学位論文要旨



No 116299
著者(漢字) 三木,玄方
著者(英字)
著者(カナ) ミキ,ハルカタ
標題(和) 新しいキネシン類似蛋白群分子KIF2Bの分子細胞生物学的研究
標題(洋) The Molecular Cell Biology ofa New Kinesin Superfamily Protein,KIF2B
報告番号 116299
報告番号 甲16299
学位授与日 2001.03.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第1694号
研究科 医学系研究科
専攻 分子細胞生物学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 岡山,博人
 東京大学 教授 飯野,正光
 東京大学 教授 三品,昌美
 東京大学 教授 勝木,元也
 東京大学 助教授 久保田,俊一郎
内容要旨 要旨を表示する

キネシン類似蛋白群分子(KlF)は細胞内において微小菅に沿って、ATPを分解しながら物質輸送を担うモーター分子である。これまでにKIF1AやKlF17などそれぞれのKIFが互いに違った分子を含む膜状小胞を運搬していることがわかっている。またマウスにおいてKIFが32分子報告されている事からも、それぞれのKIFが固有の荷物を輸送すると考えられる。そのため未知のKIFが存在する事が予想され、細胞内物質輸送の機構の全貌を明らかにするには全てのKIFを同定する必要がある。KIFのモーター領域には微小管との結合に関係するアミノ酸配列とATPと結合する配列とがあり、これらは生物種間やKIFの間で保存されている。この二つの保存されている領域に対してPCR法を用いて未知のKIFの探索を行い、これまでに報告されていない新しいKIFをマウスにおいて新たに13種類発見した。人間及びマウスのゲノムには合計で45種類のKIFが存在する事が新たにわかった。この機会にこれ迄バラバラであったKIFの名称の統一をはかる事を提案する。ゲノムの全KIFの塩基配列やアミノ酸配列を用い、人間の全ゲノムに対して配列検索を行った結果、全てのKIFを発見した事を確認した。この論文の第一部ではそれらのKIFについてモーター領域を用いたアミノ酸配列に基づく系統樹を作成し、ノザンブロット法によりメッセンジャーRNAの発現臓器の解析を行った。またこれら新しいKIFの中のKIF2Bが膜状小胞と結合する事が知られているKlF2Aと高い類似性を有する事が分かった。第二部ではKIF2Bに関して抗体を作成し、ウエスタンブロッティング法や免疫染色法によりその蛋白の局在を観察した。その結果、KIF2Bは精子の尾鞘に特異的に存在する事が示唆された。

審査要旨 要旨を表示する

 本論文は細胞内物質輸送や細胞分裂において膜状小胞、染色体や細胞内小器官の輸送をになうキネシン類似蛋白群分子(KIFs)について、

 1)まだ報告のない新たなKIFの検索

 2)新しく発見されたもののうちKIF2Bに関する細胞生物学的な研究

の2点を試みたものである。その結果、下記の新しい事実が判明した。

1.ヒトゲノムにおいてまだ報告されていなかったKIFが13あり、これまでに報告されているものとあわせると合計45のKIFがある。これはPCR法を用いた分子生物学的な検索とヒトゲノムの全核酸配列を用いたデータベース検索をあわせた結果である。

2.これらの新しいKIFのうち、KIF2B、KIF16B、KIF18A、KIF18B、KIF19AとKIF24のノザンブロッティング法を用いたメッせンジャーRNAの発現している臓器の解析を行い、各々特有の発現パターンが見られた。KIF2Bは精巣に、KIF16Bは精巣と脳に、KIF18Aは肺と胎児の頭部に、KIF18Bは精巣ついで脾臓と胸腺に、KIF119Aは精巣、卵巣ついで脳や肺に、KIF24は精巣に主に発現が見られた。

3.ヒトゲノム上にあるすべてのKIFのうち分子のN末端にモーター領域と呼ばれるATP結合部位と微小管結合部位を含む領域があるものが39あり、分子の真中にモーター領域があるものが3、C末端にあるものが3あることが分かった。すべてのKIFのアミノ酸配列を用いて分子系統樹を作成したところモーター領域の位置に関しては正しく各々のファミリーに分類された。

4.これまでに報告されているKIFには統一されて名称はなく、混乱を招く恐れがあるので番号による統一の名称を提案した。

5.KIF2Bの全長と思われる塩基配列を同定し、モーター領域が分子の一次配列の中央に位置し、モーター領域の上流と下流にcoiled-coilを形成する可能性が高いことと中央にモーターのあるKIFの中では独自のsubgroupをなしていることが分かった。核酸及びアミノ酸配列はそれぞれ2004塩基、668残基の長さであることが判明した。

6.ノザンブロッティング法、ウエスタンブロッティング法ならびに免疫組織染色法により精巣においてKIF2B蛋白が発現していることが分かった。ノザンブロッティング法により2.8kb、ウエスタンブロッティング法105kDaにバンドが見られた。

7.KIF2Bに対する抗体を作成し、KIF2Bのフラグメントを用いてアフィニティー精製したもので免疫組織染色を行った。その結果KIF2Bは精子の尾鞘に存在し、機能していることが示唆された。

 以上、本論文は細胞内物質輸送や細胞分裂の機構の解明に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。

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