No | 116757 | |
著者(漢字) | 重定,如彦 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | シゲサダ,ユキヒコ | |
標題(和) | オープンな分散ハイパーメディアシステムの為のソフトウェアアーキテクチャ | |
標題(洋) | Software Architecture for Open Distributed Hypermedia System | |
報告番号 | 116757 | |
報告番号 | 甲16757 | |
学位授与日 | 2002.03.11 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(理学) | |
学位記番号 | 博理第4079号 | |
研究科 | 理学系研究科 | |
専攻 | 情報科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文はオープンな分散ハイパーメディアシステムの為の新しいソフトウェアアーキテクチャを提案する。近年WWW(World Wide Web)の発展に伴い全世界規模のハイパーメディアシステムがインターネット上に構築され、現在もなお急速に成長している。これらのシステムは「情報発信の為のシステム」としては大きな成功を収めているが、ハイパーメディアシステムの本来の目的の一つである「思考の為のシステム」として頻繁な編集を行う場合、ハイパーメディア構造が脆弱な為、不都合が生じる。例えばWWW上で編集を行った場合、dangling linkやediting problemと呼ばれる問題が頻繁に発生する。 一方、「情報発信の為のシステム」としてのハイパーメディアシステムに対しても以下のような問題が発生している。今日ではハイパーメディアシステムは情報発信の為のシステムとしてパーソナルコンピュータ等の個人端末によって個人的に利用されるだけでなく、図書館や博物館や街角などに設置された公共端末によって公共の場においても頻繁に利用されている。しかし現在のほとんどのハイパーメディアシステムは個人使用を目的としてデザインされているため、公共での使用には適さない。例えば個人端末アプリケーションは一般に一定以上のコンピュータの知識を持つユーザによる使用を前提として設計されているが、公共端末ではそのような前提は成り立たない。 本論文の目的は「思考の為のシステム」と「情報分散の為のシステム」のプラットフォームとなるオープンな分散ハイパーメディアシステムの為のソフトウェアアーキテクチャを提案することである。 思考の為のシステムのプラットフォームとして、我々は頑強なハイパーメディア管理機構を持つ新しいオペレーティングシステム「Net-BTRON」を構築した。Net-BTRONは以下の三つの特徴を持つ。第一にファイルシステムレベルで分散ハイパーメディア構造を管理することによって頑強なハイパーメディア構造を提供する。第二にオープンなシステムを構築する為に必要となる他のハイパーメディアシステムと統合を実現する為に、柔軟な拡張性を持つファイルシステムを提供する。第三にハイパーメディアアプリケーションのユーザインタフェースを標準化するためのツールキットを提供する。我々はNet-BTRONを実装し、その上に多くの分散ハイパーメディアアプリケーションを実装することによって、Net-BTRONの技術的な特長を示した。 情報発信の為のプラットフォームとして、我々は情報発信の為の公共端末アプリケーションに対する研究を行った。第一に我々は公共端末に対する要求を分析し、それらの要求を満たす為の機能を提案した。そしてそれらの機能を持つ新しい公共端末アプリケーションを設計、実装し、公共の場において実際に運用することによってその有効性を検証した。 | |
審査要旨 | 本論文は8章からなり、第1章は論文の背景、問題点、目的について述べられている。ハイパーメディアシステムが思考を支援するためのシステムとして開発された背景を述べた後、現在のシステムが以下のような問題点をもっていると指摘している。(1)ハイパーメディア構造が脆弱なため、思考を支援することが十分に行えないでいる。(2)ハイパーメディアシステムは現在「情報発信のためのシステム」として広く使用されているが、公共の場における情報発信の目的で使用する場合に不都合が生じる。本論文の目的は、これらの問題を解決する、オープンなハイパーメディアシステムのための新しいソフトウェアアーキテクチャを提案することであると述べている。 第2章は本論文の対象とするハイパーメディア分野の関連研究について歴史的背景を交えながら述べている。本章ではハイパーメディア分野における代表的なアーキテクチャモデルであるFlag Taxonomyを用いてハイパーメディアの研究の歴史的変遷について述べ、現在のハイパーメディアシステムの問題点について分析している。 第3章は本研究が提案するハイパーメディアシステムのベースとなるBTRON基本ハイパーメディアモデルについて述べられており、BTRON基本ハイパーメディアモデルによって整合性のあるハイパーメディア構造を提供できることが述べられている。また、他のハイパーメディアモデルについて述べ、BTRON基本ハイパーメディアモデルとの比較検討が述べられている。 第4章では本論文が提案するNet-BTRONハイパーメディアアーキテクチャの設計について述べられている。主としてノードの所在から透明なノード操作APIの提供、データ転送プロトコルマネージャとデータ形式変換マネージャによる他のハイパーメディアシステムとの統合により、オープンで整合性のあるハイパーメディア構造を実現した事について述べられている。また、実際にNet-BTRONハイパーメディアアーキテクチャを用いて他のハイパーメディアとの統合を行ったことについて述べられている。 第5章では公共の場における情報発信のシステムとして開発したBBB/KTというブラウザの設計について述べられている。設計手法として実際の公共端末における情報発信で得られた知見を元に必要とされる機能を分析し、「リンク追跡機能」や「スマートカードによる個人設定」、「多国語情報発信」などの機能ガ」設計され、それぞれの機能についての具体的な設計手法が述べられている。 第6章では第4章と第5章で述べられた設計の実装について述べられている。Net-BTRONハイパーメディアアーキテクチャ及び、BBB/KTの具体的な実装手法が述べられており、実装されたシステムの評価が述べられている。 第7章では、実装されたシステムに関しての評価を、主としてシステム性能の測定やシミュレーション実験を元におこなったことが述べられている。最後に第8章で本研究のまとめと将来の課題について述べられている。 本論文で得られた成果は合計3つの論文誌や学会発表などによって公表されており、また実装されたシステムの一部は実際に公共の場において使用実績があることから、本研究がハイパーメディアの分野において実際に社会に貢献するものであると認められる。 本研究はハイパーメディアの分野において、学会上、応用上、寄与するところが少なくない。従って、博士(理学)の学位を授与できると認める。 | |
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