(square bracketで指示された数字はこれに続く論文の順の番号である。) 3次元の極小model理論(Extremal Ray理論)はReid、川又、Shokurov、森、Kollarらにより確立されたので、現在は高次元の場合が興味の対象となる。この線に沿って我々は4次元のExtremal Rayを研究した(定理1)。中でもflipping contractionは特に重要である、というのも、Shokurov及び川又-松田-松木によるTermination Theoremの御陰で、4次元でも極小modelの存在はflipの存在(flip予想)に帰着されている。そこで我々はこの予想を4次元の場合に研究し、部分的に肯定的な解答を得た(定理2、3)。 (A)最初に、3次元の森の分類表と対比して、4次元ではextremal ray達がどの様に振る舞うかを知る事が必要である。この観点から我々は4次元のfiber-typeのextremal contractionを分類した(文献[1])。この問題はそもそも1980年代半ばにBeltrametti-Mukai-Reidにより得られた、それらのcontractionはfiberが必ずしも等次元的でない、という観察に動機付けられている。ところがそれらのfiber構造に関しては、幾つかの散発的例を除いて組織的な分類は得られていなかった。そこで我々はその様な’jumping’fiber達の局所構造を完全に決定した。 定理1.([1]) Xをsmooth射影的4次元多様体、f:X→Yをextremal rayのcontractionで、双有理的でないものとする。もしfがfiber EであってdimE>dim X-dim Yなるものを持てば(jumping fiber)、dim E=2、dim Y=3であり、以下の事柄が成立する; (1)E上の任意の2点はfのnearby fiber達のlimitで連結される、 (2)f(E)の十分小さい解析的近傍V及びU:=f-1(V)に対し、|-KU|はbase pointを持たない、そして (3)解析的相対Picard数(U/V)は1又は2。 更に、Eの完全な分類がある。- (B)代数多様体の退化の問題を考察するとsemi-stable極小modelの概念が自然に現れてくる。3次元では角田、Shokurov、川又がsemi-stable flipの存在を証明し、これを曲面の退化の理論に応用した。そこでこれを高次元に拡張することは極めて興味深い問題である。文献[2]に於いて我々はこの問題の4次元での類似を最も単純な場合に扱った。即ち、高々terminal singularityのみを持つ4次元代数多様体Xから1次元disc△への射影的全射f:X→△であって以下の様なsemi-stabilityの条件を満たす様なものを考える; (a)一般のfiber f-1(t)(t≠0)は高々terminal singularityのみを持つ3次元多様体、 (b)central fiber f-1(0):=DiはSing Xの外でnormal crossingなreduced divisor。 目標はflipping contraction g:X→Yでこのfをfactorするものを考察することである。文献[2]に於いて我々は、以下の条件を満たす場合にその様なcontractionのexceptional lociの周りでの構造を完全に決定した: (c)各Diはnormalな3次元多様体で高々terminal factorial singularityのみを持ち、それらは全てXのCartier divisorになっている。 定理2.([2]) 以上の状況で、flipping locus Exc gはP2達のdisjoint unionから成る。Eをその一つとすると、次の内何れか一つが成立する; (I)E⊂D1∩D2、D3∩E及びD4∩Eは(異なる)直線、Dk∩E=(k5)、 (II)E⊂D1∩D2、D3∩Eはsmoothな2次曲線、Dk∩E=(k4)、又は (III)E⊂D1、D2∩Eは直線、Dk∩E=(k3). 更にgのflipが存在する。- 特に我々は上で(II)型のcontractionはsemi-stabilityの条件(b)を破壊することを見出した。この(やや悲観的な)結果は、4次元のsemi-stable極小model programがflip及びdivisorial contractionの操作に適合する様にsemi-stabilityの概念をmodifyすることなしには機能しないということを示している。これは将来的な問題であろう。 (C)そこで我々は一般の場合に戻ってきた、即ちnon-semi-stableな4次元flipである。これは、全空間がfiberedでない為に、より以上に難しい、実際この方向では、1989年の川又によるsmoothの場合の特徴付けを除き決定的な進展は全く見られなかった。ところが最近我々はこの問題で十分に楽観的な結果を得た(文献[3]); 定理3.([3])(4次元Flip予想、complete intersection singularity case) g:X→Yを4次元多様体Xであって高々isolated(rational)complete intersection singularityのみを持つものからのflipping contractionとする。|-2KY|の一般のmemberは高々rational singularityのみを持つとする。このときgのflip g+が存在する。- 更に我々はそれらのflipの詳細な幾何学的pictureを与えた。即ち我々はそれらがblow-upで連鎖された帰納的構造を持ち、M.Reidによるものの一般化であるwidthと呼ばれるinvariantにより完全に分類されるということを証明した。また、これはReidの’Pagoda’をanti-canonical divisor(及びそのproper transform)として自然に含んでいる。これらは我々の場合のflipのmechanismに完全な理解を与えている。 |