学位論文要旨



No 116565
著者(漢字) 萬年,輝久
著者(英字)
著者(カナ) マンネン,テルヒサ
標題(和) 工業生産を目指したタンパク質リフォールディングに関する研究 : 新規固相利用法の開発
標題(洋) Studies on Protein Refolding in Industrial Process : Novel Application of Solid Phase
報告番号 116565
報告番号 甲16565
学位授与日 2001.07.12
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第5025号
研究科 工学系研究科
専攻 化学生命工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 長棟,輝行
 東京大学 教授 渡辺,公綱
 東京大学 教授 軽部,征夫
 東京大学 助教授 関,実
 東京大学 助教授 上田,宏
内容要旨 要旨を表示する

1.緒言

 大腸菌を宿主とした異種タンパク質発現系は,組換えタンパク質性医薬品の需要の拡大を背景に,今日工業生産プロセスの一つとしてひろく用いられるに至っている.大腸菌による発現産物は,しばしば封入体(インクルージョンボディ)と呼ばれる不溶性粒子として得られる.この粒子は比較的高い純度の目的タンパク質を大量に含有しており,他の分泌生産性宿主などの系に比して極めて高い生産性が実現されると共に,その不溶性を利用して,初期の精製操作を遠心分離によって行うことが可能である.しかしながら,この不溶性の原因は,正しい立体構造を持たないタンパク質がその疎水面同士で凝集を起こしているためであって,この粒子からネイティブ構造を持つタンパク質を得るためには,まず強力なタンパク質変性剤を用いてタンパク質を分離・可溶化しなければならない.この時点で,個々のタンパク質は完全変性状態を取るため,続く精製操作のある段階で,リフォールディング(再巻き戻し)と呼ばれる操作が施されることになる.この操作は,大腸菌による組換えタンパク質生産プロセスのなかで最も困難で,かつ研究開発費や生産コストに大きな影響を与えるステップの一つとなっている(Fig.1).一般的にリフォールディングは,可溶化に用いた変性剤の濃度低減と,非ネイティブ構造をとっているタンパク質同士の再凝集の抑制を目的として,可溶化タンパク質溶液の大希釈操作によって行われる.希釈に用いる溶液の適切な組成および温度などの諸条件は,各タンパク質によって大きく異なることが知られており,この最適化を試行錯誤的に行うことに多くの時間と労力が費やされているのが現状である.また,工業規模における生産では,大容量の反応槽と大量の試薬が必要となることから,大希釈操作自身も望ましい工程とは言えない.本研究は,このような問題点を改善し,または新たな手法を提案することを目的として行った.

2.ダイレクトリフォールディング

 組換え骨形成因子GDF5(Growth Differentiation Factor 5)は,現在,臨床試験段階にある組換えタンパク質で,骨折治療薬としての適用が期待されている.ネイティブ体は,3組のジスルフィド結合を有する分子量約13,000のモノマーが,一本のジスルフィド結合を介して会合したホモダイマー構造をとる.ネイティブ体の表面疎水性は極めて高く,イオン交換樹脂やゲル濾過樹脂などのクロマトグラフィー担体への不可逆的吸着傾向が大きいため,Fig.2Aに示すようなステップを経て精製が行われている.すなわち,精製操作の大部分を変性型モノマーの状態で行わなければならない結果として,リフォールディングステップは精製工程後期に位置し,これ以前に使用される全ての緩衝液に,変性状態の維持剤として6M以上の尿素,および還元状態の維持剤としてDTTが含有されている必要がある.そこで,リフォールディングステップを封入体可溶化の直後に行った場合に生じる問題点を検討し,より安価な精製工程の構築を試みた.

結果と考察

 まず,封入体可溶化条件の改善を含め,ジスルフィド結合形成に不可欠な酸化還元試薬の組み合わせの改良を行った.従来法では,リフォールディングステップに至るそれぞれのステップにおいて新たにDTTが添加される.これは,還元状態の維持の他に,空気酸化によるDTTの劣化を考慮しつつ,最終的に既知濃度のDTTに対して適切量の酸化型グルタチオンを添加するためである.リフォールディングステップを可溶化直後に行うことにより,この空気酸化を利用することが可能か,またより安価な還元剤であるシステインを用いることができるかを検討したところ,最適なシステイン添加量を見いだすとともに,その劣化速度とジスルフィド結合形成能に関連するパラメーターであるpHを最適化することができた.これに伴って,二量体形成促進剤である界面活性剤CHAPSおよび食塩の添加量を再検討し,それぞれ最適濃度を再決定した.さらに,緩衝液をグリシンベースからアルギニンベースに変更して,変性モノマーの溶解度を向上させることにより,最終的に従来法の3倍のタンパク質濃度(2.4 mg/ml)において,より高いリフォールディング効率を達成することができた.先に述べたように,以降の精製操作にはイオン交換およびゲル濾過クロマトグラフィーを使用することができない.このため,まず逆相クロマトグラフィーステップにおいてネイティブ体と樹脂の相互作用を阻害することが明らかになっているCHAPSを,限外濾過膜による溶媒置換によって除去し,同時に溶液を濃縮することにより系のスケールダウンを行った.続いて,この濃縮液のpHを調整してネイティブ体の等電点沈殿を誘導し,その他の不純物の除去を試みた.最終精製工程として,得られた等電点沈殿物を再溶解し,逆相クロマトグラフィに供して得られた画分を,適切な溶媒に置換したものを最終産物とした(Fig.2B).従来法にて得られる最終精製品と比較したところ,SDS-PAGE,等電点電気泳動,分析HPLC,生物活性に加え,ペプチドマッピング,アミノ酸分析,末端配列分析において同等の結果が得られた.すなわち,リフォールディングステップのタイミングと条件の変更は,GDF5の品質に影響を与えていないことが明らかとなった.以上のように,ダイレクトリフォールディングというコンセプトにより,二つのクロマトグラフィステップとそれらに必要な緩衝液の削減を行うことができ,既存の精製プロセスを大幅に改善することができた.これは,リフォールディングを必要とする他のタンパク質に対しても,初期プロセス開発の投資コストを削減できる可能性を示している.しかしながら,本法は基本的には大希釈法に基づいているため,より根本的な改善を目的として,固相利用に基づく新しいリフォールディング手法の開発を次節に試みた.

3.固相人工シャペロン法

 人工シャペロン法とは,変性タンパク質溶液にSDSなどの界面活性剤とそれを包接する化合物,例えばシクロデキストリンなどを順次添加することにより,分子シャペロンの二つの機能である`凝集抑制'と`リフォールディング促進'を人工的に再現する手法である(Fig.3).医薬品原料としてのタンパク質生産を考える場合,この両低分子量化合物は極めて安価であり,各タンパク質に対する最適溶液条件も,希釈法に比べてシンプルであるため,工業プロセスに適した系であると言える.しかしながら,この両低分子化合物は溶解状態で機能するため,1)医薬品への混入物としては望ましくないこれらの分子を,リフォールディングを終えたタンパク質から取り除かなくてはならない,2)天然の分子シャペロンのように繰り返し利用することが困難である,3)依然としてスケールアップ時には大容量タンクが必要となる,などの問題点が生じると考えられる.そこで,界面活性剤包接化合物の固相化を行うと共に,その利用に適した系の構築を試み,これらの問題点の解決を目指した.モデルタンパク質として,しばしばリフォールディング実験のターゲットとして用いられるα-glucosidaseを採用した.

結果と考察

 まず,SDSと水溶性β−シクロデキストリンを用いて,リフォールディング条件の最適化を行い,次に固相化ポリシクロデキストリンビーズを導入して同程度以上のリフォールディング効率が得られる条件の決定を試みた.その結果,α-glucosidaseは,尿素変性条件下からの希釈法による自発的リフォールディング効率が,タンパク質終濃度10μg/mlにおいて30%に満たないが,SDS1.8mM,水溶性β−シクロデキストリンをこの8倍(モル比)添加した系では,タンパク質終濃度20-40μg/mlの範囲で60%のリフォールディング効率が得られた.さらに,固相化ポリシクロデキストリンビーズを用いて同様に最適比を決定することにより,同じタンパク質終濃度の範囲で70%以上のリフォールディング効率を達成することができた(Fig.4).この際,SDSはビーズに効果的に吸着しており,リフォールディングを終えたタンパク質溶液への溶出は見られなかった.これは,以降の精製操作が不要であることを意味する.また,SDSを吸着した使用済みビーズは,純水洗浄によって再生することが可能であり,繰り返し使用できることが確認された.

これをスケールアップ可能な系で再現すべく,同ビーズを充填剤とする流動床カラム(カラム径16mmおよび26mm)と循環ポンプを組み合わせた系(Fig.5)を構築し,条件の最適化を行った.線速,循環流路体積などを改良した結果,最終的にカラム容積100mlの系において,実験室スケールのバッチ法(1ml)と同等のリフォールディング効率が得られた(Fig.6).以上より,下流精製操作を必要としない,高濃度タンパク質リフォールディングを,同一のカラムを繰り返し用いて連続して行えることが示された.本系は,市販の流動床クロマトグラフィー装置を用いて容易にスケールアップできるため,組換えタンパク質の工業生産における大規模リフォールディングプロセスとして有用であると考えられる.

4.固相上タンパク質の構造追跡法

 バイオセンサーやバイオリアクターに用いられる固定化酵素など,固相上にトラップされたタンパク質の立体構造の評価は,主にその特異的な生理活性を指標になされている.これは,液相で用いられる円偏光二色性(CD)スペクトルや蛍光スペクトル分析に代表される種々の分光学的手法を固相系へ適用することが困難なためである.しかしながら,前節に述べた固相人工シャペロン系などの応用を考える場合,医薬品原料などむしろ簡便な活性測定法を持たないタンパク質が対象となることが大多数を占めると予想される.したがって,個々のタンパク質特有の生理活性ではなく,より一般的な構造情報を追跡できる新しい測定系の構築が望まれる.そこで,表面プラズモン共鳴現象(SPR; Surface Plasmon Resonance)を利用したバイオセンサーを,固相上タンパク質に対する汎用性の高い構造変化追跡系として確立することを試みた.このバイオセンサーは,固相表面に接触する媒質内で起こる屈折率変化を,固相の裏側に照射した光の反射量を測定することによって検出する.モデル系として,固相表面に配されたデキストラン樹脂の薄層に,タンパク質を共有結合的に固定化し,種々の構造変化を誘導したときの屈折率変化を解析した(Fig.7).

結果と考察

 デキストランでコートされたセンサー表面にα-glucosidase,α-chymotrypsinogen,myoglobinをそれぞれアミンカップリング法によって固定化し,種々のpHに調製した緩衝液を作用させた.屈折率の変化はリアルタイムで得られ,緩衝液の作用時および作用後に有意な変化量が見いだされた(Fig.8).それぞれをin situ値,post値として,作用させたpHに対してプロットを行ったところ,異なる傾向が見られたので,前者を上記3種のタンパク質に対して,後者をholo-およびapo-myoglobinに対して詳しく解析した.in situ値のプロットをFig.9Aに示す.単位質量数当たりの変化量は,3種のタンパク質で大きく異なったが,全てにおいて酸性条件下で正,塩基性条件下で負の値となった.各タンパク質のアミノ酸配列中の全ての荷電残基の解離状態を考慮した,タンパク質総電荷のpH依存性に関する理論曲線を導出したところ,この結果とほぼ一致することが明らかとなり,in situ値は固相上タンパク質の荷電状態を示すパラメーターであると結論づけられた.タンパク質内部に存在する塩橋は,通常のpKaとは異なる値を示す残基によって形成される例が多く,このような塩橋を有するタンパク質の場合,ネイティブ体と非ネイティブ体では同一のpH環境に対する荷電残基の解離状態が異なると考えられる.このことは,in situ値によって固相近傍に存在するタンパク質の立体構造情報を検出できる可能性を示唆している.一方post値は,酸変性誘導時において,myoglobinのholo体では二段階,apo体では一段階の低下を示した(Fig.9B).holo体で見られる一段階目の低下(pH5.5-4)は,吸光法にて観察されるヘム分子のSoret帯吸収の低下とほぼ一致しており,またヘム分子を持たないapo体では見られないことから,ヘム分子周りの環境変化を反映していることが示唆された.また,myoglobinのholo体およびapo体両者で見られる二段階目の低下(pH 3-2)は,このpH領域において両者で共通して起こることが知られているへリックスの崩壊に伴う誘電率変化を反映していると予想された.以上より,post値によってヘム分子の環境や二次構造の変化を検出できる可能性が示された.

5.結言

 大希釈法に代表される現行のタンパク質リフォールディング法が抱える問題点の解決の方向性を,1)実生産プロセスの改良による大幅なコストダウン,2)固相利用に基づいた,汎用性が高くスケールアップが容易なリフォールディング系の提案,3)固相利用時に不可欠となる新たなタンパク質構造追跡法の開発を行うことによって示した.

Fig.1.大腸菌による組換えタンパク質生産におけるリフォールディングの位置づけ

Fig.2.GDF5精製プロセス

Fig.3.人工シャペロン法

Fig.4.固相人工シャペロンの評価

Fig.5.流動床リフォールディング装置

Fig.6.流動床リフォールディング装置のスケールアップ

(カラム径:□16mm,■26mm)

Fig.7.表面プラズモン共鳴(SPR)による固相上タンパク質の構造追跡

Fig.8.タンパク質固定化および非固定化デキストランから得られるシグナル(各ピークは種々のpHの緩衝液を作用させたときのシグナル変化を表す)

Fig.9.in situ値およびpost値のpH依存性

審査要旨 要旨を表示する

 組換えタンパク質性医薬品の需要の拡大を背景に、大腸菌を宿主とした異種タンパク質発現系は、工業生産プロセスにおけるタンパク質生産法の一つとして現在広く用いられている。大腸菌による発現産物は、しばしば封入体と呼ばれる不活性な不溶性タンパク質粒子として得られる。従来は、活性を持った天然型のタンパク質を得るために、まず強力なタンパク質変性剤を用いて封入体を可溶化し、目的タンパク質を変性状態で高純度に精製した後で、リフォールディングと呼ばれる操作によって天然型のタンパク質立体構造に巻き戻している。この操作は、研究開発費や生産コストに大きな影響を与えるステップであるにも関わらず、工業生産プロセスの観点から行われたリフォールディング研究の例は少なく、大幅なコスト削減や、スケールアップが容易に行えるリフォールディング手法の開発が望まれていた。

 本論文は、現在最も広く用いられている大希釈法と呼ばれるリフォールディング手法が抱える問題点の解決の方向性について論じている。まず、既に臨床試験が行われている医療用タンパク質、GDF5(骨形成誘導因子の一種)の現行生産プロセスをダイレクトリフォールディング法によって改良することにより、大幅なコスト削減を実現している。次に、固相化人工シャペロンを用いた新しいリフォールディング手法を提案し、この固相化人工シャペロンがリサイクル可能であり、リフォールディング系のスケールアップも容易であること、また、高いリフォールディング効率が得られることをモデルタンパク質α-glucosidaseを使って示している。最後に、固相を用いたリフォールディング条件の最適化のためには、固相上タンパク質の新しい構造追跡法が不可欠であることを指摘し、表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したバイオセンサーを用いて、そのモニタリング系の構築を試みている。

 論文の構成は以下の通りである。

 第一章は序論であり、研究の背景と目的について述べている。

 第二章では、医療用タンパク質GDF5のリフォールディングプロセスの大幅な改良について報告している。天然型GDF5は疎水性が極めて高く、イオン交換およびゲルろ過クロマトグラフィー樹脂に不可逆的に吸着するという性質を有しているため、精製操作の大部分を変性型モノマーの状態で行わなければならない。したがって、現行の精製プロセスでは、リフォールディングステップが精製工程後期に位置し、これ以前に使用されるすべての緩衝液に、変性状態の維持剤として6M以上の尿素および還元剤DTTが含有されている必要が有る。ここではまず、リフォールディング操作を封入体可溶化の直後に行う方法(ダイレクトリフォールディング法)を提案し、リフォールディング条件の再検討を行っている。その結果、3倍のGDF5濃度において、リフォールディング効率を36%から63%に向上させることに成功している。さらに、続く精製操作を限外ろ過膜による溶媒置換を中心に再構築することにより、精製プロセス全体の収率を8%から20%に改善している。また、得られた最終産物とその不純物プロファイルを同定し、従来法と同等の品質が達成されていることを確認している。以上の結果をもとに、上市後10年間の生産コストを試算し42%のコスト削減が可能となったことを示している。

 第三章では、人工シャペロン法に基づく新しい固相リフォールディング法の開発について述べている。既往の液相人工シャペロン法では、その構成成分であるSDSなどの界面活性剤およびβ−シクロデキストリンが溶解した状態で添加される。したがって、リフォールディング終了後、タンパク質とこれらを分離するゲルろ過クロマトグラフィーなどの精製ステップが不可欠であり、コストと手間がかかっていた。また、これらSDS、β−シクロデキストリンを回収して再利用することもコスト的な点から容易ではなかった。ここでは、これらの問題点の解決を目的として、β−シクロデキストリンのポリマービーズを固相化人工シャペロンとして利用することを試みている。α-glucosidase濃度40μg/mlの条件では、従来の大希釈法、液相人工シャペロン法では最適条件でのリフォールディング効率がそれぞれ約8%、60%程度であるのに対して、固相化人工シャペロンを用いた場合には75%を達成できることを見い出している。続いて、SDSを捕捉したβ−シクロデキストリンのポリマービーズを遠心分離操作で回収することにより、上清中のリフォールディングしたタンパク質を簡単に分離精製できることを示している。さらに、この系のスケールアップを目的として、このビーズを充填した流動床型カラムを組み込んだリフォールディング精製装置を構築している。この装置により、スモールスケールのバッチ法と同じリフォールディング効率が得られることを示し、また、スケールアップも容易に行えることを明らかにしている。さらに、このビーズの再生を純水による洗浄のみで簡便に行うことができ、固相人工シャペロンのリサイクル使用が可能であると述べている。

 第四章では、表面プラズモン共鳴(SPR)センサを用いた固相上タンパク質の新規構造追跡法について述べている。一般に、タンパク質のリフォールディング効率は、その酵素活性を指標に評価されるが、医療用タンパク質の場合には、生物活性の測定が簡便でないことが多い。さらに、種々の分光学的構造追跡法は、固相上のタンパク質に対しては適用が困難である。ここでは、固相上タンパク質の構造追跡にSPRセンサの利用を提案している。具体的には、まずセンサ表面に固定化したタンパク質に、酸およびアルカリを作用させて構造変化を誘導し、その際に得られるシグナルを分析することにより、二種の変化量が検出されることを見い出している。さらにそれらが、固定化タンパク質の荷電状態の変化およびコンフォメーション変化をそれぞれ反映していることを示し、SPRセンサによって、固相上タンパク質の構造変化が追跡できる可能性を明らかにしている。

 第五章は本研究の総括と展望を述べている。

 以上、本論文は、工業生産プロセスに適用可能なリフォールディング手法の開発を目標として、「ダイレクトリフォールディング法」、「固相人工シャペロン法」および「SPRセンサによる固相上タンパク質の構造追跡法」を開発し、それらの実用性を実験的に示したものであり、固相利用に基づくリフォールディング手法の開発と発展に大きく寄与するところ大である。

 よって、本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

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