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No | | 112790 |
著者(漢字) | | マハクンキッチャルン,ユワディー |
著者(英字) | | |
著者(カナ) | | マハクンキッチャルン,ユワディー |
標題(和) | | マウス及びラット好酸球による抗体依存性住血吸虫幼虫殺滅作用の比較研究 |
標題(洋) | | Comparative studies on the antibody-dependent schistosomulicidal activity of mouse and rat eosinophils. |
報告番号 | | 112790 |
報告番号 | | 甲12790 |
学位授与日 | | 1997.03.28 |
学位種別 | | 課程博士 |
学位種類 | | 博士(医学) |
学位記番号 | | 博医第1160号 |
研究科 | | 医学系研究科 |
専攻 | | 病因・病理学専攻 |
論文審査委員 | | 主査: 東京大学 教授 成内,秀雄 東京大学 教授 金ヶ崎,士朗 東京大学 助教授 佐藤,典治 東京大学 助教授 大海,忍 東京大学 助教授 北村,聖
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内容要旨 | | 内容: 本研究においては、IL-5トランスジェニックマウス好酸球の日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)幼虫(schistosomula)に対する殺滅作用について検討した。好酸球のschistosomulaに対する殺滅活性は、感染血清存在下においてのみ検出され、IgGのFcレセブターに対する特異的なモノクローナル抗体(2.4G2)によって強く抑制されたことから、主としてIgGによってひきおこされる抗体依存性のものであると考えられた。また、マウス好酸球はラット好酸球に比べ、低い活性を示したので、その原因について明らかにするため、両者のschistosomulaに対する接着能、フローサイトメーターを用いたimmunoglobulins(IgA,IgE,and IgG)に対する結合能、さらにはtoxic substancesであるEPOの活性ならびに活性酸素生成能について比較検討した。 【結果】1.Schistosomulaに対する殺滅効果 IL-5トランスジェニックマウスの好酸球は、マウス感染血清存在下でschistosomulaに対する殺滅活性を示したが、その殺滅率は33%であった。一方、Sephadex G-150を静注することにより誘導したラット好酸球では、71%とマウスよりも高い値を示した(Fig.1)。 2.Schistosomulaに対する接着能 マウス及びラット好酸球のマウス感染血清存在下におけるschistosomulaに対する接着能を調べた。接着能の判定は4段階に分けて行い(少ない方からDegree1〜4)、その時間経過に伴う変動を調べた。その結果、マウスでは40時間後までDegree3が80%でDegree4は0%であった。しかし、ラットでは時間の経過に伴ってDegree4が増加し、40時間後には80%に達した(Fig.2)。 3.マウス及びラット好酸球のマウスIgE,IgA,及びIgG結合能 フローサイトメーターを用いて、マウス及びラット好酸球のマウスIgE,IgA,及びIgG結合能を調べた。その結果、Sj SWAP(S.japonicum soluble worm antigen preparation)とマウス感染血清存在下において、マウス及びラット好酸球はマウスIgE及びIgAとは結合しないがIgGに対しては両者ともに結合能を有し、その結合力はラットの方がマウスよりも強いことがわかった(Fig.3)。 4.Schistosomula殺滅に関与するsubstances ヒト好酸球のマンソン住血吸虫(S.mansoni)のschistosomulaに対する殺滅に関与している物質として、EPO(Eosinophil peroxidase),ECP(Eosinophil cationic protein)及びMBP(Major basic protein)のような顆粒タンパク質、また活性酸素が報告されている。そこで、ラット及びマウス好酸球のEPO活性及び活性酸素生成能を調べた。 (1)EPO活性 EPOの総活性の測定はTriton X-100、過酸化水素存在下でOPD(o-phenylene-diamine)の還元速度を測定することにより行った。さらにA23187刺激により放出されるEPOの活性も測定した。その結果、ラット好酸球ではA23187刺激により放出されたEPOは総活性の約1%であったが、マウスでは1%以下であった(Fig.4)。 (2)活性酸素生成能 活性酸素生成能の測定はPMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)で刺激した後、フェリシトクロム c の還元速度を測定することにより行った。その結果、ラット好酸球のフェリシトクロムc還元活性はマウスの約2倍であった(Fig.5)。 【結語】 IL-5トランスジェニックマウス好酸球のschistosomulaに対する殺滅活性がラットと比較して低い原因を調べたところ、両者のschistosomulaに対する接着能が異なっており、それらの接着にはIgGが関与していることがわかった。また、IgGに対する結合力はラットの方がマウスより高かった。さらにマウス好酸球はラットと比較してEPO活性が低く、活性酸素生成能が低いことがわかった。 Fig.1 Sj schistosomula were cultured with mouse(M-EOS)or rat eosinophils(R-EOS)in the presence of IMS.Dead schistosomula were determined by their inability to exclude Toluidine blue and to motile,after 40-48 hour incubation.Fig.2 Cell adhered schistosomula were counted after 16-20 hour incubation.Degree 1 referred to the larvae without adhering cells.Degree 2 referred to the larvae with 1-10 adhering cells.Degree 3 referred to the larvae with a number of adhering cells, but not as many as to cover the whole body,and degree 4 referred to the larvae covered their whole bodies with a large number of cells.Fig.3 The histograms showed the number of fluorescent-positive cells after stained with FITC-conjugate antibodies specific to mouse IgE, IgA and IgG(shade histogram)and that without staining (blank histogram).Panel a)showed the reaction of mouse eosinophils,whereas panel b)showed that of rat eosinophils.Fig.4 EPO activity was determined by the activity to oxidize OPD in the presence of hydrogen peroxide.The activity was measured by reading the optical density at 492 nm.Fig.5 Superoxide anion activity was determined b the reduction of fenicytochrome c.The activit was measured by optical density at 550 nm. |
審査要旨 | | 本研究においてはマウスおよびラットの好酸球による日本住血吸虫の幼虫(schistosomula)に対する殺滅作用の違いについて、両者のschistosomulaに対する接着能、フローサイトメーターを用いたimmunoglobulins(IgA,IgE,and IgG)に対する結合能、さらに虫体傷害作用を有する顆粒蛋白であるEPOの活性ならびに活性酸素生成能を比較検討し、下記の結果を得ている。 1)schistosomulaに対する殺滅効果 マウスの好酸球は、マウス感染血清存在下でschistosomulaに対する殺滅活性を示したが、その殺滅率はおよそ30%前後であった。一方、Sephadex G-150を静脈内注射することにより誘導したラット好酸球のそれでは約70%でマウスよりも高い値を示した。 2)schistosomulaに対する接着能 マウスおよびラット好酸球のマウス感染血清存在下におけるschistosomulaに対する接着能の判定は4段階(接着細胞数の少ない方からDegree1-4)に分けて行った。その結果、マウスでは40時間後までDegree3が80%でDegree4は0%であった。しかし、ラットでは時間の経過に伴ってDegree4、すなわち、虫体全体に多数の好酸球が接着しているschistosomulaの割合が増加し、40時間後には80%に達した。 3)マウスおよびラットの好酸球のIgA,IgE,及びIgG結合能 フローサイトメーターを用いて、マウスおよびラットの好酸球のマウスIgA,IgE,およびIgGに対する結合能を調べた。その結果、抗Sj SWAP(S.japonicum soluble worm antigen preparation)IgG抗体は、マウスおよびラット好酸球に結合したが、IgEおよびIgA抗体は結合しなかった。IgG抗体の結合力はラットの方がマウスよりも強いことがわかった。 4)Schistosomula殺滅に関与するsubstances ヒト好酸球のマンソン住血吸虫(S.mansoni)schistosomulaに対する殺滅に関与している物質として、EPO(Eosinophil peroxidase),ECP(Eosinophil cationic protein),およびMBP(Major basic protein)のような顆粒蛋白質や活性酸素が報告されている。そこで、マウスおよびラット好酸球のEPO活性および活性酸素生成能を調べた。 a.EPO活性 EPO総活性ならびにA23187刺激により放出されるEPOの活性を測定した。その結果、ラット好酸球ではA23187刺激により放出されるEPOの活性は総活性の約1%であったが、マウスでは1%以下であった。 b.活性酸素生成能 活性酸素生成能の測定はPMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)で刺激後、フェリシトクロムcの還元速度を測定することにより行った。その結果、ラット好酸球のフェリシトクロムc還元活性はマウスの約2倍であった。 これまで、ラットおよびマウス好酸球の日本住血吸虫幼虫に対する殺滅作用に関する情報は乏しかった。しかし、本研究において、好酸球のIgGを介した幼虫への接着が幼虫の殺滅を引き起こすこと、さらに好酸球のEPOや活性酸素のようなtoxic substancesも幼虫殺滅に関与している可能性が示唆された。また、ラットとマウスは近縁な種であるにもかかわらず、日本住血吸虫感染に対して、好酸球を介する感染防御機構に関し、両者の間で差異が認められたことは非常に興味深い。以上のような理由から、本研究は学位の授与に値するものと考えられる。 |
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