ITO(インジウム-錫酸化物)コートガラス/poly〔(o-iso-propylphenyl)acetylene〕(PPA-iPr)/Mg/Al構造の単層デバイスを用いて、ポリアセチレン誘導体の一種PPA-iPrの低効率の赤色エレクトロルミネセンス(EL)を観測した。PPA-iPrにヨウ素をドープすることによって、ソリトン生成が観測される。この高分子の低発光効率は、基底状態の非縮退性によるものである。ポリアセチレンの置換基がmonophenylとdiphenylの誘導体、すわなちpoly(phenylacetylene)(PPA)とpoly(diphenylacetylene)(PDPA)では、緑のELが観測された。これらの高分子の中で、poly〔1-(p-n-butylphenyl)-2-phenylacetylene〕(PDPA-nBu)は、最も高い効率で緑色の発光を示す。上方転換(up-conversion)法によって、PDPA-nBuの溶液と薄膜形態の光励起発光(PL)寿命をそれぞれ測定し、溶液において寿命は350ps、薄膜では30psが得られた。このことから、鎖間相互作用には無輻射過程が高速化させることが結論される。電子輸送材料、2-(4-biphenylyl)-5-(4-t-butylphenyl)-1,3,4-oxadiazole(PBD)をPDPA-nBu中にドープすることによって、単層デバイスを用いて、EL効率を10倍増加させることに成功した。アルキル基とフェニル基で置換された一連のポリアセチレン誘導体、poly(1-alkyl-2-phenylacetylene)(PAPA)(アルキル基は、methyl、ethyl、n-hexylの3種)において、単層デバイスを用いて、青いELが観測された。アルキル基の側鎖長が長くなるほど、発光の色は青緑から真青に変化し、発光は強くなった。アルキル基とフェニル基のどちらか一方でしか置換されていないポリアセチレンの場合、このように強い発光は見られなかった。PAPAにPBDをドープしても、EL効率は改善されなかったが、このことからPAPAホスト・マトリクス内で、PBDが会合していることが考えられる。ポリアセチレン誘導体の発光色のチューニングは、主鎖の共役長を置換基によって、例えば、置換基の主鎖に対するアクセプター効果によって変化させることにより達成される。 Table 1 Physical properties of the polyacetylene derivatives studied パラ・カルバゾリル基によって置換されたpoly(diphenylacetylene)(PDPA-Cz)の発光は、黄緑で535nmにピークがある。この発光は、PDPA-nBuの発光(520nm)と比較すると、レッドシフトしている。また、パラ・カルバゾリル側鎖からの発光はなかった。ITO/PDPA-Cz/Mg/Al構造の単層デバイスとITO/PDPA-Cz/Alq/Mg/Al構造の二層デバイスを用いて、ELの性質を研究した。ただし、Alq〔tris(8-quinolinato)aluminum〕薄膜は、発光層と同様に電子輸送層として用いている。ITO/PDPA-Cz/Alq/Mg/Alは、約2%もの高いEL効率を示した。これは、ジアミンを正孔輸送層、Alqを電子輸送層として用いた場合より高い効率である。PDPA-CzとフラーレンC60のヘテロ構造から成るバイアス極性に依存しないELデバイスの特徴を報告する。PDPA-CzとC60の面間電荷移動の観点から、逆直流バイアス下におけるデバイス制御について議論する。 プラズマ重合により、有機ELデバイス用の発光高分子を作製した。プラズマ高分子は、溶液から成形した高分子より、均質性、ピンホールフリーなどの点で優れている。芳香族高分子を生成するための最初の単量体としては、ナフタレンが最も適している事が知られている。ITO/plasma poly(naphthalene)(PPN)/Alの単層構造を用いると、PPNのEL効率は約0.01%になる。このEL効率は、化学的に重合させたPPV〔poly(paraphenylene vinylene)〕やPPP〔poly(paraphenylene)〕等のEL高分子を同様の単層構造デバイスで測定した場合と、同程度である。 Figure 1. Apparatus of plasma polymerization(a),the molecular structure of PPN(b),and the configuration of EL device(c). 新しい、ユーロピウム錯体(EuM4N2)をITO/PVK:EuM4N2:PBD/Mg/Al単層ELデバイスにおける発光分子として用いた。ただし、PVKとはpoly(N-vinylcarbazole)のことである。バイアス電圧10V以上で、612nmにおける鋭い赤い発光(半値全幅8nm)が測定された。また、バイアス電圧20V(5mA/cm2)で、輝度は3cd/m2に達した。発光体として、テルビウム錯体〔tris(acetylacetonato)(1,10-phenanthroline)Tb〕を用いたELデバイスも製作した。ITO/PVK:Tb錯体/Mg/Al単層式デバイスにおいて、半値全幅15nmの鋭い発光が490nmと546nmに観測された。EL効率は0.1%(光子/電子)であった。Tb錯体の電子励起過程も調べた。 (Eu,Gd)錯体Eu0.1Gd0.9(TTA)3(TPPO)2の発光色は、ITO/PVK:Eu0.1Gd0.9(TTA)3(TPPO)2:PBD/Mg/Al単層ELデバイスにおいて、白から赤まで、温度を77Kから室温まで変化させることによって、連続的にチューニングが可能である。この現象は、Gdキレートの三重項状態からのエレクトロフォスフォレセンスと、Gdキレート・ケージからEuキレート・ケージへの分子間のエネルギー移動効率の温度依存性によって説明される。 Figure 2. The coordinates of the emitting colors of the ITO/P VK:Eu0.1Gd0.9(TTA)3(TPPO)2:PBD/Mg/Al EL device varied from 77K to 300K are shown in the CIE x,y chromaticity diagram. |