竹材利用は世界的に関心の高まる環境問題に対する解答の1つと考えられる。西暦2000年を迎え、利用可能な広葉樹の世界的な不足がさらに進行すると見られており、その代替材として竹材が注目されている。竹材は成長が極めて早いという特徴をもち、木材資源の有効利用に対しても効果は高いと思われる。 最初の研究では、構造用パネル製造を目的として、モウソウチク(Phyllostachys pubescens Mazel)から作成したゼファーストランドの適用性を検討する実験が行われた。ゼファーは網目構造をした繊維状の薄いシートである。試験体作成プロセスは、所定のゼファーが得られるまで、数個のローラーに少しずつ材料を通し圧延を繰り返すことで行われる。1.8×40×40cmの寸法で32個の試験体ボード(BZBと呼ぶ)が作成され、この際、4種類のゼファーストランドの直径(9.5、4.7、2.8および1.5mm)、および4つの目標密度(0.6、0.7、0.8と0.9のg/cm3)が設定された。実験結果は、BZBは一般的な木質材料と比較してより優れた強度特性を持つことを示している。ゼファーストランドの大きさと目標密度はMOE、MOR、IBおよび吸水厚さ膨潤性に対して大きな影響を与えることを示したが、線膨張率への影響は小さい結果が得られた。BZBは乾湿繰り返し試験において、より小さな厚さ膨張率を示し、優れた寸法安定性を発揮している。同じく、BZBの構造特性の研究のため、超音波伝播技術の適用の可能性についても検討した。内部結合力と伝播速度との関係についての研究では、両者に高い相関があることを示している。この研究の結果は、超音波技術がBZBのような木質複合材料の構造特性の予測あるいは評価への応用が可能であることを示唆した。 2番目の実験では、蒸気爆砕繊維から接着剤を用いないボードを作成した。このとき4段階の密度を設定し、それらの特性について調査、評価した。ボードの機械的性質(MOR、MOE、IB)は密度が大きくなるのに伴って直線的に増加した。最大耐力は密度が0.8g/cm3以上のときにおいて得られた。厚さ膨潤率(TS)については、密度の増加によってもほとんど変化を示していない。また吸水率(WA)は密度が大きくなるに従って減少する傾向を示した。ボードの主たる結合力はリグニンによると考えられ、リグニンが軟化され、部分的に改良されることで繊維表面に天然の接着剤を作り出すためである。このことは、竹材を使用し接着剤を添加することなくボード製造できる可能性があることを示している。 3番目の実験では、竹積層材料(LBL)の製造を目的として、竹ゼファーにホットプレスによる圧締加熱処理を施した場合の有効性について検討した。(4層の竹ゼファーマットで構成された)6つの竹積層材料を作成した。材の寸法は2×42×42cmで、レゾルシノール樹脂接着剤を使用した。実験には、3種類の層構造(タイプI〜III)の組み合わせを用いた。実験結果、タイプIIの梁型試験体が他のタイプと比較してより優れた曲げ特性を示した。接着面が垂直になるように設定して(V-beam)上方から曲げ加力を行う方が、水平にした(H-beam)よりLBLとしての耐力が大きくなることが明らかになった。LBLの竹材マット配向角の関係についても検討した。竹材マットの配向角が大きくなるに従って、MOE、MOR、IBが減少し、またTE、LE、WAについてもよく似た傾向が見られた。また、ブロックせん断強度および木ねじ引き抜き耐力は配向角が45度のとき最大に達している。 4番目の実験では、フランジとして竹積層材を使用し、ウェブとしてパーティクルボード、OSB、製材を使用した複合梁の曲げ特性について検討した。フランジとして用いるための竹材マットは、ホットプレス処理した竹材ゼファーから作成した。ウェブは梁として組み合わせる前に2.5×2.5×42cmに調整された。結果は、製材、OSBおよびパーティクルボードのMOEとMORは実質的に竹材マットによる補強によって、直線的に増加した。パーティクルボードの場合、MOEとMORはそれぞれ2.9倍、2.3倍に増加した。さらに、竹材によって補強した実大寸法の複合梁を開発した(4.5×10.5×300cm)。4点曲げ試験と竹材マットのフランジによる効果についての試験を行った。この実験で得られた結果によると、超音波法と周波数解析法によって測定したMOEが曲げ荷重と変位から測定したMOEとほぼ同じであることが分かった。竹材マットによるスギ材の補強によって、複合梁の強度と剛性は飛躍的に増加することが明らかになり実用化の可能性が示唆された。 以上、本研究は新しい竹複合材料の加工方法と構造用材を開発することを試みたものであって、本研究が学術上、応用上貢献するところが少なくない。よって審査委員一同は、本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。 |