本研究はリンパ腫最大の亜型である瀰漫性大細胞型Bリンパ腫の原因遺伝子と考えられているBCL-6遺伝子の発現調節機構および生物学的機能を明らかにするため、1、正常末梢白血球、白血病検体および分化誘導可能細胞株を用いたBCL-6遺伝子発現と分化度との関連の解析;2、BCL-6過剰発現線維芽細胞を用いたBCL-6遺伝子の生物学的機能の解析;を試み下記の結果を得ている。 1、BCL-6の発現を解析した結果、正常末梢血から単離した顆粒球系、単球系、T細胞系など、B細胞系以外の血球細胞にBCL-6が発現していた。またそれら血球細胞腫瘍性カウンターパートであるM3(急性骨髄性白血病)、M5(急性単球性白血病)においてもBCL-6の発現がみられた。 2、骨髄性前単球性白血病細胞株、U-937及び前骨髄性白血病細胞株、HL-60において、単球及び顆粒球系への分化を誘導する際にBCL-6の発現が上昇した。 3、U-937における単球系への分化誘導の際のBCL-6発現調節は転写時および転写後の両方で行われていた。 4、サル線維芽細胞、CV-1にBCL-6タンパク質を過剰発現させると3日で細胞が浮遊し、細胞の形態、FACS解析、DNA fragmentationの確認からその状態がApoptosisであることが示された。 5、4のBCL-6タンパク質過剰発現によるApoptosis誘導に伴ってbcl-2遺伝子の発現は低下するが、bax遺伝子の発現は影響を受けないことが示された。 以上、本論文は正常末梢白血球、白血病検体および分化誘導可能細胞株を用いたBCL-6遺伝子発現の解析から転写調節機構の一端を明らかにした。またサル線維芽細胞、CV-1にBCL-6タンパク質を過剰発現させるとApoptosisが誘導され、bcl-2遺伝子の発現が低下することを明らかにした。本研究はこれまで未知に等しかったBCL-6の転写調節機構及び生物学的機能の解明に重要な貢献をなすと考えられ、学位授与に値するものと考えられる。 |