日本の林業は木材価格の低迷、人件費高騰などによりおよび林業経営が圧迫されているが、木材生産に高性能林業機械が導入され、生産性の向上により木材生産コストの低減が図られ、労働環境も改善している。しかし、大型の高性能林業機械を導入する一方で、いろいろな小型の機械も使用している状況にある。世界林業センサスによれば全林家数251万戸のうち保有山林面積が5ha以下の林家が全体の9割、会社数4万4千社のうち8割が同様の保有規模であり、背景には森林保有の小規模、零細な構造がある。本論文の目的はこのような小規模集材作業システムにおいて、集材作業システムの現状分析と小規模集材作業に適する林業機械として、林内作業車を中心にその作業システムを分析し、さらに適正路網を考察しながら、効率的な小規模集材作業システムを提示することにある。 本論文の構成は7章からなり、各章の内容は次の通りである。 第1章では序論として日本林業の諸情勢、林業機械化の現状、作業システムに関する既往の研究、本論文の目的および構成であり、本論文の位置づけを行った。 第2章では小規模集材作業システムの現状分析として、愛媛県における集材作業システムの現状と集材作業に影響を与える要因を分析するとともに、現段階で合理的と考えられる集材作業システムを考察した。1981年から1990年までの10年間の優良材現地実証事業として間伐を行った現場を対象とした。搬出作業システムは、11種類であった。伐採はチェン-ソーにより行われ、集材は、101個所の作業システムの中、林内作業車および人力がそれぞれ36.6、35.6%で、合わせて72.2%であった。1981年から1983年までは架線と人力集材が中心であったが、1984年以後、架線は林内作業車に替わられ、また人力集材も1986年から減少し、1987年以後林内作業車が主力となった。今後も林内作業車中心の集材作業システムが続くと思われる。集材作業の生産性に及ぼす因子を明らかにするために数量化1類を適用して分析した結果、機械、地域、搬出距離、間伐率、傾斜度、胸高直径、面積の因子の順で影響を与えることが明らかとなった。重相関係数は0.8953で、1%の危険率で有意であった。 第3章では林内作業車の分類および特性、林内作業車の集材方法、林内作業車の諸元および性能などの現状分析を行い、生産性に関する考察を行った。現在普及している林内作業車は一般的に足回りの構造により、クローラタイプ(鋼製履帯型、ゴム製履帯型)、ホイールタイプ(4輪駆動車、6輪駆動車)に分けられるが、各タイプによって集材方法および性能に違いがみられた。作業面積も平均0.53haと小規模で、生産費は平均9,566円/m3、生産性も20m3/日以下であったが、高性能林業機械による作業システムと生産費の面で差がないという興味深い結果が得られた。 第4章では小型林内作業車による集材作業システムの分析を行った。伐採、造材はチェーンソー、木寄せ、積込みは人力および林内作業車のウィンチ、集材は小型林内作業車による作業システムについて現地調査を行い、作業功程および作業システムの分析を行った。平均林地傾斜が33度と急傾斜地の作業で、平均集材距離195mの作業を行い、3.02m3/人・日と間伐作業にもかかわらず比較的な高い作業功程をあげていた。 第5章では小型林内作業車と小型グラップルの組合せによる集材作業システムの分析を行った。伐採、造材はチェーンソー、木寄せ、積込みは小型グラップル、集材は小型林内作業車という作業システムにおいて、現地調査による事例分析の結果、平均集材距離が490mと比較的長く、平均林地傾斜が20度の傾斜地の作業において、作業功程は2.24m3/人・日であった。 第6章で、Matthewsの林道間隔理論を適用して、小型林内作業車に適する適正路網を考察した。林内作業車作業の場合、森林利用学的分類における中地形の作業は林道間隔167-289m、林道密度にして34.6-60m/ha、急地形の作業では林道間隔172-293m、林道密度にして33.8-58.5m/haが適正であるという結果が得られた。 第7章では総括として、各章で得られた結果をまとめ本論文の総括を行った。 以上、本論文は小規模集材作業システムについて論じ、小規模作業における有効性を提示し、今後の林業に寄与しうることを明らかにした。 |