第一部Nearly spherically symmetric expanding fronts in a bistable reaction-diffusion equation(双安定反応拡散方程式における球対称に近い広がる界面) RN上の(単独)双安定反応拡散方程式
の外へ広がる界面について考察する。ただし、BU(RN)は、RN上の有界一様連続関数の全体でsupremum normをもったBanach空間を表すものとする。以後、非線形関数fに次の四つの仮定を置く:
R上で、反応拡散方程式(1)は、
を満たす一次元進行波解u(x,t)=(x-ct)をもつ。仮定によって進行波解の速度cは正である。この一次元進行波解は線形安定である。さらに、x=±∞へ向かう二つの進行波解の組が、次のような強い安定性をもつことが知られている(Fife-McLeod,1977):
定理(Fife-McLeod)、かつ、ある>-∞に対して(|x|<∞)であり、ある>に対して(|x|<L)であるとする。もしL>0が、とに依存して、十分大きければ、u(x,t)は外へ向かう二つの進行波解の組
にt→∞で、xに関して一様にtに関して指数的に、収束する。
一方、多次元の全空間で外へ広がる界面については、初期関数u0(x)について
がcompact supportをもてば、原点から出る任意の半直線上において、解u(x,t)のprofileは一次元進行波解のprofileに時刻無限大(t→∞)で収束することが知られている(Jones,1983):
定理(Jones)解u(x,t)が、もし
(a)はcompact supportをもつ、
(b)、
(c)t→∞で任意のcompact集合上一様にu(x,t)→1
を満たすならば、任意の∈SN-1に対して、ある関数:[0,∞)→Rが存在して、
また、外へ広がる界面の波面の位置について、広がる波面の位置を有限に収めるようにリスケールすると、波面の位置は球に時刻無限大(t→∞)で収束することが知られている(Aronson-Weinberger,1978):
定理(Aronson-Weinberger)上の(b)と(c)を解u(x,t)が満たすならば、任意のに対して、
以上の結果は、空間高次元においても外へ広がる界面の波面のprofileは、一次元進行波解のprofileに、速度は一次元進行波解の速度に漸近することを示唆するが、これに対し本論文では多次元の全空間において、外へ広がる球対称界面の波面の位置について、さらに、外へ広がる球対称界面に対する、界面の波面の位置をズラす摂動が示す挙動について研究した。その結果、外へ広がる球対称界面の波面の位置は、球の半径が十分大きいとき、アイコナール方程式
(ここで、Vは波面の法速度、kは波面の平均曲率である。)によって(時刻無限大まで)記述されること、さらに、球対称界面の波面の位置をズラす任意の摂動は、外へ広がる十分大きい半径の球対称界面に関して中立で、ズレの形が(時刻無限大まで)ほとんど保たれることを示すことができた。
記号
l:球面上の連続関数l∈C(SN-1;R+)に対して、閉集合をlによって表す。(ここで、R+=(0,∞)である。)
d(x,l):点x∈RNと関数l∈C(SN-1;R+)に対して、xからlへの符号付距離をd(x,l)によって表す。ただし、x∈lのときとする。
定理(柳下)u0∈BU(RN)に対してu(x,t;u0)で反応拡散方程式
の解を、p0∈R+に対してp(t;p0)で常微分方程式
の解を表すことにする。そのとき、任意のl∈C(SN-1)と>0に対して、>0とL>0が存在して、
第二部A standing wave solution with the small width near a closed geodesic in reaction-diffusion systems(反応拡散系における閉測地線の近くに小さい幅をもつ定常波解) 曲面上で、スケーリングパラメータ>0をもつ(連立)反応拡散系
を取り扱った。ここで、u∈RN、DはN次の正定値対角行列、FはRN上のベクトル場である。まず、R上、反応拡散系(1)1が定常波解u(,t)=0()
をもつ、さらに、任意のc>0に対してシリンダーR×(R/cZ)上、(1)1のプラナー定常波解u(,,t)=0()が線形安定である、と仮定しよう。このとき、形式的な計算によれば、>0が小さいとき、もし曲面M上の反応拡散系の解(x,t)が閉曲線tをもちいて
と近似されるならば、閉曲線tは平均曲率流(c=0のアイコナール方程式)
に従って運動する。ここで、dis(x,t)は点x∈Mからtへの符号付距離、Vはtの法速度、kはtの測地的曲率、dは(D,F,0)だけに依存する非負の定数である。したがって、M上の閉測地線に対して、>0が十分小さければ、の定常解(x)で、
と近似されるものが存在する、と期待される。
本論文では、このような、閉測地線の近くに波面をもつ反応拡散系の定常波解(x)
の存在を証明した。正確な仮定と主張は、長くなるため、本文を参照されたい(特に、仮定のうち重要なものは、(E5),(E6),(G4)である。)。ここでは、本論文では、任意の>0に対してシリンダー上、反応拡散系(1)1のプラナー定常波解u(,,t)=0()における線形化作用素の0固有値が孤立単純であること(本文仮定(E5))を仮定するが、必ずしもプラナー定常波解の安定性を要求しないことに注意したい。