本研究は骨肉腫におけるp53遺伝子の点突然変異およびMT、GST 、Hsp27、Hsp70、LRP、p53蛋白の6つの薬剤耐性関連蛋白の発現を免疫組織化学的に調べ、予後との関連を検討したものであり、下記の結果を得ている。 1.p53遺伝子については、15例で点突然変異の検索を行い、点突然変異は5例に見つかった。うち、1例は従来、点突然変異のホットスポットとされているコドンに見つかった。点突然変異と予後やp53蛋白の過剰発現との有意な関連は無かった。 2.64例のホルマリン固定材料を使った免疫組織化学的染色による検索では、MT、GST 、Hsp70、LRPの陽性像は、核および細胞質に見られた。Hsp27は細胞質のみ、p53蛋白は核のみに陽性像が観察された。 3.生検時におけるHsp27とp53蛋白の過剰発現は予後不良との関連が有った。両者の過剰発現間には関連が有り、Coxの比例ハザードモデルではいずれも独立した予後因子とはならなかった。蛋白の過剰発現と術前化学療法の効果との関連は無かった。 4.手術時では、Hsp27とp53蛋白に加え、GST 、Hsp27、Hsp70、LRPの過剰発現も予後不良との関連が有った。しかし、病期や術前化学療法非著効例とMT、GST 、LRPの過剰発現との関連があることより、これらの蛋白の過剰発現が予後と直接に関連が有るとは考えられなかった。 5.LRPは生検時より手術時に陽性細胞の割合が増えていた。一方、GST の陽性率は手術時には減少していた。これらは術前化学療法による変化と考えられる。 6.手術時にはp53蛋白を除く5つの蛋白、MT、GST 、Hsp27、Hsp70、LRPの過剰発現が相互に関連していることが分かった。術前化学療法により誘導されたか、過剰発現細胞が生き残った結果、過剰発現相互に関連が生じたと考えられた。 以上、本論文は骨肉腫において、生検時のHsp27とp53蛋白の発現が予後不良と関連していることを明らかにした。また、手術時には各蛋白の過剰発現が相互に関連していることが明らかとなった。本研究では、骨肉腫において、薬剤耐性関連蛋白が予後不良との関連があることが分かり、薬剤耐性関連蛋白の発現の状態の解明に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |