序論 粘着型体表マーカは、解剖学的な細部の位置決めや、参照点を定めるために正確な位置決めをするためのMRI、CT用アクセサリである。紙クリップ(CTに映る)やビタミンEカプセル(MRIに映る)のような一般的な物は簡単なマーカとして時に患者の体表にテープで付けられる。確かにこれらは低価格ではあるが、同時に精度も欠く。特に丸いビタミンEカプセルは肌から容易にずれる。結果として、Zinreich[1]の研究が成功し、MRI、CT用の体表マーカが商品化された。このマーカはドーナツ型であり、その穴にナビゲーションシステムの三次元位置計測ポインタを近接する。裏面は粘着性なのでテープで貼り付ける必要はない。しかしながら、計測された位置はデジタイザの測定方法に依存するので、得られる位置座標はしばしば不正確である。 前述のマーカの欠点はそれらの点状に映る形状であり、それらは走査された画像上のみに与えられる。前述の紙クリップとドーナツ型のマーカすらポインタに過ぎない。 本研究の目的は取得された画像からより多くの情報を得る事のできるマーカの開発である。これらのマーカは放射線医学者たちの作業を簡素化にするであろう。 次の節ではZ型マーカとフレキシブルマーカのデザインを述べる。「実験と結果」は既存の機器を用いた、従来のマーカでは示すことが困難だった2つの臨床例を示す。 方法 図1に示すZ型マーカは、Zの形をしたMRIとCT両方に描出される要素からなり、その形は20mm四方の仮想的な正方形に収まる。3mmの丸いチューブの中にMRIとCTに映るゲルが入っており、このZ型マーカは四角いテープに貼り付けられている。 基線に対して垂直な距離’x’は、コーナーまでの距離’k’に等しい。なぜならZ型マーカの角度が45°であるからであり、図2はこの特長を示している。参照点としてのコーナーは、画像に映っているはずの3点から計算される。図3にMRIでの例を示す。 基線に対して垂直な距離は角’k’との距離に等しい、というのはZ型マーカの角度が45°であり、図2はこの特長を示している。参照としての角は3つの画像で撮影された点から計算される。図3はMRIでの例を示している。 次のマーカはフレキシブルな線状のものである。1つか2つのスライスでのみ見られる点状マーカ対して、線状のマーカは多数のスライスの中で見ることができる。診断では多くの断面に映るマーカについて行われるほうがより簡単である。例えば、点状に映るマーカでは、明らかに異常である部位を囲むには多くのマーカを必要とする。それよりはフレキシブルな線状のマーカを使用し、それを曲げて求められる形状にする方が簡単である。 Figure1:The Z marker,it is 3.5mm thick.Figure2:The Z marker is a measuring tool.Figure3:(left)A MRI scan of the marker at the reference corner point.(right)A MRI slice that is 12 mm away of the same corner.The position of the reference plane can be measured in the scan between the uppermost point and the center point. フレキシブルマーカ(図4)はZ型マーカと同じMRIに映るゲルが詰まったチューブである。マーキングツールとして明るさが求められるので、チューブの直径はZ型のものよりも大きいものとなっている。チューブの中に存在する銅の螺旋(ピッチ:1cm)はCTに強く映り、またマーカを変形した形状に保つ。フレキシブルマーカ自体は、手術用テープを用いて患者の体に取り付ける。 実験と結果 初めにCTに用いたZ型マーカ、次にMRIに用いたフレキシブルマーカの臨床例を2例示す。: (1)Z型マーカによる測定の特徴を、腫瘍学的放射システム[2]における患者の動きを見ることに用いた。このシステムは日本防衛医大において設置されている。このシステムは図5に示すように、CT(Toshiba TCT 500S)とリニアアクセレータ放射ユニット(Linac)から構成されている。患者は電動ベッド上でCTからLinacに移動することができる。Z型マーカは腫瘍の鉛直方向に真上の位置に取り付け、CT用の十字型のレーザによって撮像位置の中央にくるように位置合わせを行う。テーブルをCT-Linac-CTと1往復させた後、Z型マーカで2つの軸の動きを調べた。これは、(a)患者が治療中に動いたかどうかを調べるためと、(b)電動ベッドの位置精度の測定のためである。患者の動きは2つの外側の点に対するその間の点の距離で測定される。マーカはテーブルの軸方向の位置決めが要求されていたよりも良いことを示した。(上松らの文献参照) (2)2つめは中指に初期の内軟骨腫を持つ20歳の男性の例である。マーカは中指の掌側に付けられた。図6(MRI Autoscan 0.2 Tesla、IR520/24/3)には、中指を示すマーカが鮮明に示されており、二次的な転移に注意が向くようになっている。マーカの明るさは隣り合う指の骨髄より僅かに暗いだけである。 Figure4 flexible markerFigure5 Diagram of the CT Linac treatment unit.C1 and C2 are the rotation axes.考察 CTとMRIの両方に映るこれら2つのマーカは、同一のマーカを用いてある部位を調べることを可能にしている。点は鮮明であり、CTと同じ明るさで映る。コントラストウインドウを狭められると(W=250付近)、画像中でマーカは数ピクセル程度に縮小される。このように縮小された点は元の大きさのものより正確に測定できる。 Figure6:The flexible marker points out the middle finger with a bright spot. MRIでのマーカの明るさは周波数によって変化する。SE法とIR法では良い結果が得られた。両方のマーカにはアーティファクトがない。つまりそれらにはCTでは縞が無く、MRIでは遮蔽や歪みは無い。我々はWangらの埋め込み可能マーカと同じ以下のようなデザインの問題に直面した[3]。:(a)マーキングポイントの明るさおよび(b)ピクセルによる精度。我々のマーカの質はWangのマーカと同程度である。 ZinreichとWangは直径が3mmから4mmのマーカを使用した[1.3]。これらの研究とは独立に、我々は同一の位置であるための最適なマーカの大きさを見出した。その直径は、(a)小さなマーカに対してはバックグラウンドの画像ノイズ、(b)大きなマーカに対してはマーカとの接触面の制限、のような相反するファクターを考慮して求める。 Z型マーカはそれが現行の放射線システムでサブミリメーターのずれを測定できるほど正確であるということが示された。さらに、角の参照点はZ型マーカを標準ナビゲーションツールとするソフトウェアによって計算できた。 Z型マーカの下の粘着部分(580mm2)が広いため、発汗や引っ掛かりによってマーカが簡単に外れることがないようになっている。 Z型マーカ対フレキシブルマーカ Z型マーカはフレキシブルマーカの代わりに使えるのだろうか、またその逆は可能なのだろうか。手術器具の位置を決定するマーカは正確である必要がある。これらのマーカはそれ自身が正確ならなおよい。Z型マーカは変形しない硬いものに貼り付けられる。 さらに、距離はZ型のコーナーの角度が45°であることにより線形独立であり、走査上のこの距離は走査スライスからマーカの角までと同じであるので、座標変換は不要である。 フレキシブルマーカは折って様々な形状にすることができる。一見フレキシブルなことは長所に見える。もしマーカが内軟骨腫のような病状を特定するためのアクセサリなら、または身体の外観と走査画像を比べるためなら、これは確かに本当である。しかしながらフレキシブルマーカの精度は制限されているし、マーカを保持しているテープは時間とともにはがれる。動いている患者はマーカをはずしてしまうかもしれない。それは数時間以上にわたると正確ではなくなる。また走査画像とマーカの間の誤差は1mmかそれ以上に達する。それ故、フレキシブルマーカは手術計画には向いていない。 Z型マーカはその背にテープが付いているため、使い捨てである。一方フレキシブルマーカは標準的なテープで患者に粘着し、使い終わった後容易に清潔にできるので何回も再利用ができる。 ナビゲーションツールとしてのZ型マーカ 計測の精度はマーカのみに依存するわけではない。デジタイザが常に同じ所をポインティングする事は少なくともマーカと同じぐらい重要である。我々の例では、ナビゲーションデジタイザはZ型マーカのコーナーにあてるとき最も良い精度が期待できる。この点はその窪みによってデジタイザが特定の位置に案内されるので正確である。 Z型マーカは頭蓋に対して局所的な参照点を与えるので、幾つかのマーカによって座標系を設定することができる。これにより各々の走査画像でナビゲーションができる。Pilley博士(Singapore)は頭蓋に近い位置での手術は十分正確であろうと、それ故コンピュータナビゲーションツールを不要にしうると指摘している。しかしながら、この適用は仮説段階であり、更なる臨床の研究を必要としている。 結論 Z型マーカとフレキシブルマーカにより従来のマーカ以上に幅広い適用が可能になった。また、Z型マーカはMRIとCTにおいて距離の測定に有効であることが示された。そしてフレキシブルマーカは患部を囲むために用いられ、走査画像に患部を間接的に映すことができる。 参考文献[1]Simion J.Zinreich,Eva S.Zinreich:"Radiographic Multi-Modality Skin Markers,US-Patent 5469847;Nov.28,1995[2]Minoru Uematsu,Toshiharu Fukui,Akira Shioda,Hideyuki Tokumitsu,Kenji Takai,Takaharu Kojima et al.:"A Dual Computed Tomography Linear Accelerator Unit for stereotactic Radiation Therapy:A new approach without cranially fixated stereotactic frames",Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Physics;May/June1996[3]Matthew Y.Wang,Calvin R.Maurer,J.Michael Fritzpatrick,Robert J.Maciunas:"An automatic Technique for finding and localizing externally attached markers in CT and MR volume images of the head",IEEE Transactions on Biomedical Engineering,1996Vol.43,No.6,pp.627-637. |