本研究は、職場におけるストレス・サポート・仕事以外の要因・男性性・女性性とメンタルヘルスとの関連を男女で比較し、また、働く女性の職場におけるストレス・サポート・仕事以外の要因・男性性・女性性・女性であることに関する要因とメンタルヘルスとの関連に、婚姻状況がどのような影響を及ぼすかについて検討したものであり、下記の結果を得ている。 1.女性と比較して男性では「仕事の要求度」「仕事のコントロール」「男性性」「年齢」「学歴」「婚姻状況」「子供の数」が有意に高かった。逆に、男性と比較して女性では「GHQ得点」「職場以外の人からのサポート」「仕事以外のストレス」が有意に高かった。 2.男女におけるロジスティック回帰分析の結果、男性では、メンタルヘルスの悪さを有意に予測する変数は「高い仕事の要求度」「仕事以外のストレス」「女性性」であり、メンタルヘルスの良さを有意に予測する変数は「比較的低い職場におけるサポート」「比較的高い職場におけるサポート」「高い職場におけるサポート」「仕事以外の楽しみ」「年齢」であった。女性では、メンタルヘルスの悪さを有意に予測する変数は「仕事以外のストレス」「男性性」であり、メンタルヘルスの良さを有意に予測する変数は「比較的高い職場におけるサポート」「比較的低い職場以外の人からのサポート」「比較的高い職場以外の人からのサポート」「仕事以外の楽しみ」「年齢」であった。 3.既婚群と比較して未婚群では「仕事の要求度」「職場におけるサポート」「学歴」が有意に高く、逆に、既婚群は未婚群と較べて「年齢]が有意に高かった。 4.未婚群、既婚群におけるロジスティック回帰分析の結果、未婚群では、メンタルヘルスの悪さを有意に予測する変数は「男性性」「女性であることの意識」であり、メンタルヘルスの良さを有意に予測する変数は「比較的低い職場以外の人からのサポート」「比較的高い職場以外の人からのサポート」「仕事以外の楽しみ」であった。また、既婚群では、メンタルヘルスの悪さを有意に予測する変数は「仕事以外のストレス」であり、メンタルヘルスの良さを有意に予測する変数は「比較的低い職場におけるサポート」であった。 以上、本論文は、職場におけるストレス・サポート・仕事以外の要因・男性性・女性性とメンタルヘルスとの関連の仕方は男女で異なること、また、女性に関しては、職場におけるストレス・サポート・仕事以外の要因・男性性・女性性・女性であることに関する要因とメンタルヘルスとの関連に、婚姻状況が影響を及ぼしており、働く女性は、仕事ストレス以外に、女性役割の要求という二重規範に適応しなければならないので、特別なケアが必要であることを明らかにした。 本研究は、これまでほとんどなされていなかった働く女性のストレス・性役割とメンタルヘルスとの関連を検討することにより、働く女性のメンタルヘルス向上に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |