本研究はTNFファミリーに属するCD70分子の機能解析を目的として、マウスCD70(mCD70)の遺伝子クローニング及びラット抗mCD70モノクローナル抗体(FR70)の作製と、マウスCD70/CD27相互作用のT細胞に対するco-stimulation作用に関して一連の解析を試みたもので、下記の結果を得ている。 1.mCD70cDNAは195アミノ酸より構成されるII型膜貫通型糖蛋白をコードしており、mCD70はhCD70とアミノ酸レベルで56.4%のホモロジーを示した。 2.本研究において作製したラット抗mCD70モノクローナル抗体(FR70)はin vitro、in vivoにおけるマウスCD70/CD27相互作用を効率的に阻害した。 3.mCD70の発現はin vitroにおいて抗CD3抗体+抗CD28抗体により刺激したT細胞、及び抗CD40抗体により刺激したB細胞に認められた。 4.マウスCD70/CD27によるco-stimulation作用はT細胞増殖を増強し、その反応はCD4+T細胞に比較しCD8+T細胞でより強く認められた。また、T細胞増殖に関するマウスCD70/CD27相互作用はCD28を介した経路と相補的に作用した。 5.マウスCD70/CD27相互作用はT細胞、特にCD8+T細胞からのIFN-産生を強く誘導した。 6.mCD70cDNAトランスフェクションにより腫瘍拒絶が誘導された。その機序として、in vitroで認められたT細胞、特にCD8+T細胞に対するマウスCD70/CD27相互作用が中心的役割を果たしていることが強く示唆された。 以上、本論文では未知であったmCD70分子の遺伝子クローニングとその抗体の作製をはじめて行ない、マウスCD70/CD27によるco-stimulation作用がT細胞、特にCD8+T細胞の活性化を強く誘導することを明らかにした。本研究は多様な機能を有するCD70/CD27相互作用の解明にきわめて重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |