学位論文要旨



No 115561
著者(漢字) 宇田川,義之
著者(英字)
著者(カナ) ウダガワ,ヨシユキ
標題(和) Madの転写因子であるSchnurriの役割
標題(洋)
報告番号 115561
報告番号 甲15561
学位授与日 2000.05.24
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第1671号
研究科 医学系研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 堤,治
 東京大学 助教授 久保田,俊一郎
 東京大学 講師 門脇,孝
 東京大学 講師 吉栖,正雄
 東京大学 講師 林,泰秀
内容要旨
審査要旨 要旨を表示する

 本研究はTGF-β(DPP)シグナル伝達において重要な役割を演じていると考えられるSchnurri(Shn)という転写因子の機能を明らかにするため、培養細胞に複数の遺伝子を導入することによって、蛋白同士の結合や転写能を調べ、それらをin vivoにおいて確認するため、遺伝子導入したDrosophilaにおいてDppによって誘導される遺伝子の解析を試みたものであり、下記の結果を得ている。

1.Shnのdeletion mutantを作製し、それらにエピトープを付加させ、Yeast two-hybrid systemと培養細胞を用いたWestern blotと免疫沈降を組み合わせることによって2529アミノ酸あるShnの567-909アミノ酸の領域にて二量体を形成していることが明らかとなった。ただしDppシグナル伝達における二量体形成の意味については現在解析中である。

2.Dppのレセプターの直接の基質であるMother against dpp(Mad)のdeIetion mutantを作製し、Shnと共に遺伝子導入し免疫沈降、Western blotにより、ShnはMadとシグナル依存的に結合し、その結合領域は910-1888アミノ酸であることを示した。

3.培養細胞に遺伝子導入したShnを免疫染色することによって、Shnは核内蛋白であることが示された。また様々なdeletion mutntを用いることによってShn内に核移行シグナルが複数存在することを明らかにした。これはShnが核内に存在する転写因子であることを示している。

4.Dpp-responsive geneの1つであるUltrabithoraxのエンハンサー領域をプローブとしてShn内のZinc Finger motif4/5(Shn ZF4/5)のGST蛋白を作製しfootprint assayを行うとこのエンハンサー領域内のC末端の連続するG塩基に結合することが明らかとなり、エンハンサー全体とShnの結合をgel shift assayによって確認した。このことからShnはMadと複合体を形成してDNAに結合することが明らかとなりその結合領域はUbxエンハンサー内の連続するG塩基であることが示された。

5.Drosophila embryoを用いることによって、in vivoでのShnのUbx蛋白の発現への影響を解析することによってShnの機能を検討した。核内βガラクトシダーゼにUbxのエンハンサー連続させた遺伝子のtransgenic embryoではβガラクトシダーゼはparasegment6-9に集積するのに対し、embryo内にDppが発現しないDppS4のembryoとUbxエンハンサー内のShn結合部位の変異体のembryoは共通してparasegment6-9の細胞にβガラクトシダーゼの集積は認められなかった。

 つまりUbxの発現に対し、Shnは必須な転写因子として機能することが明らかになった。

以上、本論文は培養細胞系における免疫沈降、Western blotを用いることによってDppのシグナル伝達、特に今までほとんど解明されていなかったレセプター以降からDNAにおける転写調節にいたるまでの経路を明らかにすると同時にDrosophilaの巨大転写因子Schnurriの機能を明らかにした。本研究は今後、癌抑制遺伝子の1つであるTGF-βのシグナル伝達を解明する上でその転写因子の機能解析に道を開くものと確信する。よって学位授与に十分に値するものと考えられる。

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