学位論文要旨



No 116998
著者(漢字) 岩根,泰蔵
著者(英字)
著者(カナ) イワネ,タイゾウ
標題(和) 都市河川におけるβ−ラクタム剤耐性大腸菌の分布とその耐性遺伝子の伝達
標題(洋)
報告番号 116998
報告番号 甲16998
学位授与日 2002.03.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第5139号
研究科 工学系研究科
専攻 都市工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 山本,和夫
 東京大学 教授 矢木,修身
 東京大学 教授 味埜,俊
 東京大学 教授 古米,弘明
 東京大学 助教授 福士,謙介
内容要旨 要旨を表示する

 今日、抗生物質耐性菌による細菌感染症が臨床上の重要性を増している。しかし、現在の衛生工学および環境工学における水系健康関連微生物分野では、ヒトへの耐性菌感染に関するリスク評価は現在行われていない。現行の、あるいは将来実現可能な広域都市水循環形態の総合的評価には、多面的な水環境質の評価が重要である。そのうち、水質については多面的な評価の検討とその管理手法の開発が求められる。中でも、現在規制されていない汚染物質や微生物、未認知あるいは未検討のリスクによる健康影響に着目することは課題のひとつである。本研究は、水環境における未認知の健康関連微生物リスクの一種として、細菌の抗生物質耐性に着目し、そのリスク評価に必要とされる基礎的な知見である、耐性遺伝子の伝播可能性を求めようとするものである。

 本研究では特に、腸管系感染症細菌に遺伝子を伝達させることができる細菌の代表例として大腸菌に着目し、対象とする耐性遺伝子には臨床上重要な伝達性耐性遺伝子の基本的なモデルとしてβ−ラクタム剤耐性TEM型遺伝子を選定することで、自身は病原性が低い細菌が持つ耐性がその他の細菌へと接合伝達する可能性を想定した。具体的なフィールドには多摩川流域を選び、都市水系における下水処理水の開放循環利用リスク評価を想定した。本研究の実際の調査および実験は、水環境中の耐性分布調査と水環境における耐性伝達率測定実験に分けられる。耐性分布調査では、多摩川中流域を主な対象としてアンピシリン(ABPC)耐性大腸菌割合などを測定した。

 羽村堰より下流の多摩川中流域では、下水処理場放流水の流入に伴って全大腸菌数が大きく増加した(羽村堰:0.3CFU/mL→多摩川原橋:45CFU/mL→調布堰:5.6CFU/mL)。しかし、ABPC耐性大腸菌割合に有意な増加は認められなかった(6.4%→7.8%→13.2%)。また調布堰においては、底質巻き上げによって全菌数は増加した(23CFU/mL)が、耐性菌割合に有意な変化は認められなかった(12.3%)。流域の下水処理場においても同程度の耐性菌割合が観察された(流入水:10.2%→二次処理水:11.1%→放流水:12.5%)。よって、下水処理場放流水が多摩川河川水に与える影響は、ABPC耐性大腸菌割合の変化という点においては無いと言え、上流域の浄化槽放流水全体と中流域の公共下水処理場の放流水ではABPC耐性大腸菌割合に有意な差が無いと考えられた。上流域の単独処理浄化槽を対象とした調査では、塩素接触による処理効率と共に、ABPC耐性大腸菌割合にも世帯間の大きなばらつきが観察された(最低値0.1%以下〜最高値10.7%)。

 全国6地域の下水処理場を対象とした調査では、流入下水中の全大腸菌数に地域ごとの有意な差が認められたものの、ABPC耐性大腸菌割合には有意な差が認められなかった(最低値2.8%〜最高値16.2%)。また、処理過程を通じた耐性菌割合の有意な変動は認められなかった。以上より、多摩川流域のABPC耐性大腸菌割合は、全国的に見て特異なものではないと言える。また、流入下水中の第3世代セフェム剤セフォタキシム(CTX)耐性大腸菌割合はABPC耐性菌割合に比べて少なかった(最低値0.005%〜最高値0.064%)。

 一方、既往の研究において行われている、対象とする細菌種を大腸菌群や腸内細菌科細菌に広げた調査も比較対照のために行った。その結果、大腸菌を対象とした調査結果とは異なり、下水処理過程を通じてABPC耐性菌割合に有意な増加が認められた。この理由としては、自然耐性菌種が処理過程を通じてより生残しやすいケースが多かった可能性などが考えられる。

 耐性菌割合の測定に引き続いて、耐性大腸菌株を単離し、耐性遺伝子型などの性質に関する様々な検査を行った。ABPC耐性大腸菌246株について、微量液体希釈法の薬剤感受性試験・アシドメトリー法による酵素β−ラクタマーゼの検出・PCR増幅法によるTEM型遺伝子保有検査を適用した結果、222株(90.2%)がTEM型原型遺伝子を持っていた。TEM型遺伝子保有割合に地域ごとの有意差は認められなかった。ABPC耐性大腸菌株の多くがTEM型耐性遺伝子を保有しているという本研究の結果は、既往の諸外国での臨床調査や疫学研究の報告と一致した。次に、TEM型遺伝子を保有すると判定された198株のうち185株(93.4%)について伝達性が確認された。この割合に地域ごとの有意差は認められなかった。以上より、水環境単離のABPC耐性大腸菌株の90.2%×93.4%=84.2%が伝達性TEM型耐性遺伝子を持つ、と算出された。

 TEM型遺伝子を保有すると判定された222株のABPC耐性大腸菌および多摩川河川水単離ABPC非耐性大腸菌30株の計252株について、β−ラクタム剤以外の抗生物質に対する薬剤感受性試験を適用した結果、TEM型遺伝子をコードする遺伝因子とミノサイクリン(MINO)耐性と関連づけられた。さらに、同じ252株について細菌種同定用プレートを用いた炭素基質利用能の試験を行った結果、多摩川流域に分布する大腸菌の間では、TEM型耐性遺伝子の保有と炭素基質利用能には関連が無かった一方、TEM型遺伝子は宿主となる大腸菌の炭素基質利用能を選ばないことが明らかになった。CTX耐性大腸菌24株について、薬剤感受性試験と酵素β−ラクタマーゼの分類を適用した結果、これらの株の耐性機序は染色体性β−ラクタマーゼAmpC型の過剰産生によるものであると判定された。多摩川河川水および多摩川流域下水処理場から単離したABPC耐性大腸菌60株に対して、O血清型試験を適用した結果、どの単離株にも病原性の疑いが認められなかった。

 耐性伝達率測定実験では、多摩川河川水より単離した伝達性ABPC耐性TEM型遺伝子を持つ大腸菌8株を供与菌に用いて、様々な条件下での伝達率を測定した。特に本研究では、動的な伝達率モデルを用いて、接合伝達によって生じる伝達株数が菌体濃度および時間に比例するものとして、伝達率α(単位は1/(CFU/mL)/day)を算出した。温度条件は37℃・26℃・15℃・4℃の4条件を設定した。菌体を混合させた液体にはLB培地あるいは多摩川河川水を用い、4日間無振とう状態で実験を行った。

 大腸菌株E.coli ATCC25841を受容菌とした実験では、温度が高いほど伝達率が高く、河川水中ではLB培地中に比べて伝達率が低かった。37℃・LB培地条件で観察された伝達率の最高値はlogα=-8.8であった。これは、R1プラスミドなどを用いた既往の研究結果と同程度の伝達率である。また、河川環境を模擬した26℃〜4℃・河川水条件においても河川単離耐性菌の耐性遺伝子が伝達することが確かめられた。なおこの時、一部の供与菌株が持っていたMINO耐性は伝達していた。また、受容菌と伝達株の間に炭素基質利用能の違いは認められなかった。

 また、河川水単離8株の間には伝達率に有意な差が認められ、伝達率の高い4株と低い4株に分けることができた。この差の原因を明らかにするために、河川水単離株の各耐性プラスミドを持ったATCC25841株8株を供与菌、ATCC25841株のナリジクス酸(NA)耐性変異株を受容菌に用いて同様の実験を行った。その結果、河川水単離株の間には供与菌としての伝達能力に差があることが示された。さらに、伝達率の高い4株と低い4株が持つプラスミドの差、例えば遺伝子制御の違いによる伝達機能発現の違いが、37℃・26℃条件下において伝達率の差として現れていた。

 受容菌に多摩川河川水単離大腸菌株を用いた実験でもTEM型耐性遺伝子の伝達が観察された。ただし、河川水単離株はATCC25841株に比べて受容菌としての能力が劣っていた。また、プラスミドの違いがもたらす供与菌ごとの伝達率の差は、受容菌との組み合わせに関係せずに現れた。この時、河川模擬条件における最高の伝達率はlogα=-15.1であった。さらに、受容菌にサルモネラ菌株S.typhimurium WG45を用いた実験では、大腸菌が受容菌の場合に比べて伝達率が低下したものの、菌種を越えて伝達が起きることが確かめられた。この時、河川模擬条件における最高の伝達率はlogα=-15.2であった。

 また、ATCC25841株を受容菌に用い、振とう状態にて伝達率を測定した結果、多くの条件下では振とうによる伝達率の有意な上昇も低下も認められなかった。ただし、LB培地の37℃および26℃条件において、無振とう状態と比べて伝達率の有意な低下が観察された。この理由としては、LB培地の37℃および26℃条件下の無振とう状態では沈降によって測定値よりも高い菌体濃度が実現していた可能性および振とうによる接合伝達の阻止が挙げられる。さらに、フィルター上に菌体を捕捉した固着状態にて伝達率を測定した結果、全ての条件において、液体中の無振とう状態に比べて伝達率の有意な増加が認められた。河川水の26℃条件ではlogαが平均で1.9増加した。この理由としては、濃縮効果と細菌の自由な移動が制限される固定効果が挙げられる。

 以上の結果をもとに、多摩川河川水中の大腸菌が持つTEM型β−ラクタム剤耐性遺伝子が他の細菌に伝達する可能性を検討した。まず、河川水を経口摂取したヒトの消化管における伝達は、大腸菌の場合、通常の飲水量で摂取される菌数では消化管内に定着できないため、その可能性はほとんどあり得ないと言える。

 河川環境における伝達の可能性は、調査結果および実験結果より算出された。多摩川中流域において、野生の大腸菌間でTEM型遺伝子の伝達が起こる確率は、河川水中で2.0×10-2CFU/day、底質内で1.2×10-2CFU/day、貝類生体内で2.0×10-5CFU/dayと算出された。さらに、大腸菌からサルモネラ菌へのTEM型遺伝子の伝達確率は、河川水中では3.9×10-7CFU/day、底質内では2.4×10-7CFU/day、貝類生体内では3.2×10-10CFU/dayと算出された。

本研究は、多摩川流域をフィールドとして、都市河川におけるβ−ラクタム剤耐性大腸菌の分布を明らかにした。また、その河川環境においてTEM型耐性遺伝子の伝達が起こり得ることが示された。ただし、サルモネラ菌濃度が少ないと考えられる多摩川の現況では、大腸菌からサルモネラ菌への伝達が起きる可能性は小さいと言うことができる。しかし今後は、未処理下水などによる汚染を受けている水域や、浄水処理が不十分な国および地域、あるいは熱帯地域などを対象とした、耐性菌の分布調査や耐性遺伝子の伝達可能性の評価に関する研究が求められる。

審査要旨 要旨を表示する

 本論文は、「都市河川におけるβ−ラクタム剤耐性大腸菌の分布とその耐性遺伝子の伝達」と題し、多摩川流域をフィールドとして野生の大腸菌株における抗生物質耐性について、特にプラスミド伝達性の耐性遺伝子に着目して、水環境中で耐性菌の分布や挙動を解明し、また細菌種を越えた耐性遺伝子の伝達がどの程度起きうるのかを定量的に評価し、それによる水環境を媒介してのヒトへの健康リスクはどの程度なのか定量的に評価した研究である。

 本論文は7章より成る。第1章は「序論」である。研究の背景を述べた後、本研究の目的と論文の構成を示している。

 第2章「文献レビュー」では、腸内細菌科の細菌と大腸菌や、薬剤耐性について特にβ−ラクタム剤耐性について詳述し、既往の薬剤耐性菌分布調査の結果をまとめて総覧を作成している。また、プラスミド伝達やその伝達率モデルに関する情報をまとめている。

 第3章は「耐性菌数および耐性菌割合に関する分布調査」の結果をまとめたものである。羽村堰より下流の多摩川中流域では、下水処理場放流水の流入に伴って全大腸菌数が大きく増加した。しかし、ABPC耐性大腸菌割合に有意な増加は認められなかった。流域の下水処理場においても同程度の耐性菌割合が観察された。上流域の単独処理浄化槽を対象とした調査では、塩素接触による処理効率と共に、ABPC耐性大腸菌割合にも世帯間の大きなばらつきが観察された。さらに全国6地域の下水処理場を対象とした調査では、流入下水中の全大腸菌数に地域ごとの有意な差が認められたものの、ABPC耐性大腸菌割合には有意な差が認められなかった。また、処理過程を通じた耐性菌割合の有意な変動は認められなかった。以上より、多摩川流域のABPC耐性大腸菌割合は、全国的に見て特異なものではないと結論している。また、流入下水中の第3世代セフェム剤セフォタキシム(CTX)耐性大腸菌割合はABPC耐性菌割合に比べて少なかった。

 第4章は「個々の耐性株に対する各種検査」の結果をまとめたものである。ABPC耐性大腸菌246株について、微量液体希釈法の薬剤感受性試験・アシドメトリー法による酵素β−ラクタマーゼの検出・PCR増幅法によるTEM型遺伝子保有検査を適用した結果、222株(90.2%)がTEM型原型遺伝子を持っていた。TEM型遺伝子保有割合に地域ごとの有意差は認められなかった。次に、TEM型遺伝子を保有すると判定された198株のうち185株(93.4%)について伝達性が確認された。以上より、水環境単離のABPC耐性大腸菌株の90.2%×93.4%=84.2%が伝達性TEM型耐性遺伝子を持つと算出された。TEM型遺伝子を保有すると判定された222株のABPC耐性大腸菌および多摩川河川水単離ABPC非耐性大腸菌30株の計252株について、β−ラクタム剤以外の抗生物質に対する薬剤感受性試験を適用した結果、TEM型遺伝子をコードする遺伝因子とミノサイクリン(MINO)耐性と関連づけられた。さらに、同じ252株について細菌種同定用プレートを用いた炭素基質利用能の試験を行った結果、TEM型遺伝子は宿主となる大腸菌の炭素基質利用能を選ばないことが明らかになった。CTX耐性大腸菌24株について、薬剤感受性試験と酵素β−ラクタマーゼの分類を適用した結果、これらの株の耐性機序は染色体性β−ラクタマーゼAmpC型の過剰産生によるものであると判定された。なお、多摩川河川水および多摩川流域下水処理場から単離したABPC耐性大腸菌60株に対して、O血清型試験を適用した結果、どの単離株にも病原性の疑いが認められなかった。

 第5章は「耐性遺伝子の伝達率測定実験」の結果をまとめたものである。耐性伝達率測定実験では、多摩川河川水より単離した伝達性ABPC耐性TEM型遺伝子を持つ大腸菌8株を供与菌に用いて、様々な条件下での伝達率を測定した。特に本研究では、動的な伝達率モデルを用いて、接合伝達によって生じる伝達株数が菌体濃度および時間に比例するものとして、伝達率α(単位は1/(CFU/mL)/day)を算出した。温度条件は37℃・26℃・15℃・4℃の4条件を設定した。菌体を混合させた液体にはLB培地あるいは多摩川河川水を用い、4日間無振とう状態で実験を行った。大腸菌株E.coli ATCC25841を受容菌とした実験では、温度が高いほど伝達率が高く、河川水中ではLB培地中に比べて伝達率が低かった。37℃・LB培地条件で観察された伝達率の最高値はlogα=-8.8であった。また、河川環境を模擬した26℃〜4℃・河川水条件においても河川単離耐性菌の耐性遺伝子が伝達することが確かめられた。また、河川水単離8株の間には伝達率に有意な差が認められ、伝達率の高い4株と低い4株に分けることができた。この差の原因を明らかにするために、河川水単離株の各耐性プラスミドを持ったATCC25841株8株を供与菌、ATCC25841株のナリジクス酸(NA)耐性変異株を受容菌に用いて同様の実験を行った。その結果、河川水単離株の間には供与菌としての伝達能力に差があることが示された。さらに、伝達率の高い4株と低い4株が持つプラスミドの差、例えば遺伝子制御の違いによる伝達機能発現の違いが、37℃・26℃条件下において伝達率の差として現れていた。受容菌に多摩川河川水単離大腸菌株を用いた実験でもTEM型耐性遺伝子の伝達が観察された。ただし、河川水単離株はATCC25841株に比べて受容菌としての能力が劣っていた。また、プラスミドの違いがもたらす供与菌ごとの伝達率の差は、受容菌との組み合わせに関係せずに現れた。この時、河川模擬条件における最高の伝達率はlogα=-15.1であった。さらに、受容菌にサルモネラ菌株S.typhimurium WG45を用いた実験では、大腸菌が受容菌の場合に比べて伝達率が低下したものの、菌種を越えて伝達が起きることが確かめられた。この時、河川模擬条件における最高の伝達率はlogα=-15.2であった。

 また、ATCC25841株を受容菌に用い、振とう状態にて伝達率を測定した結果、多くの条件下では振とうによる伝達率の有意な上昇も低下も認められなかった。さらに、フィルター上に菌体を捕捉した固着状態にて伝達率を測定した結果、全ての条件において、液体中の無振とう状態に比べて伝達率の有意な増加が認められた。河川水の26℃条件ではlogαが平均で1.9増加した。この理由としては、濃縮効果と細菌の自由な移動が制限される固定効果が挙げられる。

 第6章は「都市河川を通じた耐性遺伝子の伝達可能性」を評価したものである。多摩川中流域において、野生の大腸菌間でTEM型遺伝子の伝達が起こる確率は、河川水中で2.0×10-2CFU/day、底質内で1.2×10-2CFU/dayと算出された。さらに、大腸菌からサルモネラ菌へのTEM型遺伝子の伝達確率は、河川水中では3.9×10-7CFU/day、底質内では2.4×10-7CFU/dayと算出された。サルモネラ菌濃度が少ないと考えられる多摩川の現況では、大腸菌からサルモネラ菌への伝達が起きる可能性は小さいと言うことができる。しかし今後は、未処理下水などによる汚染を受けている水域や、浄水処理が不十分な国および地域、あるいは熱帯地域などを対象とした、耐性菌の分布調査や耐性遺伝子の伝達可能性の評価に関する研究が求められる。

 第7章は「結論」である。

 以上要するに、本論文は、多摩川流域をフィールドとして、都市河川におけるβ−ラクタム剤耐性大腸菌の分布を明らかに、その河川環境においてTEM型耐性遺伝子の伝達が起こり得ることを定量的に示したものであり、さらに水環境を媒介してのTEM型耐性遺伝子の伝達という事象によるヒトへの健康リスク評価を初めて試み貴重な基礎情報を提供している。従って、本論文により得られた知見は都市環境工学の学術の進展に大きく貢献するものである。

 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

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