都市域の土地被覆情報は、その地域の都市構造を反映していると考えられる。広域の土地被覆を統計的に観察することで、特徴のある地域を半自動的に抽出することが可能となる。さらに、継続して土地被覆の変化を追うことにより、その地域の持つ方向性、問題点を探ることができる。 しかし、地図上で土地利用から土地被覆を推定する手法では、たとえば戸建住宅地における庭の状態のような小規模で地図上に明記されない情報を得ることはできない。このような情報も含めて、精密な土地被覆情報を得るためには、航空写真と地図情報の突き合わせによる推定作業が必要であるが、その作業に必要な労力は膨大なものとなる。このため、現在、詳細な土地被覆情報が継続的かつ広範囲に得られる地域は限定されている。 そこで、本論文ではリモートセンシングによる土地被覆解析手法の検討と緑被率の算出への応用を行った。 都市域では、土地被覆推定は混合ピクセルを前提としなければならない。混合されているピクセルを一つのカテゴリーをして捉えるならば、最尤法に代表される分類手法は有効である。しかし、たとえば庭や街路樹のような小規模な構造を分析の対象としようとするときには、カテゴリー解析の手法を用いるべきである。 リモートセンシングによって得られた1画素内に混在している表面要素の割合を算出するために、カテゴリー解析の手法が用いられる。この手法では、ピュアスペクトルパターンをあらかじめ与えなければならない。 しかし、観測されるスペクトルパターンは、同一の画素に対しても季節、大気状況等によって変動するため、これをアプリオリに与えることは困難である。この問題は、観測されたデータ集合からピュアピクセルと考えられる画素を自動的に抽出することで解決することができる。 本論文では、まず、与えられたデータの集合の凸包が代表点の資格を持つことを示した。実際に抽出された代表点は、総体として、対応する特徴的な土地被覆のデータ点を抽出しており、その集合の代表点として有効である。 しかし、厳密な凸包を作成することによる代表点の抽出は、実用が困難である。許容される誤差を考慮すれば、簡略化された演算によって、ほとんどの点が包まれるような立体の端点を少数与える手法が必要である。 本論文では、与えられたデータ集合に対して、完全な凸包のよい近似を与える端点の導出法が示された。この端点の集合は、与えられたデータ集合に対して一意に決定される。また、この過程で、データ集合の持つ主成分軸が経時変化に対して普遍的な性質を抽出していること、6次元の特徴空間が5次元の主成分軸で記述されることが示された。 近似された凸包により、カテゴリー解析を行うことが可能である。緑被率についてグランドトゥルースデータと比較することにより、この手法がピクセル内の緑被率について、よい推定値を与えることが示された。 以上の結果から、衛星リモートセンシングを用いることによって、現在行われている土地被覆調査と異なる特徴をもつ、定期的な土地被覆変動監視システムの可能性が示された。 |