本研究では、ベトナムにおける医薬品回転資金(RDF)実施地域と非実施地域の両方において、コミューンレベルでの医薬品の供給状況とその管理状態を調査し、そこに如何なる違いがあるのかを探ることを目的とした。その結果、下記の結果を得た。 収集したデータ解析の結果により、RDF非実施地域に比べて実施地域は、医薬品の供給とその管理にかなり重点がおかれていることが明らかになった。また、医薬品管理に関する研修は大いに意義のあることが証明された。保健医療スタッフの数は、RDF実施地域においてほぼ2倍であった。加えて、在庫されている医薬品の種類もRDF実施地域では2倍近くであり、その医薬品の管理は、郡とコミューン間で定期的に行われるRDF会議への報告などを通して監督されていた。以上のことが、住民の公的保健医療施設の利用と、よりよい保健医療サービスの提供に貢献していることが示唆された。 RDFの実施は、3つの自立した側面、すなわち経済、制度、そして技術の発展を支援しており、RDF実施地域における罹患率と死亡率の低下に大きく寄与していた。 RDF実施地域では、基本的に医薬品供給は公的機関によって行われていた。このため、必須医薬品は安価で、入手しやすいものになっていた。しかし、販売利益により医薬品を購入し、供給するというシステムはさらなる改善を必要とすることが明らかになった。医薬品消費記録はRDF実施地域の方が、非実施地域に比べてよく保存されているが、これらの記録は次の医薬品購入の際に用いられていなかった。それに加えて、公的保健医療施設への医薬品供給では、その安全性、持続性、低価格を保証する系路が正式に確立されていないなどの問題点も、本研究の結果から明らかになった。RDFは医薬品の入手を容易にし、かつ医薬品管理のモニタリングも向上させていた。この機構が医薬品供給を行うために有効に機能するためには、住民参加を基盤とする基金によって運営される必要性がある。 以上、本論文の結果から、RDF実施地域では非実施地域に比較して、医薬品の供給と管理システムについて重点が置かれていたことが統計学的に明らかになった。また、本研究では医薬品の管理がRDF実施地域では非実施地域よりも良好であることも明らかになった。医薬品の供給を改善するためには、今後有効な情報収集に基づき、薬剤の供給管理を改善する必要性が示唆された。本研究は、これまで報告例がなかったベトナムRDFの医薬品供給と管理システムへの効果の解明について重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |