No | 116440 | |
著者(漢字) | ||
著者(英字) | ARUN KUMAR,ADHIKARY | |
著者(カナ) | アルン クマー,アディカリ | |
標題(和) | アデノウイルスD群の新しいタイピング法と日本で分離されたアデノウイルス8の分子遺伝学的特徴 | |
標題(洋) | A NEWMETHOD FOR TYPING OF SUBGENUS D ADENOVIRUSES AND GENETIC CHARACTERIZATION OF ADENOVIRUS TYPE 8 ISOLATED IN JAPAN | |
報告番号 | 116440 | |
報告番号 | 甲16440 | |
学位授与日 | 2001.03.29 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 博医第1835号 | |
研究科 | 医学系研究科 | |
専攻 | 外科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | ヒトアデノウイルス(Ad)は51型のセロタイプがあり、ゲノムの相同性、群内の組み換え能などの指標により6群(亜属)に分類される。このうち、約30%が結膜炎の原因ウイルスと考えられている。D群に属するAd8,19,37などは流行性角結膜炎の原因ウイルスとして知られ、重篤な結膜炎症状と点状角膜炎などを引き起こす。この疾患は接触感染で流行し、学校などの集団生活で問題となる。また現状では有効な治療法は確立されていない。 このAd D群のタイピング法は従来、分離培養法、中和試験法、hexon based PCR-RFLP法などで行われてきた。しかし分離培養法、中和試験法では2-4週間の日数を要し、またhexon based PCR-RFLP法では3日間を要する。本研究は結膜擦過物より直接タイピングするfiber based PCR-RFLPを用いて迅速なタイピング法の開発を目的とした。更に流行性角結膜炎の主因と考えられているAd8の過去の分子疫学調査と比較検討するため、都城市(宮崎県、1998年-1999年)、広島市(1983年-1997年)及び川崎市(1999年)の検体より分離されたものを用いて解析した。 1.Fiber based PCR-RFLPを用いてのAd D群のタイピング法 方法 Ad8,9,15,19及び37のfiber geneに関するプライマー、AF2(5'CGC GTG GAA GAT GAC TTC3')/AR2(5'CGT GCT GGT GTA AAA ATC3')を用いて結膜擦過物よりPCR法を行い、RFLPの制限酵素にはDdeI.HinfI及びRsaIを使用した。RestrictionパターンはAd8,9,15,17,19,22,28,28,37及び39の例で作成した。具体的なタイピングは急性結膜炎患者の結膜擦過物102検体を用いた。熱処理を行った検体よりDNAを抽出し、PCRを施行した。また比較検討のため分離培養法、中和試験法、AdTU7/AdTU4'及びAdnU-S'/AdnU-Aのプライマーを用いたhexon based PCR-RFLP法も同時に施行した。 結果102検体のうち48例がAd D群であった。内訳はAd8,45例、Ad19,2例、Ad37,1例とタイピングされた。一方、分離培養法、中和試験法では29例がAdD群と分離された。内訳はAd8,26例、Ad19,2例、Ad37,1例であった。Hexon based PCR-RFLP法では我々のfiber based PCR-RFLP法と同一の結果であった。また分離培養法、中和試験法でタイピングされた例はhexon based PCR-RFLP法、fiber based PCR-RFLP法でもタイピングされ同一の結果であった。ウイルスのDNA測定限界はhexon based PCR-RFLP法では1000 genome copyであったが、一方fiber based PCR-RFLP法では100genome copyであった。 結論 本法は従来のタイピング法と比較して以下に挙げられる利点がある。 1)迅速かつ簡便である。分離培養法、中和試験法では2-4週間、またhexon based PCR-RFLP法でも3日間を要する。一方、本法では1日を要するのみである。 2)分離培養法、中和試験法は特異性はあるが、抗体などの点で感受性が低いことがある。本法は分離培養法、中和試験法と比較して特異性は同じであった。また感受性は従来のhexon based PCR-RFLP法と同一であった。 以上の点でAd D群のタイピング法にfiber based PCR-RFLP法は有用と考えられた。 2.Ad8の分子疫学調査 対象および方法 対象は1998年-1999年に宮田眼科病院(都城市)で分離された26検体、1983年-1997年に広島市で分離された78検体、1999年に川崎市で分離された5検体である。Hep2細胞を用いて、増殖させた後、Wadellとde Jongの方法でAd8DNAを抽出した。これを制限酵素(BamHI,HindIII,PstI,SacI,SalI,SmaI)で切断し、切断像を比較検討した。 結果 図に各都市の結果を示す。 結論 広島の検体は1983年-1988年までAd8A,Ad8B、1984年-1995年までAd8E更には1995年-1997年にAd8Gが分離された。都城の検体はAd8Eが主体であった。また1例に一部変異がみられ、過去に報告のないものであった。川崎の検体はAd8Gであった。 Distribution of Ad8 Genome Types by Time and PIace in Japan | |
審査要旨 | 本研究は結膜擦過物より直接タイピングするfiber based PCR-RFLPを用いてアデノウイルス(Ad)D群の迅速なタイピング法の開発を目的とした。更に流行性角結膜炎の主因と考えられているAd8の過去の分子疫学調査と比較検討するため、都城市(宮崎県、1998年-1999年)、広島市(1983年-1997年)及び川崎市(1999年)の検体より分離されたものを用いて解析した。 1)ウイルスのDNA測定限界はhexon based PCR-RFLP法では1000genome copyであったが、一方fiber based PCR-RFLP法では100genome copyであった。 2)本法は従来のタイピング法と比較して以下に挙げられる利点がある。 a.迅速かつ簡便である。分離培養法、中和試験法では2-4週間、またhexon based PCR-RFLP法でも3日間を要する。一方、本法では1日を要するのみである。 b.分離培養法、中和試験法は特異性はあるが、抗体などの点で感受性が低いことがある。本法は分離培養法、中和試験法と比較して特異性は同じであった。また感受性は従来のhexon based PCR-RFLP法と同一であった。 以上よりAd D群のタイピング法にfiber based PCR-RFLP法は有用と考えられた。 3)分子疫学調査では広島の検体は1983年-1988年までAd8A,Ad8B、1984年-1995年までAd8E、更には1995年-1997年にAd8Gが分離された。都城の検体はAd8Eが主体であった。また1例に一部変異がみられ、過去に報告のないものであった。一方、川崎の検体はAd8Gであった。 以上、本論文は結膜擦過物より直接タイピングするfiber based PCR-RFLPを用いてアデノウイルス(Ad)D群の迅速なタイピング法を開発した。本法は幾つかの点で従来の方法にみられない利点があり、本研究は学位の授与に値するものと考えられる。 | |
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