内容要旨 | | この論文の目的は,Hamming code vertex operator algebra(ハミングコード頂点作用素代数)のtrialityについて考察することである. Hamming code VOAは宮本雅彦氏によって導入されたVertex Operator Algebra(VOA)の一つであり,それらの和がVirasoro元となるようなcentral chargeの互いに直交する8つのconformal vectorsをちょうど3組持つことが分かつている.これら3組のconformal vectorたちが生成するalgebraは,の中で,それぞれIsing modelの8つのテンソル積に同型なsubalgebraになっている.またconformal vectorに附随する自己同型写像が定義され,これはこの3つのsubalgebrasの入れ換えという形で作用している.これをのtrialityと呼ぶことにする.ところで,trialityというのは,元来D4型の単純Lie群Spin(8)の外部自己同型群のことである.すなわち,lattice D4は,そのDynkin diagramからすぐ分かるように,外側の3つのbasisを入れ換える自己同型写像を持っている.このlattice D4からFrenkel等の構成によりlattice VOAを構成すると,Hamming code VOAと同様,と同型なsubalgebraを生成する3組の互いに直交する8つのconformal vectorsを持つ.従って,の-moduleとしてのhighest weight vectorをすべて求めることにより,は,を満たす8つのIsing modelのテンソル積の直和に分解できる.この分解は、Dong-Mason-Zhuによって指摘されている. この分解を具体的に計算することにより,からへの埋め込みを構成し,次の定理を得た. Theorem1埋め込みにおいて,D4trialityに対応するの自己同型写像をに制限すると,これはのconformal vectorに附随する自己同型写像を与える. 従ってのtriality,すなわち3組のsubalgebraを入れ換えるの自己同型はD4-trialityからきていることが分かった. 同様に,lattice(A1)4から構成されるVOAは,3組の互いに直交する8つのconformal vectorsを持ち,に同型なsubalgebraを含むので,この-moduleとして全てのhighest weight vectorを求めることで,からへの埋め込みが定義できる.Frenkel-Lepowsky-Meurmanによると,Lie環A1=sl2の自己同型群には,そのsymmetric basisの1つを-1倍,他の2つのbasisを入れ換えるという3つのinvolutionがあり,これをA1-trialityと呼ぶことにする. Theorem2埋め込みにおいて,A1-trialityをに対角的に作用させる写像をに制限するとHamming codeの自己同型群から来るの自己同型写像を与える. これらの埋め込みをcode VOAの言葉で整理すると以下のようになる.すなわち,これらの埋め込み写像は,Hamming code H8にlength2のcodeword{12}=(11000000)等の元を加えたcodeから構成したcode VOA,からlattice VOA,への同型写像を与える. さらに,lattice VOA VLにおいて,lattice L上-1倍での作用からinduceされる自己同型写像∈Aut(VL)による固定空間をとおくとき,はに含まれている. 一方,Code VOA,及びはCartan subalgebraを持つので,このCartan subalgebra上-1倍になるような自己同型写像1,2,3をで導入された自己同型写像を用いて定義すると, となる.埋めこみによりと対応することから,上述の結果より次を得る. なお,Ising modelのcharacter とcode VOAとlattice VOAとの同型対応から を得る. |