No | 116414 | |
著者(漢字) | ||
著者(英字) | Ashraful,Islam | |
著者(カナ) | アシュラフル,イスラム | |
標題(和) | 新しい抗アポトーシスス遺伝子サーバイビンと神経芽腫の腫瘍進展におけるその役割 | |
標題(洋) | A novel Anti-apoptosis Gane Survivin and Its Emerging Role in Human Neuroblastoma. | |
報告番号 | 116414 | |
報告番号 | 甲16414 | |
学位授与日 | 2001.03.29 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 博医第1809号 | |
研究科 | 医学系研究科 | |
専攻 | ||
論文審査委員 | ||
内容要旨 | ||
審査要旨 | 本研究は小児固形腫瘍である神経芽腫(NBL)の発生と進展にアポトーシス抑制遺伝子(IAP)の一員であるサーバイビン(SVV)遺伝子が関与しているか否かを検討したものであり、下記の結果を得ている。 1. NBLにおけるSVVの発現をノーザンブロット解析により検討したところ、SVVの高発現は年令12ヶ月以上、進行した病期、マススクリーニング発見例でない症例、TrkAの低発現と有意に相関していた。これらはいずれも予後不良因子として知られていることから、SVVの高発現はNBLの予後不良因子となりうることが示唆された。 2. CHP134・NBL細胞にレチノイン酸を作用させたところ、DFF45/ICAD蛋白の解離とそれに伴うカスパーゼ3の誘導と活性化が観察され、タネル染色法によりアポトーシスが確認された。更に、CHP134細胞でSVVを強制発現させると、レチノイン酸によるアポトーシスは著明に抑制された。またSVVの発現は、分化を起したSH-SY5Y細胞において中程度に減弱し、レチノイン酸に反応しないことが知られているSK-N-AS・NBL細胞では、その発現は一定に留まるか、むしろアップ・レギュレートされていた。以上より、SVV遺伝子がNBL細胞においてアポトーシスと分化に重要な役割を果たしていることが判明した。 3. SVVのクローニングの過程でわれわれはSVVのアイソフォームを発見し、直接シークエンスとRT-PCR法で解析したところ、SVVのアイソフォーム(SVVβ)では抗アポトーシスの機能を有するBIRドメインに23個のアミノ酸が挿入された構造を有していた。このため、SVVβはSVVに対して、機能的不活性化またはドミナント・ネガティブにより拮抗的に作用する可能性が示唆された。予後良好なNBLの33%はSVVよりもSVVβ優位な発現を示していた。アポトーシスに際しては、SVVが完全にダウン・レギュレートされるのに対して、SVVβは常に発現していた。アポトーシスの過程においてSVVβが持続的に発現することは、少なくとも一部の自然退縮を示すNBLにおいてこのアイソフォームが作用している可能性が示唆された。In-vitroの結合および競合実験では、SVVβは重合チュブリンと結合し、しかもSVVと競合することが確認された。マイクロチュブルをチュブリンに分解するカスパーゼ3の作用を押さえることにより、重合したチュブリンと結合したSVVはアポトーシスを抑制する。われわれはコンペティション・アッセイにより、SVVβが重合チュブリンへのアンタゴニストとして働き、SVVの作用を抑制することを証明した。 4. 予後不良のNBLには17qゲインが高頻度に認められる。そこで、SVVが17qゲインのターゲット遺伝子の候補となりうることを確認するために、サザン・ブロッティングとFISH法を行った。SVV遺伝子はPAC(P1 Artifical Library)から単離し、制限酵素地図により確認した。31例のマススクリーニング発見NBLでは、サザン・ブロッティングでSVVゲインは1例も認められなかった。マススクリーニング発見以外のNBL症例においても、SVVゲインの頻度は最近のヨーロッパのグループ・スタディの結果に較べると低値であった。しかし1例のMYCの増幅と1pLOHを伴う症例で、t(1;17)によるSVVゲインのシグナルを1pの遠位領域にFISHによって確認することができた。今回の研究では、SVVゲインとそのmRNA発現との間には相関を見いだすことができなかった。しかしMYCNの増幅と1pの欠失を伴う症例において、SVVゲインを含む17qが1pに転座していることをFISH法により直接証明することができたことは、大きな意義があると考えている。SVVに特異的なプローべを用いて、より多くのNBL症例を検討する必要があると考えられる。 以上、本論文はSVV遺伝子がNBL細胞のアポトーシスや分化を促進する重要な働きをしていることを明らかにし、この遺伝子がNBLの発生や進展に関与していることを示した。特に、SVVのアイソフォームを新しく発見し、これがSVVと拮抗することにより、NBLの自然退縮に作用している可能性を示し、今後、このアイソフォームを治療に応用することの有用性を示唆した。 本研究はこれまでに不明であったNBLの発生と進展の機序の解明に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 | |
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