No | 116598 | |
著者(漢字) | ベル,ホーバル | |
著者(英字) | BELL,Havard | |
著者(カナ) | ベル,ホーバル | |
標題(和) | 接触問題における有限被覆法 | |
標題(洋) | Finite Cover Method in Contact Problems | |
報告番号 | 116598 | |
報告番号 | 甲16598 | |
学位授与日 | 2001.09.20 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第5027号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 船舶海洋工学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文では非線形有限被覆法の接触問題への拡張を行った。 有限被覆法は、解析を行う物理領域と関数を定義する数学被覆とを独立に定義することにより、物理形状によらないメッシュ分割を可能にし、物理形状に合わせてメッシュ分割をしなければならない有限要素法に対してモデル生成に要する手間を大きく削減する手法である。また、この物理形状に独立にメッシュ分割を行うという特徴により、有限要素法による大変形解析に現れる、大変形時のメッシュのゆがみにより解析が行えなくなる問題を解決し、さらに接触問題に対しても、接触判定をメッシュとは独立に定義された形状のポリゴンモデルで行うことによりより少ない手間で、容易に行うことができるというメリットがある。特に、3次元ソリッドの解析に対して有効な手法である。 変形の定式化としては、物体固定のLagrangeの定式化と空間固定のEulerの定式化が考えられる。空間固定のEulerの定式化を用いると、境界荷重のポリゴンモデルからボクセルモデルヘの変換が面倒になるため、Lagrangeの定式化を用いている。Lagrangeの定式化では物体の変形に伴いメッシュもゆがみ、精度低下、ロッキングが発生するが、もともとが立方体のメッシュであるためゆがみには強く、さらにある程度ゆがみが生じた場合にはメッシュを切り直すという手法を提案している。変形後の形状を定義するポリゴンモデルから、ボクセルモデルのメッシュを生成するのは、通常の形状適合の有限要素メッシュを生成するのに比べると遙かに短時間に、確実に行える。この論文では、そのリメッシングを行うクライテリアを、Aspect比、Skew、Taperの3つの指標を用いて定義している。 接触はペナルティ法を用いて行なっている。接触条件を含むすべての境界条件は幾何モデルに直接適用し、解析中に効果的な方法を用いてアイソパラメトリック変換によって数学モデルに適用される。 また、メッシュに対する物体領域が空間領域に対して少ない場合には解析精度が悪くなる問題に対し、空間上の節点に対して仮想バネを導入することで回の精度の悪化を防止することができることを示した。例題を通じて、仮想バネのバネ定数を決定するための指針が示されている。 幾つかの数値解析例によって、有限被覆法で接触問題を問題なく扱え、リメッシュすることで有限被覆法が接触問題において複雑なモデル形状や接触状況に対してすばらしい柔軟性を発揮することを示した。2次元および3次元のSignorini問題において、有限被覆法による解との解析解との比較により、この手法が十分な精度で解析を行えることを示した。また、2次元および3次元のパンチのネジヘの貫入問題により複雑なソリッド問題に対する有効性を示した。複雑な3次元ソリッド形状に対しては、これまで有限要素法ではリメッシングの問題などによりこのような大変形、接触問題の解析は行えなかった。この例題により、有限被覆法の3次元ソリッドの大変形、接触問題に対する有効性が示されたと考えられる。(下図) | |
審査要旨 | 本論文では非線形有限被覆法の接触問題への拡張を行っている。有限被覆法は、解析を行う物理領域と関数を定義する数学被覆とを独立に定義することにより、物理形状によらないメッシュ分割を可能にし、物理形状に合わせてメッシュ分割をしなければならない有限要素法に対してモデル生成に要する手間を大きく削減する手法である。また、この物理形状に独立にメッシュ分割を行うという特徴により、有限要素法による大変形解析に現れる、大変形時のメッシュのゆがみにより解析が行えなくなる問題を解決し、さらに接触問題に対しても、接触判定をメッシュとは独立に定義された形状のポリゴンモデルで行うことによりより少ない手間で、容易に行うことができるというメリットがある。特に、3次元ソリッドの解析に対して有効な手法である。 第1章は序論で、本研究の基礎となる有限被覆法について、および接触問題の取り扱いの現状について、簡単に説明し、この論文の構成について説明している。 第2章は、有限被覆法の基本的な式展開について説明している。理論の基礎となるマニフォールド法について概説し、マニフォールド法にボクセル形状の定型被覆を導入する方法について説明している。また、その際に用いるべき重み関数、被覆関数についての議論を展開している。 第3章は固体力学における大変形問題の定式化を行っている。適合条件式、構成方程式、平衡方程式の導出、およびそれらへの仮想仕事の原理の適用を行っている。 第4章は接触問題の一般的な取り扱いについて説明している。変分原理への適用、およびその数値計算上の取り扱いについて説明している。 第5章はこれらの非線形問題、接触問題に対して有限被覆法を適用する際の具体的な実装について説明しており、この論文の核となる部分である。大変形問題へ有限被覆法を適用する際の、離散化の方法を説明している。固体の変形前、変形後の形状を定義する形状モデルとしては三角形のパッチを用いたポリゴンを用い、解析に用いる近似関数の定義領域として等間隔の格子状の立方体(ボクセルモデル)を用いている。 変形の定式化としては、物体固定のLagrangeの定式化と空間固定のEulerの定式化が考えられる。空間固定のEulerの定式化を用いると、境界荷重のポリゴンモデルからボクセルモデルへの変換が面倒になるため、Lagrangeの定式化を用いている。Lagrangeの定式化では物体の変形に伴いメッシュもゆがみ、精度低下、ロッキングが発生するが、もともとが立方体のメッシュであるためゆがみには強く、さらにある程度ゆがみが生じた場合にはメッシュを切り直すという手法を提案している。変形後の形状を定義するポリゴンモデルから、ボクセルモデルのメッシュを生成するのは、通常の形状適合の有限要素メッシュを生成するのに比べると遙かに短時間に、確実に行える。この論文では、そのリメッシングを行うクライテリアを、Aspect比、Skew、Taperの3つの指標を用いて定義している。 接触はペナルティ法を用いて行なっている。接触条件を含むすべての境界条件は幾何モデルに直接適用し、解析中に効果的な方法を用いてアイソパラメトリック変換によって数学モデルに適用される。 また、メッシュに対する物体領域が空間領域に対して少ない場合には解析精度が悪くなる問題に対し、空間上の節点に対して仮想バネを導入することで回の精度の悪化を防止することができることを示した。例題を通じて、仮想バネのバネ定数を決定するための指針が示されている。 第6章に幾つかの数値解析例が示されている。2次元および3次元のSignorini問題において、有限被覆法による解との解析解との比較により、この手法が十分な精度で解析を行えることを示した。また、2次元および3次元のパンチのネジヘの貫入問題により複雑なソリッド問題に対する有効性を示した。複雑な3次元ソリッド形状に対しては、これまで有限要素法ではリメッシングの問題などによりこのような大変形、接触問題の解析は行えなかった。この例題により、有限被覆法の3次元ソリッドの大変形、接触問題に対する有効性が示されたと考えられる。 第7章ではこの論文の結論が述べられている。 以上、本論文は接触問題という工学的に重要な問題に対して、有限被覆法をいかに適用するかを詳細に検討しており、リメッシングのクライテリア、物体領域の小さいカバーに対する対応等の重要な提案を行っている。これらの検討により、これまで有限要素法では不可能であった3次元ソリッドの大変形、接触問題に対して解析が可能となることを例題を通して示した。 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
UTokyo Repositoryリンク |