本論文は「新エネルギー技術を適用した環境調和型都市の構築」と題し全7章から構成されており、都市需要に適している新エネルギー技術システムの設計、ライフサイクル評価を行い、技術の開発課題を明らかにすることで環境調和型都市構築のための新技術システムの提案をするものである。 第1章ではまず、本研究の背景となる地球温暖化問題、都市研究の重要性、都市部における技術利用の効果の高さの説明を行った。また本論文で取り入れている要素技術研究とシステム評価研究を連携させて行う新しい視点の研究の重要性を述べた。複雑な要素を持つ都市を多角的に評価するために必要な評価手法と本論文に適用する手法をまとめた。最後に本論文の目的、構成を図示している。 第2章では東京全体のエネルギーフローを把握し、都内各種建物用途毎に調査した。次に特定業務ビルのエネルギー消費量を室用途毎に実測し熱収支をとり、技術の利用可能性をまとめている。 第3章では都市ビル用オンサイト型電力供給源として固体電解質型燃料電池(SOFC)と、SOFC/タービンコンバインドシステム(FCCC)の詳細設計と評価を行い、高効率システムを提案した。作動条件の最適化の結果、FCCCで効率66.4%(LHV)が得られた。効率60%以上、タービン入口温度が1100℃以下、コスト、エネルギー回収年数がそれぞれ6年、1年以下であるシステムは作動圧力が0.4〜0.5MPa、作動温度は700〜800℃であり、この時電流密度0.4Acm-2で電圧降下が0.3V以下が成り立つ条件であり開発課題であった。また自動車搭載用直接メタノール酸化高分子電解質型燃料電池(DMFC)についても同様に設計評価を進めた。水素燃料電池よりもDMFCが優れており、小型化、空冷式のメリットが明らかになった。作動条件の最適化を行い、走行モードと燃費の関係を明らかにしている。 第4章では建物のエネルギー需要変動によって応用新技術が異なることから、臨海副都心地域を選び、太陽電池、燃料電池を導入した都市を設計し評価した。最適システムの導入により、臨海都市ではエネルギー消費で3割削減が可能との結果となっている。 第5章では都市を構成する材料の製造プロセスでの新技術利用によるCO2排出削減に着目した。製造時CO2排出量が多い鉄を取り上げ建設部門の鉄使用量を大幅に削減する方法としてスーパーメタル技術導入を評価した。強磁場付加圧延製造技術は投入コスト、エネルギーが少なく、CO2排出量削減に有望な技術であることを明らかにしている。 第6章に前章までの各新技術を東京都の各部門(民生、交通、産業)に適用した結果を示した。年間CO2排出量は26%削減可能となった。また個々の技術システムと都市システムを関連づけた統合化システム研究の重要性を述べている。 最後に第7章で本論文で明らかにされた項目をまとめ結言を述べている。 以上、本論文は技術を都市のニーズ、効果の高さ、実現可能性の観点から選び、詳細なシステム設計評価により改良開発課題を明確化し、新たな技術・システム利用法の創造に結びつけ、その総合的効果を定量化する手法を提案したものであり、化学システム工学の発展に寄与するところが大きい。 よって,本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 |