本研究は褐色細胞種から見つけられた血管拡張性のペプチドであるアドレノジュリン(AM)とアドレノメジュリンと同じ前駆体であるpro-AMから作られるペプチドであるPAMP(proadrenomedullin N-terminal 20 peptide)AM,PAMPの分布と一部機能を検討するために、胃における分布、腎臓における分布と病態生理学的役割について調べたものであり、下記の結果を得ている。 1.胃粘膜において、AM,PAMPとも、神経内分泌細胞に存在した。PAMP陽性細胞の方が、AM陽性細胞より、高頻度にみられた。また、免疫電顕では、AM、PAMPとも、分泌顆粒上に局在していた。AM mRNAの局在は、AM、PAMP陽性の神経内分泌細胞と、内分泌細胞以外の上皮細胞にも認められた。AM、PAMPは、ラットの胃において、酸分泌に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。 2.正常ラット腎では、AM mRNAは、腎髄質外層の尿細管上皮と、皮質の尿細管上皮に局在していた。発現細胞数は、皮質にくらべ髄質において多かった。腎虚血12時間後で、AM mRNAの発現の有意な上昇が認められた。発現細胞数は、皮質で上昇がみられた。腎臓においては、AM mRNAは、腎臓の尿細管上皮に認められ、腎虚血により発現の上昇が、認めれられた。AMは、腎虚血下でのautocrine/paracrine因子として、生体防御的な作用を示す可能性が示唆された。 以上、本論文はラット胃、腎臓において、immunohistochemistry、Northern blottingから、アドレノメジュリン、PAMPの分布と一部機能について明らかにした。本研究は、アドレノメジュリン、PAMPの組織分布、機能解析に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |