学位論文要旨



No 115992
著者(漢字) 矢原,夏子
著者(英字)
著者(カナ) ヤハラ,ナツコ
標題(和) 小胞輸送における酵母ARF1の多面的機能の解析 : 複数の輸送系への関与とその制御機構
標題(洋) Multiple roles of Arfl GTPase in the yeast exocytic and endocytic pathways
報告番号 115992
報告番号 甲15992
学位授与日 2001.03.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(理学)
学位記番号 博理第4036号
研究科 理学系研究科
専攻 生物科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 東江,昭夫
 東京大学 教授 内宮,博文
 東京大学 助教授 菊池,淑子
 東京大学 助教授 西田,生郎
 理学研究所 主任研究員 中野,明彦
内容要旨 要旨を表示する

<序論>

 細胞膜によって囲まれたひとつの区画しか持たない原核細胞に比べ,真核細胞は細胞内膜系を獲得することによって,緻密に機能分化したオルガネラの発達を可能とし,原核細胞から劇的な進化を遂げたと言える.真核細胞内の小胞体やゴルジ体は,それぞれの区画の独自性を保ちながらも互いに膜をやり取りし,小胞体上のリボソームで合成されたタンパク質を働くべき所まで運ばなければならない.その過程は小胞を介した小胞輸送のシステムによって厳密な制御を受けている.この運び手となる小胞として,古くから知られるクラスリン小胞に加え,COPI,COPII小胞と呼ばれる一連のコートタンパク質を擁する被覆小胞の存在が確認されている.

 小胞輸送は,ドナー膜からの輸送小胞の出芽・形成,・アクセプター膜との融合・接着という一連の反応から成り立っており,その過程において,さまざまなGTPaseが反応のON/OFFを司る分子スイッチとして重要な役割を果たすことが知られている.ADP-ribosylation factor(Arf)は,酵母からヒトに至るまで全ての真核細胞に存在するGTPaseであり,COPI小胞の構成因子のひとつとしてCOPIの出芽形成を制御するとされている.Arfと近縁のSar1が,COPII小胞の出芽形成を制御し小胞体からゴルジ体への輸送を担っていることが,in vivo ,in vitroの両方で証明されているのに対し,Arfが働く輸送ステップについてその理解は混沌としたままとなっている.Arfは主に動物培養細胞を用いたin vitroの実験から,ゴルジ体層板間,小胞体からゴルジ体への順方向輸送,ゴルジ体から小胞体への逆方向輸送,エンドソームリソソーム系などさまざまな輸送系に関与することが示唆されてきてはいるものの,in vivoでの解析が非常に乏しいために,実際に生体内でArf1分子がこれら複数の輸送系を制御し得るのか,もしそうならばどのようなメカニズムによって制御しているのか,等といった疑問は解明されていない.

 本研究では,Arfの役割をin vivoで解析することを目的とし,出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの強力な分子遺伝学のバックグラウンドを用いてARF1の温度感受性変異株の単離を行った.arf1温度感受性変異株の解析を行うことによって,Arfの機能を生体内で解析し,複数の輸送系への関与を生きた細胞内で検証するとともに,多岐に渡る輸送系に対するArfの制御機構について解明していくことを目指した.

<結果と考察>

1. arf1温度感受性変異株アレルを8個単離した.

 修士過程において,出芽酵母ARF1の温度感受性変異株の単離を行った.スクリーニングの際には,ARF1の機能的ホモログであるARF2による機能的相補を避けるため,Δarf1Δarf2二重破壊株においてORF全体にPCRを用いてランダムに変異を導入したARF1を発現させた.温度感受性を示す変異遺伝子について,複数変異が入っているものについては温度感受性を引き起こすアミノ酸変異を決定し,最終的に制限温度下で生育できないような新奇のarf1変異遺伝子群を8個(arf1-11〜arf1-18)単離した(図1,表1).変異遺伝子産物の作用を安定な状態で調べるために,これらの変異遺伝子をΔarf1Δarf2二重破壊株のゲノム中に組み込み,以下の解析を行った.また同様の条件で野生型のARF1を挿入した株(以下Δarf2と示す)も作成し,完全な野生株と同じであることを常にコントロールとして確認することとした.

2. arf1温度感受性変異株はアレル特異的な輸送損傷を示した.

 変異arf1遺伝子の輸送経路における影響を,次のような手法を用いて調べた.(1)液胞タンパク質であるカルボキシペプチダーゼY(CPY)およびアルカリフォスファターゼ(ALP)をマーカーとしたパルスチェイス(図2).(2)細胞外分泌タンパク質であるインベルターゼのパルスチェイス(図3).(3)CPYの細胞外へのミスソーティング(図4A).(4)小胞体タンパク質であるBiPの局在異常(細胞外へのもれ)(図4B).(5)generalな分泌のアッセイ(図5)(6)蛍光色素FM4-64のエンドサイトーシス系による細胞内への取り込み(図6).(7)Rer1PとGFPの融合タンパク質の局在の変化(図7).Rerlpは定常状態では小胞体とゴルジ体の間をリサイクリングしながらゴルジ体シス領域に局在しているが,ゴルジ体から小胞体への逆輸送に損傷がある変異株では過って液胞へ輸送されるため,ゴルジ体から小胞体への逆輸送損傷を調べることが出来る(佐藤ら,投稿中).(8)電子顕微鏡による形態観察(図8,9,10).

 特徴的なアレルについて,その表現形を以下に記述する.

-arf1-11のアレルは,著しい小胞体からゴルジ体への輸送損傷(図2,3,5)および顕著な小胞体膜の蓄積(図8)など,COPIIの変異株同様,典型的な小胞体からゴルジ体への輸送損傷の表現形を示した.ところがEGFP-Rerlpの局在を調べたところ,sec13などCOPIIの変異株で見られたような小胞体像は観察されず,弱い液胞の染色が観察された.この結果から,arf1-11では小胞体からゴルジ体への順方向輸送のみでなく,ゴルジ体から小胞体への逆輸送にも損傷が生じていると考えられる.また,arf1-11ではEGFP-Rerlpのリング状の構造が観察され,FM4-64染色においても同様なリング状の構造が見られたことから,エンドソームから液胞までの輸送系にも損傷が生じており,EGFP-RerlpやFM4-64がエンドソームで蓄積していると予想される.

-arf1-13のアレルは,電子顕微鏡によって,制限温度1時間では肥大したエンドソーム(MVB:multivesicular body)様の構造の蓄積が見られ(図9A),2〜4時間たつとその構造体は減少し,代わりに非常に複雑に入り組んだ形状を示す電子密度の高い液胞が観察された(図9B).液胞の形態異常はFM4-64においても観察された(図6).

-arf1-16はEGFP-Rerlpの局在に異常が見られるだけでなく,著しいBiPの細胞外へのもれが観察された.BiPはHDELシグナル配列を認識されることによってゴルジ体から小胞体へと送り返され,そのシステムはRerlpに非依存的であることが知られている.よってarf1-16においては,Rerlp依存的な逆輸送システムだけでなく,HDEL配列認識による逆輸送にも損傷が生じていると考えられる.

-arf1-18はFM4-64やEGFP-Rerlpが細胞質中に散在するような像が観察された.疎水性のFM4-64や4回膜貫通の膜タンパク質のRerlpが可溶化されているとは考えにくく,なんらかの膜構造に蓄積していると考えられる.電子顕微鏡による形態観察の結果,このアレルの細胞質中にはさまざまな種類や大きさの小胞の蓄積が観察されたことから(図10),FM小64やEGFP-Rerlpはこれらの小胞に局在している可能性があると考えている.

以上のように,arf1温度感受性変異株は,制限温度下での輸送損傷を網羅的に調べた結果,アレル特異的な輸送損傷および形態異常の表現形を示すことが明らかとなり,Arf1p 1分子がさまざまな輸送系に関与することが示された.

3. arf1温度感受性変異株はアレル間において遺伝子内相補が成立した.

 多機能性タンパク質において,異なる変異株同士をかけあわせることによってそれぞれの損傷を補いあい生育が回復するという遺伝子内相補と呼ばれる現象が以前から知られている.そこで,arf1温度感受性変異株同士においても,遺伝子内相補が成り立つかどうかを検討した.変異株同士のヘテロアレリックな2倍体を作成し,温度感受性を調べた結果,いくつかのarf1温度感受性変異株の組み合わせにおいて遺伝子内相補が成立し(図11),これらの変異アレルを3つの相補グループに分類することができた(表2).

4. arf1変異株の温度感受性をアレル特異的に抑圧する因子を単離した.

 Arf1p1分子がどのようにして異なる複数の輸送系を制御しているのかを明らかにするために,arf1温度感受性変異株の多コピーサプレッサーのスクリーニングを行った.これまでのところ,著しい温度感受性を示すarf1-11およびarf1-16のアレルにおいて,複数の抑圧因子を単離することに成功している.これらの因子はarf1温度感受性変異株をアレル特異的に抑圧することから,Arf1pが周辺因子を使い分けることによって,複数の輸送系を制御していることが示唆された.

<結論>

arf1温度感受性変異株を複数単離し,それらがアレル特異的な輸送損傷を示し,アレル間において遺伝子内相補が成立することを示した.またarf1温度感受性変異株の温度感受性を抑圧する因子を単離し,アレル特異的な抑圧活性を示した.以上の結果から,出芽酵母Arf1pが細胞内において,複数の輸送系を制御する多機能タンパク質として作用していると結論した.また同時に,その多機能性をこの温度感受性変異株で分離することができた.今後このarf1温度感受性変異株をツールとして用いることにより,Arfが関与する小胞輸送の制御システムについてその分子メカニズムの全体像を解明していきたい.

参考文献

Multiple Roles of Arf1 GTPase in the Yeast Exocytic and Endocytic Pathways.

Natsuko Yahara,Takashi Ueda,Ken Sato,and Akihiko Nakano.Mol.Biol.Cell,Volume12,Number1,January,2001 掲載予定.

図1 arf1温度感受性変異株(arf1-11,arf1-12,arf1-13,arf1-14,arf1-15,arf1-16,arf1-17;arf1-18),およびコントロールとして野生株,△arf2を,YPDプレート上で各温度にて3日間生育させた.

表1 arf温度感受性変異株のアミノ酸変異点

図2 arf1温度感受性変異株における液胞タンパク質の細胞内輸送.

(A)カルボキシペプチダーゼY(CPY)のパルスチェイス.それぞれの変異株・およびコントロールとして野生株・Δarf2においてパルスチェイス実験を行った.p1,p2,mはそれぞれ小胞体,ゴルジ体,液胞型の分子種を示す.(B)arf1-13とarf1-14におけるCPYとアルカリフォスファターゼ(ALP)の輸送の比較(37℃),ALPのpromはそれぞれ前駆体型,成熟型(液胞型)の分子種を示す.液胞タンパク質の輸送においてアレル特異的な損傷が見られた.

図3 arf1温度感受性変異株における細胞外分泌タンパク質,インベルターゼの輸送.それぞれの変異株,およびコントロールとして野生株,Δarf2において制限温度(37℃)下でパルスチェイス実験を行い,各点において遠心により細胞と培地を分け,細胞内に留まっている分(Internal)と細胞外に分泌された分(External)を各々SDS-PAGEで解析した.インベルターゼのを輸送においてもアレル特異的な損傷が見られた.

図4 抗CPY (A) または抗BiP (B) 抗体を用いたコロニーブロッテイング.半許容温度(35℃)にて,arf1-16ではCPYの細胞外へのミスソーティングが,またarf1-16およびarf1-17ではBiPのもれが観察された.

図5 generalな分泌のアッセイ・細胞をラベル後培地を回収,TCA沈殿した後・SDS-PAGEで解析し、制限温度(37℃)下で培地中に分泌されたタンパク質を調べた.arf1温度感受性変異株では培地中へのタンパク質の分泌にアレル特異的な損傷が見られた.

図6 arf1温度感受性変異株におけるFM4-64の取り込み,制限温度(37℃)で1時間培養した細胞を,50mM FM4-64を含む培地で10分間ラベルし,洗浄後,1時間の後蛍光観察を行い,色素の取り込みを調べた.arf1-11ではリング状の構造(矢印)が観察され,arf1-13では液胞の形態に異常が見られた.またarf1-18ではFM4-64が細胞質中に蓄積していた.Bar;5μm.

図7 arf1温度感受性変異株におけるEGFP-Rerlpの局在異常.細胞を制限温度(37℃)で1時間培養後,小胞体とゴルジ体間をリサイクリングするEGFP-Rerlpの局在を調べた.sec13では小胞体からゴルジ体への輸送が阻害されるが,ゴルジ体から小胞体への逆輸送は正常に機能するため,EGFP-Rerlpが小胞体に蓄積し,小胞体像が観察される(佐藤ら,投稿中).これに対しarf1-11では小胞体像は観察されず,リング状の構造(矢印)と弱い液胞の染色が見られた.arf1-13においてもEGFP-Rerlpの液胞へのミスソーティングが観察された.またarf1-18ではEGFP-Rerlpが細胞質中に蓄積していた.Bar;5μm.

図8 arf1-11の電子顕微鏡による観察像.

arf1-11の細胞を制限温度(37℃)で培養,急速凍結置換法によって固定後酢酸ウラン染色を行い,電子顕微鏡を用いて観察を行った.Bars,1.0μm.顕著な小胞体膜の蓄積が観察された.

図9 arf1-13の電子顕微鏡による観察像.

arf1-13の細胞を37℃で1時間(A)および4時間(B)培養し,固定後,電子顕微鏡を用いて観察を行った.Bars,1.0μm.arf1-13では37℃で1時間でMVB様の構造(矢頭)の蓄積が,4時間で液胞の形態異常が観察された.

図10 arf1-18の電子顕微鏡による観察像.

arf1-18の細胞を37℃で1時間培養し,固定後,電子顕微鏡を用いて観察を行った.Bars,500nm.arf1-18ではさまざまな小胞(矢頭)の蓄積が観察された.

図11 arf1温度感受性変異株のアレル間において遺伝子内相補が成立した例を示す。arf1-11とarf1-16のホモの2倍体(11x11,16x16)は30℃では生育できないが,2つのアレルをかけあわせたヘテロアレリックな2倍体(11x16)は生育可能となった。

表2 arf1温度感受性変異株間における遺伝子内相補.

野生型(0)および各変異株(11-18)同士のホモまたはヘテロアレリックな2倍体の制限温度(37℃.*のみ30℃)における生育を+/-で示す.arfi温度感受性変異株は遺伝子内相補が成り立つ3つの相補グループに分類できた.

審査要旨 要旨を表示する

 本論文は、出芽酵母を真核細胞のモデルとして用い、真核細胞に特有な細胞内膜系間の小胞輸送システムの制御機構の解明を目指したものである。序論では、これまでの小胞輸送研究を概観し、今後の間題点を指摘すると共に、本研究の目的を示している。すなわち、小胞輸送の分子スイッチとして働くGTPaseの一つ、Arf(ADP-ribosylation factor)の細胞内での機能解明を目標とした。第1章ではarf1温度感受性変異体の分離と遺伝学的な解析を行い、8個の新しい変異を同定した。これらを基に、Arfの機能解析を進めることが可能となった。第2章では、arf1の変異部位により輸送損傷が異なることを見い出し、Arfが多機能蛋白質であることを示唆した。第3章では、前章で予想されたArfの多機能性を遺伝学的に証明した。第4章では、Arfと相互作用する因子を検索するために、arf変異体の多コピーサプレッサーを分離し、その原因遺伝子を同定した。結論では、これまでの結果を総合的に解釈し、Arfは細胞内の複数の輸送系を制御する多機能蛋白質として作用するとした。各章の内容の要旨は以下の通りである。

第1章 arf温度感受性変異株の分離

 酵母はARF1とARF2の二つの重複したARF遺伝子を持つ。そこで、arf1の変異体を分離するために、arf1 arf2二重破壊株においてARF1のORF全体にPCRを用いてランダムに変異を導入したARF1を発現させた。温度感受性を示す変異遺伝子について、複数変異が入っているものについては温度感受性を引き起こすアミノ酸変異を決定し、最終的に新奇のarf1変異遺伝子を8個単離した。

第2章 アレル特異的な輸送損傷

 arf1-11変異体:顕著な小胞体膜の蓄積など、COPII変異体同様に、小胞体からゴルジ体への輸送に著しい損傷がみられる。ところが、EGFP-Rer1Pの局在を調べたところ、COPII変異株で見られたような小胞像は観察されず、弱い液胞の染色が観察された。以上より、本変異体では、小胞体かゴルジ体への順方向輸送のみではなく、ゴルジ体から小胞体への逆輸送にも損傷が生じていることが考えられる。さらに、EGFP-Rerlpのリング状構造が観察され、FM4-64染色においても同様なリング状構造が見られたことから・エンドソームから液胞の輸送系にも損傷が生じており、EGFP-RerlpやFM4-64がエンドソームで蓄積していることが予想された。

 arf1-13変異体:制限温度下に1時間置いた細胞を電子顕微鏡で観察すると、肥大したエンドソーム様の構造体の蓄積がみられる。2-4時間経つとその構造体は減少し、変わりに非常に入り組んだ電子密度の高い液胞が観察された。

 arf1-16:EGFP-Rerlpの局在に異常が見られるばかりではなく、著しいBipの細胞外への漏れが観察された。Bipは、そのHDELシグナル配列が認識されることによって、ゴルジ体から小胞体へ送りかえされ、このシステムはRer1pに非依存的であることが知られている。したがって、arf1-16株はRer1p依存的な逆輸送システムばかりではなく、HDEL認識による逆輸送にも損傷が生じていると考えられる。

 arf1-18:FM4-64やEGFP-Rer1pが細胞質中に散在するような像が観察された。電子顕微鏡による観察の結果、細胞質中にさまざまな種類や大きさの小胞の蓄積が観察されたことから、疎水性のFM4-64やEGFP-Re1Pはこれらの小胞に局在している可能性がある。

 以上のように、arf1温度感受性変異体は制限温度下で、アレル特異的な輸送損傷をよび形態異常を示すことが明らかとなり、Afr1P分子がさまざまな輸送系に関与することが示された。

第3章 arf1温度感受性変異間の遺伝子内相補

 変異体同士のヘテロアレリックな二倍体を形成し、温度感受性を調べた結果、幾つかの組み合わせにおいて遺伝子内相補が成立し、これらの変異アレルを3つの相補群に分類した。

第4章 arf1変異の多コピーサプレッサー

 Arf1P一分子がどのようにして異なる複数の輸送系を制御しているのかを明らかにするために、arf1温度感受性変異の多コピーサプレッサーのスクリーニングを行った。これらの因子はアレル特異的にサプレスすることから、Arflpが周辺因子を使い分けることによって、複数の輸送系を制御する機構を提案した。

結論

 arf1温度感受性変異を複数単離し、それらがアレル特異的な輸送損傷を示し、アレル間において遺伝子内相補が成立することを示した。また、arf1温度感受性変異体の温度感受性をサプレスする因子を単離し、アレル特異的なサプレス能があることを明らかにした。以上の結果から、Arf1pが細胞内において、複数の輸送系を制御する多機能蛋白質として作用していると結論した。

 平成13年2月6日に開催された博士論文審査委員会において、論文の内容および申請者の専門学術における力量について審査した。また、発表論文は共著であるが、申請者の貢献が極めて高いことも認められた。以上のことより、本申請者は博士(理学)の学位を受けるのに十分な資格を有することが、委員の全員一致によって認められた。

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