異種接合材・複合材の工業的応用の広がりにより、界面力学の基本理論の確立と明確化が急務となっており、異種接合材に対する強度評価は非常に重要な立場となってきている.そして.その強度や機能を評価する際に、界面上及びその近傍の応力を精度良く解析することか要求されている. 本研究の背景としては.今世紀1950年代.界面力学が発展して以来.Williams,M.L.は1952年に二次元弾性論に基づき,接会端部の応力特異性がr-Aの指数関数を持つことを固有値展開法により導いた.そして.1967年に.Dundurs.J.は弾性複素理論を用い,二次元の界面応力場を特性づける組み合わせた弾性定数,a.を導入した.それをDundursのパラメータと称し.界面力学を論じる上での重要なパラメータとしている.その後,Bogy.D.B.は1968年より.二次元の界面応力場を検討する際に.Dundursのパラメータを用いた表現が初めて実施されていた,・・・それから30年間あまり.弾性領域における界面応力場に関する研究に当たってはDundursのパラメータが良く用いられ.特に.軸対称接合材の応力場を検討する際に.それが二次元と似ているため.Dundursのパラメータの準用例が多く見掛けられている.また.一般の三次元接合材においても、その理論解がないため.Dundursのパラメータを借用することがしばしば見られている.ところで.軸対称や三次元の応力場は二次元の独立パラメータであるDundursのパラメータで一義的に表現できるであろうか?これらの問題に対し.未だに究明されておらず.接合材の応力場が特定できる統一的弾性パラメータは確定されていない.本研究の第I部では,軸対称接合材の応力場における弾性定数依存性を検討し,そこで導いた独立パラメータを二次元または三次元のそれらと関係付け.結局.接合材に関する統一パラメータを導出する.また.そこで.各次元接合材に物体力が存在する場合も検討し.その弾性定数依存性を明らかにする. 一方.応力解析に関しては.理論解析の他に.コンピュータを駆使し.数値解析を行う方法もめざましく発展・普及されている.1950年代アメリカの航空技術者により開発された有限要素法(Finite Element Method)に継ぎ.1970年代になって,境界要素法(Boundary Element Method)も開発され.それに関する出版物や汎用プログラムが数多く発行されていた.後者が前者の急速な発展の影であまり注目されない時期もあったが.後者が対象とする物体の領域内を離散化(要素分割)せず,物体の境界のみを離散化する境界型の数値解法であるため,特にポテンシャル問題や弾性問題等の解析に簡便であることが認められている.それで,弾性問題を解析するに当たり.二次元の場合には.今まで.均質無限板中に単位集中力が働く場合の応力解であるKelvinの解(1846年)と均質半無限板におけるそれのMelanの解(1932年).または.無限異種接合板におけるそれのHetenyiの解(1962.63年)が良く用いられており.イギリスのBEM専門ソフト開発会社であるBeasy社をはじめとし,すべての汎用プログラムに取り組まれている.しかし.接合材の応力解析と言えば.実際の解析モデルは自由表面と接合界面を有し,しかも.接合端部近傍の応力は最も注目されるところであり、接合端部を交わる全ての自由表面と接合界面の総合効果で与えられている.それ故.このようなモデルを解析する際に.Kelvinの解を用いれば.全ての境界に要素分割を行わねばならないし.端部近傍にも細かくしねばならないのである.また.Melanの解を用いれば.接合界面に上述の処理を行い.Hetenyiの解を用いれば,自由表面に上述の処理を行わねばならないのである.それらにより.もし.自由表面と接合界面との両方の境界条件を満たす基本解があれば.接合材に対する数値解析には有用であろうと考えている.したがって.本研究の第II部では,このような基本解.すなわち.半無限二次元異種接合材基本解を導いている.また,基本解は物体力の特殊な応力解であるため,第I部で導いた統一パラメータを用いている. 本研究は序論,第1部の「界面応力の弾性定数依存性」.第II部の「半無限二次元異種接合材基本解の導出」.総括から構成している.各部の内容は次のように内訳している. まず.序論においては.研究の背景.研究の目的.論文の構成との三章で構成し.付録には.本研究に関連する基本事項.すなわち,A1には,弾性論における基本関係式と各種応力関数.A2には.界面応力の状態と特異性を紹介している. そして.第I部の「界面応力の弾性定数依存性」においては.全六章から成っている.その内訳は次の通りである. 第1章 緒論 接合材の弾性定数依存性問題を取り上げ,その方法論を述べる. 第2章 二次元接合問題における応力場規定独立弾性パラメータ Airyの応力関数を用い,物体力が存在しないと存在する場合における二次元の弾性定数依存性を検討し.それらの独立パラメータを導く. 第3章 軸対称問題における応力場規定独立弾性パラメータ Michellの応力関数を利用し.二次元における解析方法に習い.軸対称接合問題(接合平面・接合曲面)における応力の弾性定数依存性を検討し,その独立パラメータを導く. 第4章 接合問題における統一的応力場規定独立弾性パラメータの提案 一般の三次元接合問題に関しては.次元解析によって,三つのパラメータが必要であることが分かる.本研究では.それらの性質を統括し.すべての次元(二次元・軸対称・三次元)に共通する統一パラメータ提案する. 第5章 FEMを用いた統一パラメータによる二次元と軸対称応力場の相違の検討 上述の結果に基づき.有限要素法を用い,軸対称と二次元の応力場に関する弾性定数依存性を確認すると共に.その相違関係も検討する. 第6章 結論第I部の研究結果をまとめ,その実用性を明らかにする. 第II部の「半無限二次元異種接合材基本解の導出」においては.全六章から成っている.その内訳は次の通りである. 第1章 緒論 半無限異種接合板基本解の導出に当たる背景や必要性を述べる. 第2章 基本解導出法の検討(仮想境界設定法の提案) 本基本解の導出に関し.「仮想境界設定法」を提案する. 第3章 Mellin変換面における基本解 Airyの応力関数を用いて.Mellin変換面における応力基本解を導く. 第4章 Mellin逆変換による基本解の導出 Mellinの逆積分変換式を利用し,実座標系における応力基本解を導く.その際.本基本解に関する応力特異性の表現についても詳しく検討し.さらに.解の性質を調べ.数値解析に容易な形式を取り上げる. 第5章 得られた解の数値評価に基づく検討 得られた本基本解に数値解析を行い.その可解析性を確かめる. 第6章 結論 第II部の研究結果をまとめ.その実用性を明らかにする. 最後に、総括においては.第1章に本研究の総括と主な結論,第2章に今後の課題と展望をまとめている. とりわけ,本研究では主に以下の結論を見い出している. (1)接合材の応力場に関する統一的弾性パラメータを導いた. (2)軸対称と二次元の応力場の相違関係を見い出し,その判別条件を提案した. (3)異なる特異性の性質を持つ応力問題をまとめて解析する「仮想境界設定法」を提案した. (4)半無限二次元異種接合材基本解を導出した. したがって.統一パラメータを利用すれば.接合材の界面応力場が特定でき.より統括的に確実に強度評価を行うことができる.また.半無限二次元異種接合材基本解を用いれば.境界要素法の接合材に対する数値解析には大いに貢献を与えることである.さらに、本基本解の解析に用いた「仮想境界設定法」を利用すれば,き裂を有する基本解などにも適用でき.より一般性のある方法論に展開することが期待される. なお,本研究で導いた統一パラメータは一般の静的弾性接合問題にだけではなく.熱弾性接合問題や残留応力接合問題.さらに.き裂を含む小規模降伏場合での接合問題にも適用できる. |