突然変異体であることから、NPAの根の伸長阻害効果にこれら植物ホルモンが関与している可能性を強く示唆した。以下その点をさらに詳しく解析した。

 エチレンの関与に関しては、野性型に対するNPAの伸長阻害効果が、エチレン作用の阻害剤である銀イオンやpir2エチレン非感受性変異によって部分的に回復したことから、NPAはエチレンを介して効果を示している可能性が考えられた。しかし、NPA投与によってエチレンの発生増加は認められず、組織内に存在するバックグランドレベルのエチレンがオーキシン輸送阻害剤の根の伸長阻害効果を強めていると考えられた。

 オーキシン輸送阻害剤によるオーキシン輸送阻害と根の伸長阻害の関係はTIBAとそのアナログを用いて解析された。その結果、それら試薬によるオーキシン極性輸送の阻害と根の伸長阻害の間には相関関係は認められず、極性輸送阻害剤の根の伸長阻害には極性輸送を介さない阻害作用のあることが示唆された。

 現在、オーキシン輸送阻害剤の根の伸長阻害効果は、オーキシン輸送阻害により蓄積した高濃度のオーキシンによって阻害効果が引起こされるという仮設によって説明されている。この点を含めNPAの根の伸長阻害効果におけるオーキシンの関与を二重突然変異体が用いて解析された。pir1変異体はオーキシンとエチレン双方に対し耐性を示すので、そのNPA耐性の性質はオーキシン耐性によるものか、エチレン耐性によるものかはっきりしない。しかし、pir2変異体はエチレンに対する感受性をまったく欠如しているが、オーキシンの感受性は正常な突然変異体であるので、pir2変異体とpir1 pir2変異体の両者を比較することにより、オーキシン耐性のみの影響を知ることができる。その結果、両者はNPAに対して同程度の耐性を示し、pir1変異体のNPA耐性がオーキシンに対する耐性ではなくエチレンに対する耐性によって付与されていることを示した。このことから、NPAの根の伸長阻害効果におけるオーキシンの寄与は認められず、従来の仮説は少なくともシロイヌナズナでは当てはまらないことを示している。

[第二章の要約]

 第二章にはNPA高感受性突然変異体の単離とその変異体の性質について記載されている。高感受性変異体は耐性突然変異体と同様な方法でスクリーニングを行なった結果、2個体が得られたが、相補性試験の結果、同一遺伝子座(pis1と命名)の劣性突然変異体であることが明らかになった。

 pis1突然変異体はオーキシン、エチレン、サイトカイニンなどの植物ホルモンや抗オーキシン剤に対する感受性の変化は認められず、上記耐性突然変異体(pir変異体)と異なり、植物ホルモンに対する感受性が変化したことが原因でNPAに対する感受性が変化したのではないと考えられた。また、NPAはシロイヌナズナ芽生えの成長阻害(ロゼットの直径および生重量)、根の伸長阻害、根の重力屈性阻害、根の光屈性阻害、根の回転成長阻害など非常に多岐にわたる効果を引起こすが、pis突然変異体はこれらの現象のすべてにおいて、約10〜30倍の高感受性を示した。NPAの幅広い効果に対して感受性が変化していることから、pis1突然変異体はオーキシン極性輸送系自体の変異体であることが強く示唆された。また、これらの屈性に関する結果から、一遺伝子座の変異により重力屈性と光屈性の反応が同時に異常になりうることがはじめて示された。このことは、重力屈性と光屈性の双方を調節する遺伝的因子が存在することを示し、またそれらの屈性反応にオーキシンの極性輪送が深く関わっていることを強く示唆するものでもある。さらに、pis1変異体のNPAに対する感受性の変化は、地下部の変化にくらべ極端に小さく、根に特異的な変異体と考えられた。このことはオーキシン極性輸送系が地上部と地下部では完全には一致しないことを示すものでもある。

 一方、pis1突然変異体は化学構造の異なるオーキシン極性輸送阻害剤であるTIBAにたいしては、NPAと同様な高感受性を示したが、HFCAに対する反応は野生型に対する反応と変わりなかった。このことは、同じオーキシン極性輸送の阻害であってもその作用機作にはNPA/TIBAとHFCAの間で遺伝学的に分離される過程が存在することを示すものである。また、pis1変異はNPA/TIBAに特異的な作用点における変異であることを示している。pis1は劣性突然変異であり、loss-of-functionの変異であることが推測されるので、pis1遺伝子産物はNPA/TIBAがオーキシン輸送体を阻害する過程を負に調節していることが示唆される。また、pis1とpir1あるいはpir2との二重変異体を作成し、NPAに対する反応を調べた結果はpis遺伝子産物とpir遺伝子産物とはNPAの効果に対して独立に機能していることを示唆していた。このことは、pir突然変異体がエチレン非感受性の性質によってNPA耐性が付与されたとする第一章の結論と矛盾しない。

 最後に考察では、従来オーキシン輸送阻害剤の作用は、輸送阻害剤によるオーキシン輪送の阻害によって蓄積した高濃度のオーキシンの作用として説明されてきたが、すべての現象にこの説明を適用することの危険性が指摘された。また、pis1に関しては極性輸送系自体に関わる新規の遺伝子であり、遺伝子を単離する必要性が述べられた。しかし、遺伝子座を決定したが周辺にマーカー遺伝子が少なく、その難しさと可能な方法について考察された。また、シロイヌナズナが遺伝的な解析にはすぐれているが、小型であり生化学的解析には必ずしも適当でないという実験材料上の制約から根のオーキシン輸送を測定できなかったが、その必要性と可能な方法についても考察された。

 以上、本論文では、植物ホルモンのオーキシン極性輸送の解析に新たに遺伝的手法を導入することにより、多くの新知見を得、また、新しい道を切り拓いた。

 よって本論文は博士(理学)の学位請求論文として合格と認められる。

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