学位論文要旨



No 116831
著者(漢字) 平賀,督基
著者(英字)
著者(カナ) ヒラガ,マサキ
標題(和) 拡張ホモトピーモデルによる位相解析を用いた3次元形状の生成、圧縮および認識の手法
標題(洋) Construction, Compression and Recognition of 3D Shapes Using Topological Analysis by Enhanced Homotopy Model
報告番号 116831
報告番号 甲16831
学位授与日 2002.03.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(理学)
学位記番号 博理第4094号
研究科 理学系研究科
専攻 情報科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 西田,友是
 東京大学 教授 池内,克史
 東京大学 教授 萩谷,昌己
 東京大学 教授 今井,浩
 お茶の水女子大学 教授 藤代,一成
内容要旨 要旨を表示する

 近年、3次元形状を取り扱う事は様々な分野に広がっており、今後ますます重要な役割を果たすことが予想される。そうした3次元データの普及にともない、データはより複雑化し巨大化することになり、それらを効率的に処理する手法の開発が望まれている。本論文ではそうした効率的な処理を実現するために、拡張ホモトピーモデルを中心とした位相解析の新しい枠組を提案する。拡張ホモトピーモデルとは、ある連続関数によって定義される形状の位相情報を表し、連続関数の等値線、等値線の接続関係であるレーブグラフ、および等値線によって分割されるサーフェスパッチによって構成され、適切な連続関数を選択する事で、その形状の様々な性質を統一的かつ効率的に取り扱うことが可能となる。

 3次元形状の取り扱いは、まず形状をモデリングする事からはじまる。本論文では、その単純で直感的な分かりやすさから、拡張高さ関数に基づいた拡張ホモトピーモデルによるモデリングついて述べる。これはCTなどの断面図群からの形状定義に相当する。拡張ホモトピーモデルでは、閉曲面の制約を課すことより、そのサーフェス要素と等値線およびレーブグラフに関するルールを定義する事ができ、それによってあらゆる特異点の縮退を扱うことが可能になり、閉曲面としての正当性をチェックすることができる。

 モデリングされた形状を効率良く格納するために、またインターネットを通じた転送のためにも、その形状を圧縮する技術は必須となってくるが、従来方ではメッシュの非正則性がその圧縮の妨げになるという問題があった。ここで、メッシュのグラフ距離の拡張ホモトピーモデルを使用すると、その非正則性の原因となる点が、特異点として検出される。本論文はこの拡張ホモトピーモデルを用いて、サーフェス全体を準正則な要素に分解することで、任意のトポロジーをもつメッシュの効率的なメッシュの圧縮を実現する。

 3次元形状が効率良く蓄積することが可能になると、それをデータベース化し、その形状を検索する需要がでてくる。このためには、形状の特徴を不変量として抽出し、それによる類似度評価が必要となるが、ユーザーの要求に基づいた評価を行なうのは難しいことであった。本論文は測地線距離に基づいたレーブグラフを抽出し、そのノードに様々な特徴量を割り当てることでこの問題を解決する。高速検索を実現するために、多重解像度構造を導入し、レーブグラフは粗いものから次第に細かいものへと比較されていく。このマッチング手法は、形状のどの部分がどの部分に対応するかという情報を計算し、人間の感覚にそった類似度評価を可能にするものである。

審査要旨 要旨を表示する

本論文は5章からなり、1章で研究の背景、2章でホモトピーモデルを利用した幾何モデル、3章で形状データの圧縮、4章で形状マッチングについて論じて、5章でまとめを論じている。すなわち、ホモトピーモデルを拡張し、それをモデル作成、圧縮、検索に利用する一貫した論文である。

 近年3次元形状を取り扱うことは様々な分野に広がっており、今後ますます重要な役割を果たすようになっている。そうした3次元データの普及によってデータはより複雑および巨大化し、それらを効率的に処理する手法の開発が望まれている。本論文はそうした目的のために拡張ホモトピーモデルと呼ばれる新しい位相解析の枠組を提案してる。拡張ホモトピーモデルとは、ある連続関数によって定義される形状の位相情報を表し、(1)連続関数の等値線、(2)等値線の接続関係であるレーブグラフ、(3)および等値線によって分割されるサーフェスパッチ、という要素によって構成される。拡張ホモトピーモデルは様々なアプリケーションに対して適切な連続関数を選択することにより、形状の様々な性質を統一的かつ効率的に取り扱うことを可能とした。

 最初に本論文は、拡張高さ関数に基づいた拡張ホモトピーモデルについて述べる。これは単純で直感的なモデリング手法を提供し、CTなどの断面図群からの形状定義に応用ができる。形状曲面が閉曲面であるとき、拡張ホモトピーモデルはその要素間のルールを定義することができ、それによって閉曲面としての正当性をチェックすることが可能になる。また従来ホモトピーモデルではその処理が困難であった縮退特異点の問題も、非縮退特異点と同様に、統一的に取り扱うことを可能にした。

 モデリングされた形状を効率良く格納するために、またインターネットを通じた転送のためにも、その形状を圧縮する技術が必要とされる。しかし従来圧縮法ではメッシュの非正則性がその圧縮の妨げになるという問題があった。ここで、メッシュのグラフ距離の拡張ホモトピーモデルを使用すると、その非正則性の原因となる点が特異点として検出される。本論文はその拡張ホモトピーモデルを用いて、サーフェス全体を準正則なサーフェース要素に分解することで、任意のトポロジーをもつメッシュの効率的な圧縮を実現した。

 3次元形状の蓄積が増大すると、それをデータベース化してその形状検索を効率的に行なう手法に対する需要がでてくる。このためには形状の特徴を不変量として抽出し、それによる類似度評価が必要となる。本論文は測地線距離による拡張ホモトピーモデルのレーブグラフを抽出し、そのノードに様々な特徴量を割り当てることでこの問題を解決する。さらに高速検索を実現するために多重解像度構造を導入し、レーブグラフを粗い解像度から次第に細かい解像度へと比較していく。このマッチング手法は形状のどの部分がどの部分に対応するかという情報を計算し、人間の感覚に合致した類似度評価を可能にした。

 審査担当者は,以上のような理由により,本論文は博士(理学)の学位論文として十分な内容を持つものであると一致して判定した。

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