本研究は、慢性肝疾患の肝細胞癌のスクリーニングにおいて重要な役割を担う体外超音波検査上検出されるエコー結節の病理学的分類を試みたものであり、以下の点を結論とした。 1.慢性肝疾患のある患者では、小高エコー結節は血管腫ではなく多くがHCCである。 2.高エコーHCCは組織学的にfatty change・clcar cell changeを呈し、免疫組織学的にcyclin D1・Ki-67の発現が低く、増殖能が低いことが示唆された。 以上に対し、審査の結果、下記の点で内容の修正が行われた。 1.高エコー結節=HCCではなく、高エコー結節=malignant potentialを有する結節ととらえるべきであるという内容に修正した。それに基づき、1-A)タイトルを’Small hyperechoic nodules in chronic liver diseases include hepatocellular carcinomas with low cyclin D1 and Ki-67 cxpression’に変更した。1-B)高エコー結節の増殖様式をretrospectiveに検討し、"Result"に加え、高エコー結節のmalignant potentialを"Discussion"に明記した。 2.肝結節の病理学的分類に関する用語を、International Working Partyの提案したもの(Hepatology 1995;22:983-993)に準拠した。 3.細径針生検標本に基づく病理診断が、生検部位と生検時期という2つの問題点のため、困難または時に不可能であることを明記し、それが今回のstudyにおいてエコー結節中のHCCの割合が高い事の説明の一つとした。 4.Cyclin D1・Ki-67・p53を一括してproliferation markerとして扱うことは妥当ではないと判断した。よって、"proliferation marker"という言葉は使用しないこととし、タイトルや文中にてcyclin D1・Ki-67・p53を個々に言及するように努めた。 5.免疫組織学の陽性の診断基準を、腫瘍細胞核全体のクロモゲンが陽性になった場合に、その核は陽性とした。 6.超音波診断上の’高エコー’・’低エコー’の定義を明記した。 7.Figure1(case report)は記載しないこととし、かわりに明らかなHCC・high-・low-grade dysplastic noduleの組織像とした。主な免疫組織像の写真(cyclin D1・Ki-67)とそのnegative controlのみ呈示することとした。 上記の修正を施行したうえで、本研究はこれまで詳細にはなされていない慢性肝疾患におけるエコー結節の分類を施行し、特に高エコーHCCの特徴を明記した点で重要と考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |