現在の光ファイバ通信技術は過去約十年間目覚しい進歩を遂げ、通信コストの節減、通信容量の劇的な増加、及び通信ネットワーク・サービスの質と構造の革新をもたらした。基本的に通信というのは、送信機、通信媒体、及び受信機という三要素で構成されており、光通信の場合はそれぞれ半導体レーザ、光ファイバ、及びフォートディテクタで代表される。一方、長距離に渡る情報容量への高まる要求は微弱な信号を単純に増幅するのみならず様様な多重化技術を必要とするこの二なり、光増幅器が生れるようになった。 半導体光増幅器(SOA)は現在もっとも注目を浴びている光素子で、光スイッチ、波長変換器、及び光再生器等の光機能性デバイスを実現する為に重要な役割を担っている。アレー集積が可能であって、更に広帯域に渡って高性能を発揮するという点でこのような分野で魅力を感じさせているのである。 転送容量が10Gbit/sを超える新しい光ネットワークのデザインにおいて、特に時分割多重(TDM)技術や波長分割多重(WDM)技術が用いられている場合、全光型信号処理はその重要性を増している。この中で全光波長変換は、周波数の再利用や信号のルーティングなどを用いるWDMネットワークの最適化にもっとも強力な技術である。SOAは、強い非線形性、超小型,集積化可能、及び媒質が有する利得等から波長変換において有効な候補である。 高性能・広帯域SOAを実現するためには、成長技術の他に三つの技術が必要である:(1)広帯域に渡って端面の反射率を極限まで下げる為の多層反射防止膜の有効なデザインツール、(2)高い再現性を持つ精巧な蒸着技術,及び(3)半導体レーザ媒質の利得スペクトル全域に渡って反射率を正確に評価できる高信頼性の測定技術。特に、実際の製作の観点から見ると、(3)の測定技術はコーティングやSOAの正確な評価のみならず、蒸着プロセスのリファインメントやデザインへのフィードバック等に欠かせない重要な要素である。本研究は、このようなSOAの高性能化を図るために、理論設計から製作、及び評価までをシステムチックに行ったものである。 光フィルタの製作は、まず目的とする性能を満たすコーティングのデザインから始まる。この工程は、既知のコーティング物質の屈折率から各層の最適膜厚を求めるアルゴリズムを用いている。SOA製作の最初段階として光素子の為の広帯域多層反射防止膜の新設計アルゴリズムを提案した。コーティングの構造は二種類のみの物質の交互堆積でかくそうの膜厚は非1/4波長の厚さである。1.5m帯のGaInAs/AlGaInAs MQW半導体レーザ端面への四層反射防止膜(ARコーティング)のデザインで、数値計算を用いてパラメータ空間にマッピングしたところ反射率1x10-5以下の帯域幅が100nmを超えるコーティングのデザインが得られた。 成膜においては、電子ビーム(EB)蒸着機を導入し、TiO2とSiO2を用いて蒸着を行った。しかし、TiO2/SiO2多層膜システムでこの二種類の物質の屈折率が膜厚や層によって異なることが判明した。従って、最適化された理論デザインは実際の製作においてはイニシャルデザインとして、成膜のリファインメントを行った。コーティングの再現性はもう一つの大事たファクタであって、我々はデザインの面ではなく成膜の面から再現性を保つ方法を研究した。こういったリファインメントの技術と再現性を保つメンテーナンスの相互結合で、二層ARコーティングにより1x10-6代の最小反射率と約50nmの帯域幅(反射率1x10-4以下の)が再現性良く得られ、1.3と1.5m帯の高性能MQW SOAを製作できるようになった。1.5m帯のSOAに対しては更に四層ARコーティングを行い、100nmを超える帯域幅が得られた。 ARコーティングされた半導体レーザの端面反射率を測定する方法として一般的に用いられるのはHakki-Paoli方法である。しかし、この方法には様様な問題点が抱えられており、より信頼性の高い測定を目指して半導体レーザの自然放出光を最小二乗方により解析する新評価方法を開発した。用いられたモデル式は屈折率分散に対する一次近似と共に自然放出と利得スペクトルに対する放物線近似を表す八つのパラメータを含んでいる。コーティング後の測定データに対してゾーンフィッティングを行うことにより階段式の反射率スペクトルが得られる。フィッティング解析とその結果得られた反射率スペクトルの信頼性は様様た物理パラメータの値の妥当性、注入電流依存性、及びエクストラポレーションの再現性等から確かめられた。耐ノイズ性を持ち、広いスペクトル範囲に渡って応用できること等から、この新方法は既存の自然放出光解析方法に大きな改善をもたらしたといえる。 以上の研究の結果、二層と四層ARコーティングを用いて、1.3と1.5m帯の高性能MQW SOAの製作に成功した。1.3m帯のInGaAsP MQW SOAは120mAの注入電流で26dB以上の最大利得と62nm以上の3-dBバンド幅を示した。これは斜め構造や窓構造を介しない垂直入射でARコーティングのみで製作したSOAの中ではベストデータである。1.5m帯のデバイスも同様に高い性能を示した。 |