RudinとKeislerによって導入された、のStone-Cechコンパクト化上の順序を、Rudin-Keisler順序と呼びRKで表わす。Rudin-Keisler順序は反対称性を満たさないので、に於ける同値関係F0〜RKF1を、F0RKF1かつF1RKF0で定義する。同値関係〜RKでの同値類を、型と呼ぶ。(,RK)に於いての元は最小でなので、の各元は互いに同値であり、よって(,RK)には最小型が存在する。我々はこの論文に於いて、*=\上のRudin-Keisler順序に於ける極小型について調べる。我々は、*を上のnonprincipal ultrafilterの集合と看做す。(*,RK)に於ける極小型の個数がいくつであるかは、ZFCの中では決定できない事が知られている。Martinの公理(または、連続体仮説)を仮定すると、(*,RK)に於ける極小型の個数は2である。第2節で、更に弱い仮定の下で(*,RK)が個の極小型を持つ事を示す(命題2.11)。一方、(*,RK)が極小型を持たないようなZFCのモデルが、いくつか知られている。実際に第5節及び第6節で、そのようなモデルを構成する(定理5.4、定理6.11)。この論文に於ける我々の目標は、「(*,RK)に於ける極小型の個数は0より多くより少ない」が、ZFCと無矛盾である事の証明である。 第2節では、上のP-point、Q-point及びRamsey ultrafilterのついて調べる。また基数不変量と、それらのultrafilterとの関係を調べ(補題2.7、補題2.9)、Martinの公理より弱い公理「cov(M)=」を仮定すると、(*,RK)に於ける極小型の個数はである事を示す(命題2.11)。 proper forcingのcountable support iterationに関して、「proper」「-bounding」「P-pointを保つ」等といった性質が保存される事が、既に知られている。第3節では、<,:<>が各<で "はP-pointを保ち、かつP-point上のRudin-Keisler順序を保つ" を満たすproper forcingの-step countable support iterationであれば、はP-pointを保ち、かつP-point上のRudin-Keisler順序を保つ事を証明する(補題3.8)。 第4節では、ultrafilterの有限族についてのゲームを定義した上で必勝法の観点からP-pointの特徴づけを与え(定理4.4)、Perfect set forcing SとRational perfect set forcing PTについて、以下の事を示す。 ・Perfect set forcing SとRational perfect set forcing PTは共に、proper forcingである(命題4.2)。 ・Perfect set forcing Sは-boundingである(命題4.2)。 ・Perfect set forcing SはP-pointを保つ(命題4.6)。 ・Perfect set forcing SはP-point上のRudin-Keisler順序を保つ(命題4.7)。 ・Rational perfect set forcing PTは-boundingでない(命題4.8)。 ・Rational perfect set forcing PTはP-pointを保つ(命題4.11)。 第5節では、連続体仮説を仮定すると、各<2で を満たすproper forcingの2-step countable support iteration<,:<2>によるgeneric拡大モデルに於いては、すべてのP-pointはN1個の元から生成される事を示す(補題5.3)。この補題により、次の二つの無矛盾性に関する結果が得られる。 定理5.4.連続体仮説を仮定する。<,:<2>を、Rational perfect set forcingの2-step countable support iterationとする。この時、によるgeneric拡大モデルに於いて、次が成り立つ。 ・=N2=、かつ ・すべてのP-pointはN1個の元から生成される。 よって、このgeneric拡大モデルに於いて、(*,RK)は極小型を持たない。更に、<を仮定すると、このgeneric拡大モデルに於けるP-pointの個数はより少ない。 定理5.5.連続体仮説、及び=<=を仮定する。〈,:<2〉を、Perfect set forcingの2-step countable support iterationとする。この時、によるgeneric拡大モデルに於いて、次が成り立つ。 ・=N2かっ=<=、かつ ・(*,RK)に於ける極小型の個数はである。 S.Shelahは著書「Proper and Improper Forcing」の中で、「(*,RK)は唯一つの極小型をもつ」がZFCと無矛盾である事を証明した。第6節では、その方法を用いて、次の定理を証明する。 定理6.11.一般連続体仮説、及び({2:cf()=1})を仮定する。 {Hi:i∈I}を、(*,RK)に於ける極小型の代表元からなる族とすると、この時、proper forcingの2-step countable support iterationで、によるgeneric拡大モデルに於いて、次が成り立つものが存在する。 ・各Hiは、互いに同値でない(*2,RK)の極小元を生成し、かつ ・すべてのP-point Fについて、RKFとなるi∈Iが存在する。 よって、このgeneric拡大モデルに於ける(*,RK)の極小型の個数は、Iの個数と一致する。 定理5.5及び定理6.11により、基数がcf()1となる特異基数でない限り、「<かつ、(*,RK)に於ける極小型の個数はである」 が、ZFCと無矛盾である事が示せた。 |