学位論文要旨



No 114875
著者(漢字) 井原,基
著者(英字)
著者(カナ) イハラ,モトイ
標題(和) 化学消費財産業のアジア事業展開 : 現地適応と企業内技術移転
標題(洋)
報告番号 114875
報告番号 甲14875
学位授与日 2000.03.15
学位種別 課程博士
学位種類 博士(経済学)
学位記番号 博経第135号
研究科 経済学研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 工藤,章
 東京大学 教授 大東,英佑
 東京大学 教授 末廣,昭
 東京大学 教授 仁田,道夫
 東京大学 教授 中村,圭介
内容要旨

 本稿では、化学消費財産業における-企業(花王)の事例研究を行い、そのアジア事業展開の活動内容及び成果を、海外事業全体、及び現地子会社(タイ、台湾、フィリピン、マレーシア)のそれぞれにおいて明らかにした。この作業を通じて、企業一般のアジア戦略の課題、つまり企業がグローバル化と現地化の同時進行という問題に対応しつつ、様々な競争優位をどのように移転し、現地の条件への適応を果たすべきなのかを考察した。具体的には、以下の次の三つの観点から考察を加えた。

 第一に、海外事業全体を概観し、そのグローバル戦略とアジア戦略の形成の過程を検討した(第1章)。企業は国際的な事業活動を効率的に編成するグローバル化を進めるだけでなく、それと同時に、個々の国の需要特性にも対応するために、現地化にも対応しなければならないが、そのような対応をどのように行うべきなのか。この問題を考える糸口として、まず、地域統括会社、域内国際分業、アジア・ブランドの展開等、アジア地域全体を統合するような地域統括戦略に注目しながら、アジア事業展開の過程を追った。

 そあ結果、海外事業の初期、生産技術上の優位を移転を中心として、グローバル化を優先させてきたこと、しかし、直接投資の増大と共に現地への対応が認識されるようになり、遅れて現地化を指向するようになったこと、グローバル化と現地化の双方に対応できるようなアジアでの地域統括戦略が摸索されていることを明らかにした。

 各現地子会社では、このような海外事業全体の戦略に規定されながら、生産・流通のそれぞれの事業活動において競争優位の移転と変容が生じる。生産活動と流通活動は密接に関わっているので、各々の活動における競争優位の移転と変容の過程、そしてその関連を明らかにした。

 すなわち、第二に、タイ、台湾の事例を取り上げ、消費財市場における製品・マーケティングの現地適応の過程を検討した(第2・3章)。

 企業が国際的な製品開発・マーケティング活動を行う場合、各国の条件に合わせた現地適応を図るか、あるいはグローバルな効率化のために製品開発やマーケテイングを標準化するかが問題となる。これは、本社の国内での競争優位となっている技術をそのまま移転するのか、それとも現地に需要特性に合わせて変更するのかという問題と関わっている。本稿では、2つの現地子会社の事例において、どのような対応がなされたのか、そしてその要因は何であったのかを明らかにした。

 すなわち、直販制度を中心とする物流網の構築の過程、個々の製品に関する広告宣伝、価格政策や市場調査等のマーケティングがどのように行われたのか。また製品開発の核心となるのは配合技術であるが、日本で開発された製品がどのような国内での技術上の優位性を持ち、それがどのような意図で現地に移転され、どのような競争優位を発揮したのか、さらに、単に日本の製品を移転するだけでなく、どのように現地の市場特性が把握され、どのように配合技術を中心とする製品仕様の変更が行われたのかを明らかにした。

 その結果明らかしえた点を要約すると、花王は、タイと台湾の両方で生産技術や物流網については現地化に成功しているが、これらは日本国内で花王の競争力の源泉となった分野である。他方、製品開発や広告宣伝については、タイの場合、現地化への要請に対応しようとしつつもまだ課題が多く残されている。タイ、台湾いずれにおいても、日本の製品に余り手を加えず現地販売することでは到底成功することはできず、現地適応の学習のプロセスに長い時間がかかった。しかし、化学消費財産業全体の動向は、配合技術の面での現地適応を一層進め、さらにグローバル化の要請と両立し得るようなアジア・ブランドの要請と両立させようとしている。

 第三に、生産技術の移転を検討した(第4・5章におけるフィリピンとマレーシアの現地子会社の事例)。現地の生産拠点において柔軟な生産体制が取られ、適切な製品や中間原料が迅速に供給されることは、上記のマーケティングや製品開発の現地化を成り立たせる前提条件となる。

 生産技術の移転を分析する視角としては次の点が考えられる。

 生産技術の移転をどこまで行うのかは、移転する側の意図によって多く規定される。企業が現地の従業員に対して対処能力を期待しないのであれば、多少のトラブルを織り込んだ生産管理を行う。その欠点は徹底的に設備の自動化を図ることによってある程度補うことが出来る。他方、トラブルを徹底的に減らし、変化や異常へ対応する柔軟な生産体制を維持するのが目的であれば、一定の労力と時間を割いて教育訓練を施す。企業がどのような意図を持っていたのかを明らかにするために、生産現場を経営の中に位置づけて考察した。つまり、企業内国際分業上の位置づけ、現地での競争・取引環境、産業特性の3点を、生産現場と関連づけて分析した。

 さらに、生産管理移転に関して現場作業者・保全スタッフ・技術者の分業関係(日本人と現地スタッフの分業関係を含む)が重要となる。日本の工場と東南アジアの現地子会社の工場の共通点と相違点を明らかにし、共通化していく過程と、その過程で差異が生じた原因を明らかにした。生産技術が実現される分業体制の中で、現場作業者は設計段階で織り込めない「予測・予知」技術のカバー役としての役割を持つことが可能である。現場作業者や保全スタッフには、プロセス異常・設備等の異常、生産体制の変動への的確な対処能力が求められることになる。各現地子会社で、そのような対処能力がどのように移転されているのかを明らかにした。

 実際の移転のプロセスは、(1)教育訓練の内容、(2)現地従業員の採用と定着の度合い、(3)企業組織内での昇進・昇給といったインセインティブが技術の定着を進める上でより重要になっているのか、それとも長期的な雇用関係が有効なのかといった点である。生産技術と結びつけられて形成される組織を存続させるための各種の方策、教育訓練や採用・昇進管理や動機づけには、教育制度や労働市場等の「国の要素」が影響するが、そのような立地条件も考慮する必要がある。

 以上の枠組みに基づいて、以下の点を明らかにした。

 フィリピンの工場は現場作業者や保全要員の育成と定着を進めた。その間の現場の作業管理は、単純作業だけでなく、異常の予知・発見とそれへの対処をオペレータに求めるものであった。フィリピン人の現場作業者は、単にオペレートするだけではなく、日本人とほぼ同水準の内容によって変化や異常への対応が出来るようになっている。さらにフィリピン人の保全スタッフが育っており、専門的な検査機器などの保全技術を日本の親工場から導入している。故障部品の一部設計についてもフィリピン人技術者が行っている。変化や異常への対処は、これらの現場作業者、保全スタッフ、技術者の分業に基づいて行われており、現場作業者が大きな役割を果たすと共に、保全スタッフも専門知識の観点から現場作業者の働きを補完している。花王はフィリピンの工場に対して、意図的に日本と同じ水準の生産技術、特に生産管理能力を移転しようとし、かなりの程度それに成功している。

 このように生産技術がフィリピン人の間にある程度定着した結果、操業上のトラブルは立ち上げ当初から半減し、同業他社と比較すれば安定した水準が保たれている。

 他方、マレーシアでは装置の面ではフィリピンや日本よりも圧倒的に高水準であり、その生産性は日本の工場における同一の高級アルコール製造プラントよりも高いとされている。だが、オペレータの異常の予知・対応能力・あるいは予防保全能力の面では問題があった。生産立ち上げの当初から、日本人の技術者が中心的な役割を果たしているが、今でも日本人派遣者の数は目立ったほどには減らず、マレーシア人に対する生産技術の定着という面での問題が残されている。教育訓練の方法としては、フィリピンでは現地スタッフによるOJTが重要な役割を果たし、マニュアルや日本での研修がそれを補完する役割を果たしていた。マレーシアでは教育訓練の方法、特に現地スタッフによるOJTは、現地の離職の多さや操業経験の浅さという理由から、根づいていない。

 これら3つの観点からの検討を統合すると、次のようなことがいえよう。今日、消費財の海外事業では、単に日本国内の競争優位を移転するだけでなく、現地の状況に合わせて修正する能力が必要とされる。それは、かつて日本国内で行われていた諸機能が次々に海外に移転されているという現状によるものである。特に製品開発の中の配合技術は、技術とマーケティングの接点であり、需要条件に合わせて成分の組み合わせを変えていく技術の役割が大きい。生産管理についても同様に、現地の雇用慣行などの状況に合わせて修正する能力が必要とされるが、製品開発やマーケティングに比べれば小さな修正であり、基本的に教育訓練上の工夫などを通じて、競争優位をどのように移転するのかが問題となる、

 これらマーケティング・生産の両面での現地適応能力には、地域統括的な戦略と組織が大きな影響力を持つ。

審査要旨

 本論文は、海外直接投資をおこなう日本企業が、技術移転に際して現地の製品市場および労働市場への現地適応をどのように進めてきたかという問題にたいして、化学消費財産業にかんする事例研究によって、独自の貢献を果たそうとしたものである。このような課題を果たすに際して、本論文は、化学消費財産業における主導企業のひとつである花王の事例をとりあげ、とくにその対アジア事業展開の過程および成果に即して、かつ現地子会社への企業内技術移転につき検討を加えている。

 まず、論文の内容を簡単に紹介する。

 「序章 課題と視角」では、まず上述のような課題が設定された後、現地の製品市場および労働市場への現地適応に資する技術移転のあり方を問うという問題意識から、多国籍企業および企業内技術移転にかんする先行研究が検討される。そこでは、とくにプロダクト・サイクル理論の限界が指摘されるとともに、課題に接近するために、従来の研究において比較的等閑視されてきた化学消費財産業をとりあげ、その主導企業のひとつである花王の事例に即して分析することの意義が明らかにされる。

 「第1章 アジア戦略の形成過程 1957-97年」は、花王の海外事業展開、とくに対アジア事業の歴史を跡づけている。1960年代以降、花王はアジア地域にたいして、それまでの製品輸出と並んで、製品市場の獲得ないし原料の安定供給を目的とする直接投資をおこなった。さらに1980年代後半、同社はグローバル化構想を打ち出すとともに地域統括戦略を試行し始めた。このような展開を跡づけた後、本章は、本社の戦略(グローバル・地域・現地戦略)、現地子会社の活動、本社と現地子会社さらには合弁パートナーとの関係に留意しつつ、対欧米との比較において対アジア事業展開の特徴を明らかにする。花王はグローバル化と現地化の双方に対応しようと試みつつ、企業内国際分業体制の構築、アジア・ブランドの展開などの地域統括戦略をも模索したが、結局はグローバルな効率性を重視し、そのために、地域統括本社体制の未構築に見られるように地域統括戦略は中途半端なものに終わったとされる。

 これに続く本論は、花王の対アジア事業展開におけるふたつの主要な事業分野、すなわちトイレタリー製品事業および油脂化学事業を扱うことに対応して、ふたつの部分に分かれている。

 前半の「第2章 タイ-製品開発・マーケティングの現地適応」および「第3章 台湾-特殊な市場環境における現地適応」は、洗剤・シャンプーなどのいわゆるトイレタリー製品事業をとりあげ、製品開発およびマーケティングにおげる現地適応の過程と成果をテーマとする。化学消費財の一部であるトイレタリー製品は花王の主力製品であるが、各国・各地域の市場特性が多様であり、したがって同産業は、グローバル型ではなくマルチ・ドメスティック型に属する。消費者のニーズに対応するためには消費者に近接した生産立地が重要であり、現地適応が競争力の鍵を握る。井原氏は、とくにマルチ・ドメスティック型産業への着目という点では、バートレット=ゴシャールの所説を評価しつつ、組織文化よりも製品開発やマーケティングにおける現地適応に着目しなければらなないとする。

 タイと台湾の2市場は、花王が早い時期から現地生産に踏み切った市場であり、しかも比較的良好な実績を挙げている。そこで氏はタイと台湾の子会社をとりあげ、それぞれにおける現地適応の過程と成果を、両者を比較しつつ明らかにしようとする。

 生産技術の移転、あるいはまた直販制度を中心とする流通組織の構築という点では、花王はタイと台湾のいずれにおいても(とくに台湾において)比較的良好な成果を挙げた。しかし同社は、製品開発およびマーケティングにおいては困難に直面した。当初同社は日本で成功した製品仕様により現地生産に踏み出したが、売上は伸び悩んだ。そこで、それぞれの市場の特性に適合的な製品の開発に乗り出すことになったが、長期にわたる試行錯誤が続き、抜本的な配合技術の変更にまでは進んでおらず、いまなお課題が多いのが現状である。またマーケティングの一環をなす広告宣伝については、台湾では成功したものの、タイでは積極的な投資の必要性の認識が不足したたため、十分な成果が挙がらなかった。総じて、トイレタリー事業分野における花王の現地適応は、部分的には成功したものの、なお途上にあると結論づけられている。

 本論の後半部分、「第4章 フィリピン-生産技術の移転」および「第5章 マレーシア-生産技術定着の困難」は、原料となる植物性油脂の加工、いわゆる油脂化学事業をとりあげ、そこでの生産技術の移転をテーマとする。花王はもともと原料油脂事業への遡及の志向が強く、油脂化学事業を手がけることになった。その主たる進出先はフィリピンとマレーシアであったので、ここではこの2カ国における同事業をとりあげ、そこでの生産技術の移転の過程と成果を明らかにしようとする。その際、氏は現場作業者・保全要員・技術者間の分業関係と彼らの生産管理能力にとくに着目する。

 両国は対照的な展開を示した。まずフィリピンでは、花王本社および現地子会社は、フィリピン人の現場作業者のOJTや日本での研修などによる教育訓練に力を入れた。工場における彼らの定着率は高かった。現場作業者は作業能力のみならず、変化・異常の判断・予知能力とそれへの対処能力を培った。この点では、生産管理能力の現地化が進捗したわけである。花王はまたフィリピン人保全要員・技術者の育成と定着にも努力し、実際にも成果を挙げた。これとは対照的に、マレーシアでは従業員の定着率が低く、また変化・異常への対応あるいは保全という面でのマレーシア人現場作業者の生産管理能力は育っていない。マレーシアでは最新鋭の設備が投入され、自動化が推進されたが、技術的トラブルが多発し、したがって日本人技術者の投入が不可欠となっている。また、教育訓練手段としてのOJTは根付いていない。氏はさらに、この対照の原因を、設備水準に見られる本社の進出方針の差異、教育訓練の成果における差異、さらに工場の立地条件の差異に求めている。

 「終章」では、アジア地域統括戦略と現地戦略の関連(第1章)、製品開発・マーケティングの現地適応(第2,3章)、生産管理能力の移転(第4,5章)という主題に即して、全体の総括がおこなわれている。そのうえで氏は、花王のアジア戦略全体について今一度総括し、グローバル戦略と地域戦略の整合性が問題であると指摘し、地域統括戦略の重要性示唆している。これは同時に、花王の事例を踏まえた一般化への試みともなっている。

 以上のような諸章から成る本論文は、花王のアジア4つの国・地域での事業展開を、本社・国内主力工場・現地子会社での精力的な聞き取り調査などにより丹念に追った労作である。高く評価しうる点を挙げれば次のとおりである。

 まず第1に、先行研究を幅広く渉猟したうえで、大量観察にたいする事例研究の意義を明確化しようと試み、そのうえで企業内技術移転にかんする独自の分析枠組みを工夫している点である。

 第2に評価しうる点は、輸出による海外進出の時代に遡り、また現地生産に踏み切るに際しての意思決定を、現地パートナーとの提携、現地政府の政策への対応を含めて記述するために、地域戦略について可能な限り企業内資料、業界紙、現地英字紙・雑誌などを渉猟しつつデータを整理し、そのうえで地域戦略との関連において技術移転を捉えようとしている点である。

 第3に評価しうる点は、製品開発・マーケティング、生産技術の移転における現地適応の過程および成果について、花王の対アジア事業の主要拠点である4つの国・地域すべてをとりあげ、現地に赴いて精力的に聞き取り調査を重ねることにより、多くの興味深い事実を発見している点である。さらに、4つの国・地域の相互比較による分析を通じて、各国・地域の製品市場での現地適応や生産管理能力の移転における特質を描き出している点である。その際、現地子会社の本社や日本の工場との関係および相互比較も視野に入れられており、花王の海外事業展開全体、とくに対アジア展開のなかで位置づけようと努めている点も評価しうる。

 しかしながら、本論文にはいくつかの問題点があることも指摘しなければならない。

 まず第1に、分析枠組みの問題がある。本論ではトイレタリー製品と油脂化学というふたつの異なった事業分野の分析を並列させているが、それぞれにたいする分析枠組みの差異が明確にされていない。また全体を通した分析視角にち、「グローバル化と現地化の整合性」という際の「現地化」の具体的含意が不明確であり、とりわけ現地適応と現地化をほぼ同義のものとして用いる点など、改善すべき点が残されている。トイレタリー製品事業に限っていえば、そのグローバル性とマルチ・ドメスティック性とが必ずしも適切に関連づけられていない。

 第2に、P&Gやユニリバーなどの欧米企業との比較では花王は後発企業であり、かつグローバル化においてなお低位にあるが、この点は、序章・第1章においては詳述されているものの、本論においては十分に展開されていない。またライオンなどの日本の競争企業との比較も、随所で試みられているものの、なお不十分さを残している。

 上記のふたつの問題点は、研究史の整理がやや不十分であることと関連していると思われる。マルチ・ドメスティック型産業にかんするバートレット=ゴシャールの組織文化を重視する所説、企業内技術移転にかんする先行研究、あるいは小池和男の知的熟練論などにたいして、自らの批判と主張が十分に展開されていない。

 また第3に、本論の実証部分については、失敗や蹉跌を含む技術移転の過程のダイナミクス、あるいはまた本社・現地子会社を含む組織総体の構造について、より立ち入った分析が欲しかったとの印象が残る。この点はとくに、製品開発における配合技術に関わる現地適応、直接販売制度、生産技術の移転について指摘しうる。このような問題点は、聞き取り調査が日本人を対象とするものに偏っていること、またテーマの広がりに比して本社レベルでの聞き取り調査がなお不十分であることとも関連していよう。

 本論文について、このようにいくつかの問題点を指摘しなければならないものの、それらは花王の対アジア事業展開の総体を認識しようという意欲的な研究課題にともなって生じたという面もあり、先の高い評価を覆す程のものではない。また、これらの問題点は、氏の今後の研鑽を通じて克服されることが期待しうる。この点は、口述試験においても確認できた。以上の評価に基づき、審査委員は全員一致をもって、本論文が博士(経済学)の学位を授与するに値するものと判断した。

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