ウラン資源は、現在世界中における原子力需要の増加に伴い、継続的に供給可能な原子力資源として大変重要である。経済成長に対するウラン資源の重要性は、結果的に、資源予測の必要性を意味している。そこで、最も合理的にウラン資源の予測を行うために、地球統計学とフラクタルの見地から、さらにウラン資源予測データに含まれる不十分さの修正、パレートモデルとウラン資源予測、品位-累積鉱量の関係とウラン資源予測、ウラン鉱床の空間分布とウラン資源予測の各々のテーマについて検討した。 地球統計学の定義やフラクタルブラウン運動や数学的仮定に基礎を置く手法では各々の研究手法において乱数を用いることによる限界がある。従って、ある現象の空間分布の特性を把握するための地球統計学とフラクタル幾何学f.B.m.はあくまでも推定のための手法である。あるランダム関数のためのバリオグラム(r)とフラクタル次元Dの関係は、以下の式で示される。 本研究では、48カ国に分布する582のウラン鉱床のデータベースを用いた。 このデータベースには、鉱床名、位置、品位、鉱量、鉱床の種類、状態、その他のデータが含まれている。各々のウラン鉱床の品位(%)は、>1.0,1.0-0.3,0.3-0.1,0.1-0.03,<0.03の5段階で記述された。鉱量(kt)もまた>50,50-20,20-5,5-1.5,1.5-0.5の5段階に区分されている。また、このデータベースの中で実際に使用したデータは、品位と鉱量について一つもしくは両方のデータが欠如している40の鉱床を除いた542の鉱床に関するデータのみである。 ここで用いたデータは、鉱量の最も高いレンジと、品位に関しては最も高いレンジと最も低いレンジにおいて上述のように臨界値が欠如しており、資源予測に用いられるデータとしては不十分である。また、鉱量が0.5tU以下の鉱床も記載されていない。そこで、そのような不十分さを修正するための手法が提案された。それは、次のような手順で行われた。(1)品位と鉱量の正規分布テスト。(2)品位と鉱量の間の相関分析。(3)ウラン鉱床の総数と最低レンジにおける記載されていない鉱床の数の推定と鉱量の上限と品位の上限と下限の推定。(4)各ウラン鉱床の品位と鉱量の仮想推定。ウラン鉱床の総数の推定値は678で、最低レンジの記載されていない鉱床の数は136であった。品位の下限・上限の推定値は、0.026%Uと7.800%Uで、鉱量の上限は1616ktUであった。品位、金属量および積算量はそれぞれ0.026%U〜4.088%U、0.5ktU〜930ktU、0.8ktU3O8〜21213ktU3O8の範囲に入る。20のデータ系列のうちのいずれか2組の間の分散(F検定)と平均(T検定)の比較からは、品位または鉱量の分散と平均には重要な差は認められなかった。 対数モデルとパレートモデルという2種の分布モデルが、品位と鉱量の頻度分布を表現できるかどうかを調べる。全世界での全タイプおよび砂岩、鉱脈、火山、不整合、石英礫岩、表層、貫入、交代、黒色頁岩の各タイプ、北アメリカの全タイプと砂岩タイプ、西ヨーロッパの全タイプと鉱脈タイプの鉱量に対しては、対数分布が当てはまる。世界の全タイプと砂岩タイプ、北アメリカと西ヨーロッパの全鉱床の品位に対しても、対数分布が当てはまる。不整合、表層、貫入型のそれぞれの品位と、石炭型ウラン鉱床における鉱量は、パレート分布を示す。西ヨーロッパの全タイプの品位、全世界の石英礫礫岩型と表層型、そして北アメリカの砂岩タイプ、西ヨーロッパの鉱脈タイプのウラン鉱床は、対数分布とパレート分布の両方を満足している。90の最大級の砂岩型や75の鉱脈型ウラン鉱床は、パレート分布を示すため、ウラン資源予測に応用した。砂岩型と鉱脈型のウラン鉱床の鉱量と鉱床数の推定値と実測値の相関係数は0.981-0.997と高いので、パレートモデルを砂岩型と鉱脈型鉱床の資源予測に利用できる。 フラクタルにおけるp100/q100則を90の最大級の砂岩型鉱床と、75の鉱脈型鉱床へ適用すると、qs=p1-1/1.273(砂岩型鉱床)とqv=p1-1/1.103(鉱脈型鉱床)が得られる。総金属量の理論上の百分率は、統計量qを用いた実測値に非常に近い。この事実は、フラクタルqsやqvがウラン資源予測における集団の比率と、総合値の比率の間の関係を簡単に記述できることを暗示している。 ウラン鉱石の品位と累積鉱量の統計学的取り扱いは、ウラン資源予測に有効な手法である。ウラン鉱床の鉱石品位と累積鉱量の関係は、1つもしくは2つのグループの組合せで表現できる。ほとんどのウラン鉱床、すなわち世界の全タイプ、砂岩型鉱脈型鉱床、北アメリカの全タイプ、西ヨーロッパの全タイプと鉱脈型では品位と累積鉱量の関係かつ、2つの指数関数の組合せで表現される。また、火山型、不整合型のウラン鉱床および北アメリカの砂岩型鉱床の鉱石品位と累積鉱量の関係は一つの指数関数によって示される。 臨界品位の値は鉱床のタイプの違いによって変る。一般に、それは、低品位部分では0.04%U-0.08%U、高品位部分では0.48%U-0.74%Uである。ほとんどのタイプのウラン鉱床について実際の累積鉱量と推定された鉱量の間の相関係数は0.96-0.99と高く、品位-累積鉱量の関係式から高精度でウラン資源の予測が可能である。 広範囲に及ぶ2つの地域、北アメリカと西ヨーロッパにおけるウラン鉱床の空間的分布の解明では地図投影法を用いた。鉱床のフラクタルモデルを求めるためにボックスカウンティング法を適用するとき、この方法を用いると、広い地域を正確な四角のグリッドで埋めることが出来るAEA(アルバースの等積投影)、TM(横メルカトル法)、UTMを用いた。今回検討したフラクタル次元を求めるための手法は、ボックスカウンティング(BC)とクラスター密度(CD)の2つに大別される。前者は、AEA/BC、UTM/BC、TM/BCの3つの手法を含み、後者はS(球面)/CD、AEA/CD、TM/CDの3つの手法を含む。検討の結果、フラクタル性が現れる最大の範囲は、BCが810-1140km、CDが2000-3500kmであった。BCとCDのフラクタル次元はそれぞれ0.56-0.77と0.78-0.99であった。一方、相関係数は、BCで0.979-0.993、CDで0.996-0.998であった。CDとBCの間および、CD内の3つの手法の間の結果で比較すると、CD法はこれらの地域ではBC法よりも有効である事がわかった。また、S/CDは、フラクタル次元の決定に最も有効な手法であると言えるが、AEA/CD、TM/CD法もまた有効性が認められる。 クラスター密度の値を鉱物資源予測に用いた。北アメリカの全タイプと砂岩型鉱床、西ヨーロッパの全タイプと鉱脈型の実際のウラン鉱床の数と予測値の間の相関係数は0.990-0.99であった。この事実は、確率密度モデルに基礎を置いたこれらの予測結果が信頼できるものであり、鉱石鉱床の密度(:d)と半径(:r)の間の関係を近似することにより、ウラン資源の予測が可能であることを示している。 |