本研究は、喫煙対策としてのたばこ税増税政策の有効性と妥当性について評価、検討をする目的で、たばこ税に関するアンケート調査を実施し、増税の医療経済学的効果の推計と政策の憲法学的分析を試みたものであり、下記の結果を得ている。 1.たばこ税増税政策の医療経済学的効果について、いくつかの前提条件のもと、簡便に評価するためのモデルを以下のように想定した。 2.平成10年のたばこ税増税による経済効果は、アンケート調査の結果を参考にして上記モデルから下限2140億円、上限3212億円と推計された。 3.アンケート調査の結果から需要曲線は、価格の上昇につれ価格弾力性が逓減していく、弾力性の低い曲線が推定された。 4.今後の増税による経済効果については、例えば40円の値上げで禁煙を試みる者の10%が禁煙を達成できた場合、効果の上限は5697億円と推計され、他のほとんどのシナリオにおいても経済効果の増加が多く期待できた。しかも、たばこによる社会的損失が大きい場合には、増税とともにさまざまな禁煙サポートをすることにより、禁煙成功率を高めたほうが政府にとっては結局効果が大きくなるという結論が得られた。 5.アンケート調査の結果は、増税という規制手段と国民福祉の向上という目的との間の実質的な合理的関連性の存在を示唆し、喫煙の自由、営業の自由などとの関係においてたばこ税増税政策は、憲法に反しない妥当な政策であるという結論に至った。また、たばこ税の目的税化も憲法の理念に反しないと考えられた。 6.今後の増税に関しては、1箱40円あるいは60円の増税が最も望ましいという結論に至った。また同時に、福祉目的税化を行い、さらに禁煙サポートの充実などにより禁煙成功率を高めることが有効な政策であると考えられた。 以上、本論文はたばこ税増税政策の医療経済学的効果を簡便に評価するための推計モデルを想定し、アンケート調査の結果を分析することによって、当政策の有効性および妥当性を確認した。本研究は、効果的なたばこ税増税政策の実現に向けて重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |