内容要旨 | | 本論文では3次の非線形媒質における2波相互作用方程式系の定在波について考察する。まず3次の非線形光媒介における2波相互作用に現れる次の連立のSchrodinger方程式系を考える。 ここで=(t,x)と=(t,x)は二つの相互作用波の複素振幅をそれぞれに表し;r,qとajk(j,k=1,2)は実定数,かつr<0,q<0である。次は相互作用場に現われる次の連立のKlein-Gordon方程式系を考える。 ここで=(t,x)と=(t,x)は二つの実数値関数であり,mj,ajk(j,k=1,2)は実定数,かつm1>0,m2>0は二つの質量である。 我々は次の三つの問題に興味をもっている。10.二次元と三次元の空間における基底状態の定在波の存在。20.基底状態の定在波の安定性と不安定性。30.時間発展問題の大域解の存在性とblowupのsharpな条件。 とりあえず,ajk(j,k=1,2)は次の仮定とする。 じつは,以上の仮定は(1)と(2)の定在波が存在するためのほとんど必要条件である。では,まず(1)を考察する。さきに次のようにおく。 これから次の三次の非線形項を持つ連立楕円方程式系を考える。 そして,もし(u,v)=(u(x),v(x))は(4)を満たすなら,は(1)の定在波と呼ぶ。 空間二次元のときに,u,v∈H1(R2)に対して,次の二つの汎関数を定義する: 空間三次元のときに,u,v∈H1(R3)に対して,次の二つの汎関数を定義する: (5)と(7)の中のSは(u,v)の作用(action)と呼ぶ。それに,空間二次元と三次元の両方に対して,次の集合を定義する。 これから,次の条件付き極値問題を考える。 そしてscaling argument,Straussのcompactness lemma,関数の対称再配分などの変分法的手法を用いて,(1)の定在波の存在の定理を示す。 定理1 N=2,3とする。このとき,ある(,)∈Mが存在して,次の性質を持っている。 10.(,)は変分問題(10)の解になる。即ち 20.(,)は(4)の最小作用を持つ解になる。 30.(x),(x)は|x|の対称関数であり,無限遠で指数的に減衰する。 定理1の20によって,(,)は(4)の基底状態という。自然には(1)の基底状態の定在波という。次は(1)のCauchy問題のblowupの性質にから,(1)の基底状態の定在波の不安定性が得られる。 定理2 N=2,3とする。このとき,任意の>0に対して,ある(0,0)∈H1(RN)×H1(RN)が存在してかつ次の性質を満たす。初期値(0,0)を持つ(1)の解(,)は有限時間でblowupする。 更に,(4)の基底状態の性質と(1)の時間発展問題から生成される流れの不変集合から,(1)のCauchy問題の大域解の存在性についてのsharpな条件を得られる。 定理3空間二次元と三次元の両方に対し,H(u,v)は(7)と同様のS(u,v)とおく。もし(0,0)は を満たすなら,初期値(0,0)を持つ(1)の解(,)は大域的にt∈[0,∞)で存在する。 注意するのは空間二次元のhと空間三次元のhが違う。基底状態(,)は空間二次元と三次元の両方に対して,H(,)=hを満たす。そして定理2によって,定理3に得られる大域解の存在性についての条件はsharpな条件と言う。 次に,(2)を考察する。またN=2,3とおく。次の三次の非線形項を持つ連立楕円方程式系を考える。 もし(u,v)=(u(x),v(x))は(11)を満たすなら,((t,x),(t,x))=(u(x),v(x))は(2)の定常波になる。これから,(u,v)∈H1(RN)×H1(RN)(N=2,3)に対して,とおいて,次の二つの汎関数を定義する。 (12)のSは(u,v)の作用(action)という。それに,次の集合を定義する。 それから,またscaling argument,Straussのcompactness lemma,関数の対称再配分などの変分法的手法を用いて,(2)の定常波の存在定理を示す。 定理4 ある(,)∈M存在して,次の性質を満たす。 20.(,)は(11)の最小作用を持つ解になる。 定理 4の10によって,(,)は(11)の基底状態という。自然に((t,x),(t,x))=((x),(x))は(2)の基底状態の定常波という。次は(2)のCauchy問題のblowupな性質から,(2)の基底状態の定常波の不安定性が得られる。 定理5 N=2,3とする。このとき,任意の>0に対して,ある(0,0)∈H1(RN)×H1(RN)が存在して,かつ次の性質を満たす。 初期値 を持つ(2)の解(,)は有限時間でblowupする。 (2)に対して,次の初期値を考える。 初期値(16)に対して,次のエネルギEを定義する。 ここでSは(12)と同じ。(11)の基底状態の性質と(2)の発展問題から生成された流れの不変集合から,(2)のCauchy問題の大域解の存在性についてのSharpな条件を得られる。 定理 6(0,0)と(1,1)はE<hを満たすとする。 10.もし(0,0)がQ(0,0)<0を満たすなら,初期値(16)を持つ(2)の解(,)は有限時間でblowupする。 20.もし(0,0)がQ(0,0)>0を満たすなら,初期値(16)を持つ(2)の解(,)は大域的にt∈[0,∞)で存在する。 |