修士(工学)小田兼太郎提出の論文は、「超音速ノズル流と障害物との干渉に関する研究」と題し、8章より構成されている。 多段ロケットで段間分離後直ちに次段モータの点火をするファイアーインザホール形式や、デルタクリッパー等の垂直離着陸機などにおいて超音速ノズル流と噴流中にある障害物が干渉するが、その際ノズル流の偏りによる横力発生や、その非定常性が問題となっている。従来より、現象に対する定性的簡便な説明が与えられているが、種々のパラメータに依存する現象に対する包括的理解は得られていないのが現状である。 本論文は、2次元ノズルに着目して、実験パラメータとしてノズル淀み圧力対外部圧力比、ノズル開き角および、ノズル・障害物間距離に着目し、干渉の様相を実験的に明らかにするとともに、その際観測された現象の理解のために、数値解析の手法を用いて現象のメカニズムに対する知見を得ることを目的としている。 第1章は序論である。超音速ノズル流と噴流中にある障害物との干渉がおきる状況、発生する現象が述べられ、関連研究の概要が述べられる。それをふまえて、この研究の問題提起と研究の目的が述べられる。 第2章では、実験装置の概要とその方法について述べられ、問題とするパラメータが定義される。 第3章では、実験結果の内、可視化手段により得られた結果が述べられる。干渉の結果として、ノズル流は3種類の形態に類別される。即ち、定常的偏り(非対称)流れ、非定常な偏り(非対称)流れ、定常な対称流れである。これらの流れの形態は各パラメータに依存して現れることが明らかにされた。特に、ノズル・障害物間距離とノズル淀み圧力対外部圧力比との関係の詳細が明らかにされた。3種類の干渉形態そのものは、従来より知られた物であるが、非対称偏り流れが比較的大きなノズル・障害物間距離でも生じることが明らかにされ、従来の定性的説明では説明不能であることが述べられる。 第4章では、非定常流れについての周波数特性についての実験結果が述べられる。周波数特性は、障害物上の対称位置で測定された圧力測定に基づいている。ノズル淀み点圧力対外部圧力比が臨界値以下になると突然非定常流れになること、数百ヘルツ程度が特徴的な周波数であることが述べられる。 第5章は、数値解析の手法が述べられる。圧縮性ナビエ・ストークス式に基づき、非定常な流れが数値的に解析される。 第6章では、数値解析の結果が述べられる。まず、臨界圧力比付近でノズル内剥離点が急激にスロート側に後退することが述べられ、これに関連して適当な擾乱により、ノズル内壁上面・下面での剥離点位置がずれることにより定常的な偏り流れが生じることが明らかにされる。続いて、ノズル流と障害物が干渉することにより、偏り流が非定常性を持つことが示される。数値的に得られた非定常性の解析により、数キロヘルツ程度の高速現象と数百ヘルツ程度の低速現象の混在したものであることが示され、現象の因果関係を追跡することにより、それぞれの現象のメカニズムを考察している。 第7章では、数値的に得られた現象と実験的に得られた現象との比較検討が行われ、概ねよい一致を示すことが述べられる。特に、非定常な現象について、高速現象は実験的にはセンサーの特性上得られないが、低速現象については周波数特性上よい一致を見せていることが述べられる。 第8章では、結論であり、本論文の総括を行っている。 以上要するに、本論文は超音速ノズル流と障害物との干渉に関する実験的および解析的な研究を行い、実験的に各種パラメータに依存する干渉形態を明らかにし、さらに解析的にその様相を再現すると同時に干渉に内在するメカニズムに関する知見をもたらしており、その成果は流体工学上貢献するところが大きい。 よって、本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 |